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傘から始まる恋物語  作者: 霊璽
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第47話 お粥と青空

 晴翔との電話を終わらせてからすぐに眠ってしまった孝也は寝苦しさに目を覚ました。

 「……あっつ」

 被さっている布団をどかして体を起こす。ヘッドボードに置いてあるスマホで時間を見ると昼の12時少しを過ぎたくらいを示していた。

 スマホを元の場所に戻すとちょうどお昼時ということもあり、腹がぐう〜と鳴いた。

 (……腹減ったな)

 腹を摩りながらぼうっと窓の外を眺める。いくら待ってても彼にご飯を用意してくれる人なんてこの家には誰もいないのだ。

 そして孝也は朝ご飯を食べずに寝てしまったので余計に腹が減っている感覚になっている。

 朝よりは体調がマシになっている。孝也は大きくため息を吐いてからベッドから降りる。体調は意外と良くなっており壁伝いに歩く必要もなかった。しかし普段よりも遅い足取りで階段を降りてキッチンへ行く。

 キッチンへ来るとひとまず何かないか適当に探し始める。最初に冷蔵庫を開けると冷ご飯が入っていた。家には孝也が1人で鍋料理をするときに使うために購入した小さい土鍋もあったのでそれを使ってお粥を作ることにした。

 調理を始めると孝也以外いない家ではIHの加熱音がよく響いていた。しかしいつものことなので孝也は特に何も感じていなかった。

 作りながら突然思いついたのだが、ただのお粥だと味気がなかったので冷蔵庫に入っていた卵を使い、たまご粥にした。

 完成したものをテーブルに持って移動する。

 「いただきます」

 手を合わせてしゃがれた声で言う。スプーンを使って一口掬うと何回か息を吹いて冷ましてから口の中に入れる。優しい味が口の中に広がり、体に染み込むような感覚になった。

 「……やっぱり風邪をひいた時はお粥だな」

 やっぱりと言うほど孝也は風邪をひいたことはないし、お粥を食べた記憶もない。ただ単にそう言ってみたかっただけだった。

 しかし、美味しいと思ったのは事実だ。味見をしなかったのでうまく出来てるか不安な部分もあったが、うまくいって良かったと思っていた。まあ、風邪のせいで味覚がおかしくなっているのかもしれないが。

 孝也はお粥をゆっくり味わいながら食べ、完食した。

 「ご馳走様でした」

 手を合わせ、1人呟く。どうせ聞いてる人は誰もいないのに孝也はいつもやっていた。

 返ってこない返事をいつまでも待つことはなく、イスから立ち上がると、流し台に土鍋とスプーンを持っていき、すぐに洗い物を始めた。

 量が少なかったのですぐに終わらせるとリビングまで行きソファに座った。

 「ふう。思ったよりもすぐに元気になったな」

 もちろん、完全にいつも通りというわけではない。声は枯れているし、まだ頭も少し痛い。ソファに座って気がついたが倦怠感もあった。だが精神面では孝也はかなり元気な方だった。

 ふと、朝出したままの体温計と薬がテーブルの上に置いてあったことに気がついた。朝、見つけたのは良かったのだが、部屋まで持っていくことを忘れていたようだ。

 「熱はどれくらいあるんだ?」

 体温計の電源を入れるとピッと電子音が鳴り、待機状態になった。孝也は寝巻きを脱いで上半身を露わにする。そのまま脇に挟んで天井を見つめる。

 30秒ほどで経ったところでピピピッと電子音が響いた。体温計を脇から外してメモリを見る。

 「37.6℃か。思ったよりも高かったな……」

 体温計の電源を切り、寝巻きを着ると薬を持って立ち上がりキッチンへ行く。コップに水を入れて薬をケースから取り出す。

 「えっと、15歳以上は3粒か」

 箱に書いてある通りにして薬を飲んだ。

 部屋に戻ると孝也はすぐにベッドに仰向けに寝る。

 真昼間ということもあり、部屋の窓から差し込む陽光は孝也を一切寝させる気がなかった。一向に眠くならない孝也は窓越しに見える青空を眺めていた。

 青空の奥には入道雲が少しずつ育ち始め、空を支配しようとしていた。

 ずっとそれを見ていると段々と眠くなってきた。一度大きく欠伸をすると孝也は目を閉じた。


 時は少し遡り、場所は変わる。

 12時になり、昼休みが始まった学校。遙が席から立ち上がり、お弁当を二つ持って晴翔の元へと駆け寄って行く。

 「ハルくん、お昼一緒しよ〜。今日は私がハルくんのためにお弁当作ったんだよ!」

 「はるちゃんの手作り! めっちゃ嬉しいよ! ……あ、でもその前に松原さんと星乃さんに孝也が風邪だってこと言わないと」

 遙からお弁当を受け取ると晴翔が思い出したように言う。実際に忘れていたのだが。

 「そうだった! 忘れてたよ〜。それじゃあ私は星乃さんに伝えてくるよ」

 「わかったよ。俺は松原さんに言っておくよ。あ、今日の勉強会はどうする?」

 「う〜ん、どうしよっか? 中止にしちゃう?」

 何かを期待した眼差しを晴翔に向ける遙。それに応えたい気持ちはあるが、晴翔はそれを押さえつける。

 「勝手に決めるのは2人に悪いから、放課後に相談して決めるのはどう?」

 「そうだね! そうしようっか」

 遙はそう言うと2人は立ち上がり、晴翔は窓際で複数人と話している松原のところへ。遙は教室を出ていき、星乃のところへと向かった。

第47話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。

一日中何もせずに結局こんな時間になってしまいました。

1日何もしない日があってもいいと思うんですよね〜。いや、絶対にあっていいはず。休息は大事ですよね?

そのうち余裕ができたら七夕回とかもやりたいですね〜。需要があればですけど……

それではまた次回、お会いしましょう

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