第66話 麦茶と文句
先にリビングに来ていた孝也はいつまで経っても晴翔達が来ないことに違和感を覚えていた。たかが靴を履き替えるだけでこんなにも時間がかかるはずがない。
「はあ、嫌な予感がする……」
後頭部を乱雑に掻きながら玄関へと続く廊下へ顔だけ出して覗くと4人が何かを相談している姿が見えた。どうやらこちらが見ていることに気づいていないようだ。しばらく観察していよう。
どうやら俺に聞かれていないと思っているらしく、話し声はよく聞こえた。
内容は2階に上がり俺の部屋行こうかどうしようかを議論しているようだ。まあ遙が1番騒いでいるだけだし問題ないだろう。仮に行くことになったとしても俺が出て行けば止めるだろ。
そして話が終わったようで、こちらへと向かってくる。出していた頭を引っ込めてキッチンで作業している風を装う。
俺に許可を聞くという星乃の結論になったようだが、もちろんそんなのは断るつもりだ。見せたって面白いものはないし、連れて行けば遙と晴翔に部屋を荒らされるに決まっている。
誰が何を飲むのかわからないので冷蔵庫から麦茶を取り出し、人数分のコップを用意していると4人が入ってきた。
「やっぱり全然変わってないねー」
「前に来た時は3年前なのになんでここまで変わってないのか、逆に不思議だ」
遙と晴翔はリビングを見渡し感想を言いながら自然な流れでソファに座り、まるで自分の家かのように寛いでいる。相変わらず、図々しい奴らだ。
心の中で少しイラついたのであの2人の分だけ麦茶の量を少し少なくした。
そして常識がある星乃と松原はそんな2人を見て少し困っている。
「ああ、その2人は最初に来た時からそんな感じだったから気にするな。2人も自由に寛いでくれ」
戸惑っている2人にキッチン越しから声をかけ、ソファを指差して勧める。
「ありがとうございます」
「ありがと!」
2人は笑顔を見せ、礼を言うとソファに座った。
うちには2人掛けのソファが二つあるので晴翔と遙、星乃と松原の二人組に分かれている。
「たかちゃん、私喉乾いたー」
遙がキッチンにいる孝也に声をかける。
「本当に自由だな……。ほらよ、麦茶でいいな」
コップを両手に持ち、遙と晴翔へと持ってくる。
「ありがと〜」
「サンキューな」
2人に渡すとキッチンに戻り、すぐに星乃と松原の分を持ってくる。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
全員に渡した孝也はキッチンで一度コップの麦茶を飲み干し、2杯目を入れてリビングに行くとあることに気がついた。
「座るとこないな……」
ボソッと呟き、どこに座ろうか考えている。そして孝也が出した結論はダイニングチェアに座るということだった。
「あれ? 三河さんはこっちに来ないんですか?」
孝也が少し離れたところに座ったことに違和感を覚えた星乃が聞いてくる。
「そのソファは2人掛けでな。3人で座るにはちょっと窮屈だろうからな、俺はここでいい」
「そうですか……」
少しガッカリしたような表情を一瞬見せたが、気付いたのは孝也だけのようだ。
それぞれがゆったりとしていると遙が口を開いた。
「ねえねえ、たかちゃんに部屋行きたい!」
手を上げソファから立ち上がり、無駄に大きな主張をしてくる。
「断る」
事前に聞かれることを知り、答えまで決めていた孝也の返事は早かった。中身が半分ほどになったコップを回しながら眺めている。
「やっぱダメか」
晴翔がため息混じりに呟いた。遙は肩を落とし、文句を言ってくる。
「いいじゃん、減るもんじゃないんだし」
「減らないとは思うが、荒らされることは確実だろ」
目を細めて、2人を凍てつくような目を向ける。
「おいおい、信用ないな〜。そんなことはしないぞ」
孝也に怯むことなく、晴翔は胸を張って堂々と宣言する。そんな晴翔を孝也は鼻で笑う。
「悪いが、それでも信じられないな」
「全く、孝也は頑固だな」
「ほんとほんと、昔っから変わらないよね」
変わらない孝也の意志を聞いて2人は最後の抵抗と言わんばかりに文句を口にしていた。確実に孝也に聞こえるように言っていたが、孝也は無視をしコップの麦茶を飲み干す。
明るい日の光を反射させながら雫が空から降り始めていた。
第66話目を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
更新が一日遅れてしまい、すみません。ただ毎日10PVは達成できていることに感謝です。
サブタイトルって考えるの難しいです……。私の小説って一話ごとが短いのでこれを考えるのが1番時間がかかると言っても過言じゃないですね!
まああえて短く書いてるので文句は言えないですね。
夏休みまでは長いですね。これが打ち上げ? みたいなのが終わり、東海林くんとのテスト勝負の結果を終わらせてからなので
一体、あと何話かかるのでしょう? それでもよろしくお願いします!
それではまた次回、お会いしましょう




