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傘から始まる恋物語  作者: 霊璽
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第67話 プリンとケーキ

 「うわ! 雨降ってきちゃったよ」

 遙の一言で全員が外に視線を向ける。太陽が出ているのか、庭の芝生は青々と輝いている。しかし耳を澄ますと微弱な雨音が聞こえてきた。

 「これは大変だ。強くなる前に早く帰ったほうがいいんじゃないか」

 どこか嬉しそうに笑う孝也は4人に帰宅を促してみる。せっかく半日で学校が終わったというのに家でゆっくり出来ないのは苦痛でしかない。

 しかし遙が反対の声を上げる。

 「嫌だ! まだ打ち上げしてないもん!」

 「そうだよ! それに通り雨かもよ?」

 星乃はスマホを取り出してこの後の天気を確認している。天気予報の結果を写した画面をこちらに見せながら柔和な笑みを浮かべる。

 「確かに通り雨のようです。30分ほどで止みそうですね」

 「なら帰る必要ないな」

 台本があるかのようなスムーズな会話に孝也は呆然とした。どうしてこんなにも帰らないのか、なぜ自分の家でゆっくりしないのか理解ができなかった

 4人の腰が重く、動きそうにないことを見た孝也は諦めのため息を吐いた。

 「はあ……。わかったよ。それでこの何もない家でどうやって打ち上げなんてするんだ?」

 頬杖をついて遙たちを見ながら孝也は先程遙が言った打ち上げについて問いかける。できなければすぐに帰るだろうと思い、あえて何もない事を強調した。

 「うーん。この雨じゃ買い出しには行けないし……。そうだ! たかちゃん料理得意なんだし、なんか作ってよ。どうせ飲み物だって麦茶以外にもあるんでしょ?」

 キラキラとした期待の眼差しを向けてくる。

 何故彼女はこうも飲食に関しては察しがいいのだろうか。確かに冷蔵庫には常備しているコーラやオレンジジュースなどが入っている。いや、遙の勘がいいはずがない。つまり冷蔵庫に中を覗いた可能性の方が高い。

 そして孝也が言った何もないの意味は楽しめるようなゲームがないという意味で飲食をするための物ならある程度はある。あってしまうのだ。

 疑いの目を向けながら遙に問う。

 「お前、さっき冷蔵庫の中覗いたのか?」

 「いや、見てないよ! 流石に私だって人様の冷蔵庫の中は見ませんー。ただの勘だから!」

 頬を膨らませ、抗議する遙の言葉を聞いて孝也は目を丸くした。

 まさか遙の勘が当たるとは……。

 声には出さなかった。出そうにはなったが、ギリギリ喉の辺りで押しとどめた。

 こういう時遙が鈍感で助かる。晴翔以外は気がつかれることはないからな。

 「そうやって聞くってことは孝也。お前、麦茶以外にもあるんだな?」

 しかし、微細な孝也の変化に気がつく晴翔は違った。遙に驚いていた孝也を見て晴翔がニヤついたいやらしい笑みを浮かべながら聞いてくる。

 こいつは確信を持っているからな。隠したところで意味ないだろ。

 「ああ。確かにある」

 そう言って孝也は席を立つ。そして冷蔵庫から未開封のコーラとオレンジジュースを持って彼らのところへ持っていく。

 やけに素直だった孝也に晴翔と遙は静かだった。文句を言われる前に先に差し出して黙らせておくのだ。

 「ほらよ。お望みのものだ。好きにやってくれ」

 そう言ってガラスのテーブルに置くと孝也は先ほど同じ場所に戻り座る。

 「やっぱり、予想通り! ありがとう〜、たかちゃん。ついでに何か食べるものも欲しいなー。ねっ? 由紀ちゃんも星乃さんもそう思うでしょ!」

 晴翔に注いでもらったコーラを飲みながら遙のお願いはどんどんとエスカレートしていく。そして遙は同意を求めるために2人に聞くのだった。

 「流石にそんなに贅沢は言えないです」

 「うーん。私も無理してまでっていうのはいいかな」

 「ええ〜っ! そこは賛成してよ〜」

 「全く贅沢なやつだ。少しは星乃と松原みたいに遠慮というものを知るべきだな」

 肩を落としてガッカリしている遙を横目に鼻で笑う孝也。

 予想外にも2人から協力を得られず、ゴネ始めた遙は晴翔に八つ当たりをしている。晴翔は笑顔で受けているが、チラチラ孝也の方を見ていた。

 どうも救援要請を出しているらしい。本当に何もないのか、と目が訴えている。実はテスト終わりのご褒美として自分用のプリンとケーキを大量に作っていた。

 しばらくは無視していたが、視線がうるさくてかなわない。孝也は再び席を立つと晴翔に向けて一言。

 「晴翔、貸しひとつな」

 「わかってる」

 孝也の言葉を聞いた晴翔は笑顔で頷く。2人の間で行われたやりとりを女子たちの誰もが理解できなかった。

 キッチンで何かを漁り始めた孝也をじっと星乃と松原は見ている。遙は今度は晴翔の膝の上に頭を乗せて顔を隠していた。冷蔵庫から大量のプリンとケーキをお盆に乗せて孝也はリビングへ行く。

 お盆をわざと音を鳴らしてテーブルに置く。音に気がつき、遙が顔を上げたのを確認すると孝也は言った。

 「これで満足か?」

第67話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。

今回はセリフで終わらせてみました〜。大量のプリンとケーキを見たそれぞれの反応を予想しながら次回の更新をお待ちください!

次回は金曜日、また祝日だ! 嬉しいーけど休みの日って何もしないから逆にまずいんですよね。

まあ、先のことは先の自分が解決するでしょう!

それではまた次回、お会いしましょう

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