第48話 復活と来客
窓から差し込んでくる陽の光を浴びて再び目を覚ます。体を起こし、外を見ると空は燃えるような赤色に染まっていた。陽が傾いたことで昼の時よりも陽光が部屋を照らしていた。
「今、何時だ?」
スマホの画面をつけて時間を見るとちょうど16時30分を示していた。薬を飲んだおかげか体調も良く倦怠感や体の熱も昼間よりは楽になっている気がした。
ベッドから出て一先ず意味もなくリビングへと向かう。
確実に良くなっているようで普段に近い感覚で動けるようにもなっていた。
リビングに行くと片付けずにテーブルの上に置かれていた体温計を見つけた。
なんとなく体温は下がっているような気がするが取り敢えず体温を測ることにした。
いくら良くなったからといっても完全に治っている気はしていなかった。
ソファに座りながら昼の時の体温を思い出そうとする。
「確か昼に測った時は37.6だっけ……」
昼のことなのだが既に朧げな記憶になっている。それくらい体が参っていたのかもしれない。
上半身の寝巻きを脱いで熱を測る。
しばらくしてピピピッと音が聞こえると脇から外してメモリを見つめる。
「37.3℃か……まだ熱はあるんだな」
体温計の電源を切る。まだ声質に少し違和感があり、喉を押さえて何度か声を出してみる。
「あー、あー。やっぱり声もダメか」
耳から入ってきた自分の声は明らかに普段よりも掠れていた。
やはり薬を一度飲んで寝ただけでは治らないようだ。
孝也は体温計をケースに仕舞うと元あった場所へ片付けた。
薬の効果が少しずつ薄れてきたのか、倦怠感が増し始めていた。孝也はひとまずソファに仰向けに寝転がると目を閉じた。
その時、家の中にインターホンの音が鳴り響いた。
孝也はため息と共に目を開け、ゆっくり起き上がり玄関へと歩き出す。
「なんか頼んでたっけ?」
絞り出したような声で返事をしながらドアを開ける。しかし、目の前には宅配の人はいなかった。
下を見ると栗色の髪の少女が立っていた。
「あ、三河さ、ん……」
名前を呼んだところで彼女は顔を真っ赤にして直ぐに下を向いてしまった。
そんな様子の星乃を気にせずに孝也は問いかける。
「星乃か。どうした?」
「いえ、風邪を引かれたと聞いたので様子を見にきたんですけど……」
顔が見えないのでどんな表情をしているのかさっぱりわからない。唯一わかるのは耳が赤いということ。だが心配してくれているのだろう。孝也はできる限り優しい声を出そうとする。もちろん擦れているが。
「そっか、ありがとうな。それよりもなんで下をずっと向いているんだ?」
「……それはあなたが服を着ていないからです!」
彼女は頬を膨らませて少し語気を強くする。あまり大きい声を出さないで欲しい。頭に響いて痛い。
「そうか……忘れてたよ」
しかし彼女に言われてようやく孝也は気がついた。体温を測った時に服を脱いだのだがそのままだったということに。
どうりで星乃が顔を上げてくれないわけだ。孝也は服を着ようと中に戻ろうとすると足の力が抜けて倒れそうになる。しばらく服を着ないでいたから少しずつ体調が悪くなっていることに気がついていなかった。
「だ、大丈夫ですか!?」
孝也はなんとか膝をつき、倒れはしなかった。突然倒れそうになった孝也を見て星乃が急いで駆け寄ってくる。だが孝也の意識は朦朧とし始めており、彼女の声も届きづらくなっていた。
「……ちょっと失礼しますね」
そう言って星乃は孝也の額に手を当てる。彼女の冷んやりした手がとても心地良かった。
「すごい熱ですね……。ひとまず、三河さんを寝かせないと。三河さん、お邪魔しますよ」
返事は来ないが星乃は家に入る。まだ意識はある孝也に声をかけた。
「三河さん、お部屋はどこですか? 手伝いますから教えてください」
星乃が優しく声をかける。今度は頭には響かず、癒されるような声だった。孝也は少し落ち着いたような表情で彼女に囁いた。
「2階、の……目の前の部屋だ……」
「わかりました。さ、肩を貸しますから行きましょう」
星乃の言葉に素直に従い、彼女に肩を借りながら自室へと向かう。星乃はゆっくりと孝也の歩幅に合わせて歩いてくれた。
そして部屋の前に来ると孝也に声をかける。明らかに先ほどよりも呼吸が速くなり、体温が高いのを感じた。
「お部屋に着きましたけど、入っても良いですか?」
「……あぁ」
一言そう呟いた声が聞こえると星乃はドアノブを回して部屋に入った。孝也をベッドまで連れて行き、寝かせた。
「……すまないが、一階のリビングに俺の寝巻きの上が落ちてるはずだ。それを、持ってきてくれ……」
孝也は途切れ途切れになりながらも星乃に伝える。
「わかりました」
彼女は優しく微笑みながら、部屋を後にした。
一階に降りてリビングに行くと確かに寝巻きらしきものが落ちていた。それを拾い上げる。
「あとは冷却シートみたいなのがあれば良いのですが。流石に人様のお家の中を漁るわけにもいかないですし……」
星乃はどうしようか、考えながら取り敢えず彼の服を持っていく。
部屋の前に来るとノックをする。返事は返ってこないが、部屋の中に入った。
「服持ってきましたよ。それと私少し出てきますね」
星乃は考えた結果、今の孝也に必要そうなものを買いに行くことにした。近くにコンビニなどもあったはずなので問題ないと思っていた。
「……わかった。気をつけて帰れよ」
ただ、まともに思考ができていない孝也は彼女が帰宅するものだと思った。そしてそれだけを言うと彼は糸が切れたように眠ってしまった。
「おやすみなさい、三河さん」
目を閉じて寝息を立て始めた孝也の耳もとで、優しくそっと囁くと彼女は部屋を出ていった。
第48話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
あと2話で50話ですが、今回で50部達成しました〜! ありがとうございます。そして紛らわしいですね……
今回のサブタイトルの復活という言葉ですが、孝也くんが復活ではなく風邪が復活するという意味でしたー
あ、別にどうでも良いですね…50話で10万文字くらいにもいきたいですねー
いろいろ頑張りますね。これからも応援してくれると嬉しいです!!!
それではまた次回、お会いしましょう




