第30話 始まった勉強会
気が付くと始まっていた勉強会。そして孝也はこれから自分がどれだけ苦労するか予想してなかった。
「孝也、ここはどうやるんだ?」
「たかちゃん、ここは?」
「孝也くんこれって……?」
「三河さん、少しいいですか?」
始まってから5分後、全員孝也に聞いてきていた。最初に晴翔が質問をしたら連鎖的に他の人も孝也に聞くようになっていた。
晴翔と遙は赤点まっしぐらだから聞いてくるのは分かるけど、問題はあとの2人だ。
松原は最初に孝也を誘った時には『私が教える』みたいなことを言っていたのに、今や孝也に質問している。
星乃に関しては学年1位が2位に聞いているという不思議な構図なのだが、普段から教えていたので何も思わなくなっていた。『慣れ』というところが問題でもあるのだが。
孝也は居ればいいだけだと思っていたので、全員がこんなに自分に聞いてくるとは思ってもみなかった。
そしてなんとか30分が経過した。普段は星乃だけだったからあまり疲れなかったが、流石に全員の相手をしていると短時間でもかなり疲れる。
珍しく集中している晴翔と遙の邪魔をしたくなかったが流石に耐えられなかった。
それに孝也以外は気がついていなかったが遙に関しては途中から勉強のフリをして変な落書きをノートにしていた。それに合わせて遙からの質問の回数も減った。
「一旦休憩だ」
遙以外からの止まらない質問の雨を一時的に凌ぐために、そして今言えば絶対に遙が乗ってくるだろうと思った孝也は一瞬聞かれなくなったタイミングで孝也は提案する。
「やっと休憩だ〜」
予想通り、最初に乗ってきたのは遙だ。言うのと同時にペンを手から放り、机の上に突っ伏していた。それを見た晴翔も何も言わずにノートを閉じた。
集中するまでには時間がかかるのに集中が途切れるのは早いな。
「流石に早くないですか? まだ始まって30分ですよ」
しかし、星乃は不服なようで孝也の提案を認めない。松原もうんうん、と首を振っていた。2人の反対意見を聞いた遙と晴翔の顔が青ざめて絶望していた。
「ええ〜休憩しようよ〜勉強のしすぎで死んじゃうよ〜」
「そうだよ、2人とも。さ、休憩しよう」
晴翔たちはなんとしてでも勉強をしたくないのか2人を説得している。しかし、なかなか折れない2人に苦戦をしているようだ。その様子を鼻で笑い、眺めがら椅子からそっと立ち上がる。
「じゃ、俺はちょっと抜けるわ」
「待ってください、聞きたいことがまだ……」
我関せずの孝也は一言だけ言い残すと星乃の言葉を無視し、図書館から出て行った。
図書館を出て、そのまましばらく廊下を歩いて行き、校庭が見えるところまで来た。テスト前だと言ってもまだ2週間ほどある。外では部活をやっている生徒がいた。
「疲れた……」
開いていた窓に寄りかかり、外で元気よく部活をしている彼らを眺めて気分転換をしている。がその時間も長くは続かない。晴翔が小走りで近づいてくる。
「孝也、1人だけ抜けるなんてずるいぞ。このこの〜」
隣に来ると肘で孝也の脇腹を3回ほど突いてきた。うっとしいが何もする気が起きない。
「ずるくないだろ。どいつもこいつも俺にばっかり聞きやがって……流石に俺だって疲れるんだよ」
ため息混じりに文句を言うと晴翔が笑う。
「ははは、まあこの勉強会は孝也の頭の良さを当てにして開いてるようなもんだからな」
「それにしても、こういうのっていろんな奴に聞いたり、みんなで相談しあったりするもんじゃないのか?」
やったことのない孝也は疑問を持っていた。晴翔なら分かるかもしれないと思い、聞いた。
「俺も勉強会なんか初めてだぞ」
しかし、予想外の返答に少し孝也は驚いた。自分とは違い、友達の多い晴翔や遙なら個人で誘われているところを何度か見かけていた。主に異性にだけど。
「そうなのか? お前結構誘われてた気がするんだが」
「誘われても断ってるんだよ。はるちゃん以外と一緒にいても意味ないから」
真面目な顔をして言っていることはただの惚気だった。
「そうか……お前に聞いたのが間違いだったな」
彼が出した答えにがっかりしていた。
その勉強会の誘いを断らなければ今追い込まれてこともなかったのに。
「おいおい、そんなにつまらなそうな顔すんなって。他にも理由はある」
笑っている彼を見て期待できない孝也は興味なさそうに外を見ながら仕方なく聞いた。
「それで、その他の理由っていうのは?」
「俺とはるちゃんって人に教えられないし、孝也以外に教わっても理解できないんだよ。だから断ってんの。どっちかって言うとこっちの方が大きいかもな」
それを聞いてあることを思い出した孝也が晴翔に文句を言う。
「だからってテストの前日に範囲全部を教えてくれって言うのは無理がある」
「やっぱりか。前々から無理だとは思ってたんだよなー」
晴翔も外を眺めながら笑っている。その様子に少し苛ついた。
わかっていたならやめて欲しい。こっちもかなり疲れるんだ。と思ったが言うのはやめた。
「そろそろ戻ろうぜ」
「そうだな」
晴翔の提案に頷くと開いていた窓を閉めて、2人は並んで図書館へと帰っていく。
図書館に着き、ドアを開けて中に入る。
「たっだいま〜」
晴翔の呑気な挨拶をすると休憩したおかげか元気になった遙が呼応した。
「おっかえり〜」
晴翔と遙がはしゃいでいる中、松原と星乃はなぜか気まづそうになっていた。
「2人はどうしたんだ?」
「なんでもないです」
「うん、なんでもないよ」
孝也の質問に声を揃えて否定してきた。多分この2人は初対面だから緊張したに違いないと思い込み、孝也はそれ以上深く聞こともなく席についた。
晴翔も気がついていたらしく、不思議に思った彼は孝也が聞かなかったことを呟いていた。
「なんでもなかった雰囲気じゃないんだけどな……」
隣にいてバッチリ聞こえていた遙が不敵な笑みを浮かべながら口を開く。
「それはね〜、ん!?」
何を言おうとしているのかわかった松原が顔を赤くしながら急いで遙の後ろに回って口を塞ぐ。
「言わなくていいよ!」
遙は声が出せなくなり、松原の手を叩いている。
「ご、ごめんなさい!」
叩かれていることに気がついた松原は急いで手を離して頭を下げて遙に謝る。
「……はあ、うんうん、私こそごめんね」
一呼吸置いてから遙も反省したようで首を横に振って松原に頭を下げていた。
彼女たちがどんな話をしていたのか、少し時は遡り晴翔が図書館が出て行ったあとの話。
30話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
ついに30話に到達しました! やったあ〜 よく続けてきたと自分を褒めたいですね!
まだ全然終わらないんですけど。書きたい話はまだまだたくさんあるので頑張って行きます!
応援よろしくです!
それではまた次回、お会いしましょう




