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傘から始まる恋物語  作者: 霊璽
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第29話 勉強会の始まり?

 次の日の昼休みの時間。孝也は自席にて1人落ち着きがなかった。理由は簡単!松原に勉強会のことを話さなければならないからだ。

 松原の方をチラッと見ると何人かで食事中だった。あの中に行く勇気は孝也にはない。

 晴翔と遙も今は教室にはおらず、完全孤立状態だった。ちなみにだが晴翔と遙には松原を呼んだことはまだ言っていない。

 絶対に何か言われることをわかっていながら言うのはとても億劫だった。

 頭を抱えてなんて言うか考えていると肩をトントン、と優しく叩かれた。振り返ると松原が後ろで手を組み、いつもの明るい笑みを浮かべて立っていた。

 「孝也くん。昨日のことなんだけど」

 笑顔だがいつもより緊張してるのか顔が少し強張っている。

 対照的に孝也は表情を一切崩さなかった。しかし内心は緊張していたようで目を合わせていない。

 出来るだけ平静を装って話す。

 「そのことか。ちょうど伝えようと思ってたところだ」

 「それで一緒にできそうかな?」

 完全に笑顔が消え、緊張している様子。彼女からの問いに孝也は首肯する。

 「ああ、構わない。それと少し人数が増えた」

 「そっか、そうなんだ。誰が来るんだろう? ちょっと楽しみ」

 心底安心したようで、普段なら跳んで喜びそうなのに胸を撫で下ろしホッと息を吐いていた。

 「今日からやるらしいから放課後に図書館に来てくれ」

 「オッケー。じゃあ、また放課後にね。バイバイ」

 満面の笑みを浮かべ、手を振って彼女は友達のところへ戻って行った。

 晴翔と遙にも伝えようと思っていたが、彼らは昼休みが終わるギリギリに戻ってきたので言うことができなかった。ま、放課後になれば勝手に着いてくるだろう。という結論に至り、孝也は2人に伝えることをやめた。


 長かった授業が終わり、放課後になった。孝也が荷物をまとめ終えて立ち上がると晴翔が後ろから勢いよく肩を組んでくる。あまりの勢いに孝也は前によろけて机に手をつく。

 「行こうぜ! 孝也」

 はしゃいでいる子供のような笑顔を向けてくる晴翔を苛立ち彼を睨む。

 「邪魔だ、早くどけ」

 「おいおい、冷たいな。もっと楽しくいこうぜ」

 孝也の睨まれているも肩にある手を退けようとしない。それどころか人がほとんど教室に居なくなったことをいいことにいつもより煩い。

 諦めて無視しようとするともう1人の騒がしい奴が来た。

 「そうだよ、たかちゃん。そんな辛気臭い顔しなーい!」

 遙は孝也の頬を人差し指で突きながら楽しそうに笑っている。左右からめんどくさい奴らに絡まれ、孝也は勉強を教える気が無くなり始めていた。

 「今すぐ離れないと今日の勉強会は無しってことで」

 2人が一向に退きそうにないので、孝也も明るい声で提案すると2人は急いで孝也から離れる。

 「さあ、はるちゃん。図書館に行こうか」

 「そ、そうだね! それじゃあ、先に図書館に行ってるからちゃんと来てよ!」

 何もしていなかったかのように涼しい顔をする晴翔と少し焦った様子の遙は、それだけを言い残して教室から出て行った。

 教室に置いてかれた孝也もカバンを背負い図書館に行こうとする。

 「孝也くん、図書館まで一緒に行こうよ」

 後ろから声をかけてきたのは松原だった。

 「ま、いいか」

 少し考えたが、特に断る理由もなかったので首を縦に振り、返事をして2人で教室を出て図書館へと向かう。

 静まり返った廊下を2人で歩いていると松原が話しかけてきた。

 「勉強会の参加者って晴翔くんと遙ちゃんだったんだね」

 どこか安心したように言う松原。

 「そうだ。まあ、あと1人いるが」

 孝也は彼女の顔を見ず、表情も変わらないで淡々と告げる。

 「へえ〜誰だろ。楽しみだなぁ」

 松原は遠くを見てあと1人が誰なのか、考えているみたいだった。その瞬間も楽しんでいる松原は笑顔だった。

 話が終わったのと同時に図書館の前に辿り着く。

 「じゃあ、開けるよ……」

 彼女がなぜか手が震えているのを見て孝也は微笑する。

 「そんな緊張しなくてもいいんじゃないか?」

 「そうだね、そうだよね。開けます!」

 いつまで経っても彼女がドアの引手の手前で止まっているので、孝也は呆れて後ろから手を伸ばしてドアを開ける。

 「ひゃっ!?」

 突然、松原が変な声をあげてドアの前で硬直してしまい、図書館の中に入れない。

 「おい、早く中に入れ」

 「……え? あ、うん。ごめんね」

 一向に動かないので後ろから声をかけた。

 少し遅れてから謝罪がきたが、松原はこっちを見なかった。そして急いで図書館の中に入っていくとき後ろから耳の先が少し見えたが熟れたリンゴのように真っ赤になっていた。

 「あれ!? たかちゃん、なんで松原さんと一緒なの!?」

 松原の後ろをついていくと遙が大きい声をあげる。その声に釣られて晴翔と星乃がこちらを見ている。

 「一緒じゃ悪いかよ。それとここ図書館」

 どうせ何か言われるだろうと予想していた孝也は冷静に対応する。孝也に注意された遙は急いで両手で口を押さえている。

 3人が集まっていた場所にいくと最初に晴翔が口を開いた。

 「しかし意外だな。まさか松原さんも参加するとは」

 「孝也くん、言ってなかったの?」

 大して驚いていない様子の晴翔の言葉を聞いて松原の方が驚いているようだった。

 「言わなかったんじゃない。昼休みにこの2人がいなくて言えなかったんだ」

 鞄を下ろして椅子に座りながら孝也が言う。それを聞いた晴翔と遙が揃って笑う。

 「それよりも早く勉強しましょう」

 2人を無視して星乃が手を叩いて言う。彼女の一声で勉強会をする雰囲気になり始めた。

 「ねぇねぇ、席の位置はどうする? もちろん私はハルくんの隣!」

 遙は本当に勉強をしにきたのか疑いたくなるくらいはしゃいでる。せっかくの雰囲気も破壊した。

 別に席の場所なんかどうでもいい孝也はテキトーに提案する。

 「頭いい奴とバカで分ければいいんじゃないか?」

 「孝也くんそれはさすがに……」

 「そうですよ、三河さん。流石に言い過ぎです」

 別に誰とは言ってないのだが、揃って笑ってる2人がいるので星乃も松原もなんとなく分かったのだろう。

 星乃と松原からお小言を言われた孝也は何も言わなくなった。そして孝也以外の人で話し合った結果、星乃と孝也が隣になり、残りの3人が対面に座った。

 どうやら、教える側と教わる側で分けたらしい。それって最初に俺が提案したことじゃないか? と少し疑問に思った。

 そして松原は自分が教わる側の席にいるのが不服らしく、不貞腐れている。

 しばらく何も言わないでぼーっとしていると気付けば孝也以外教科書とノートを開いて勉強をしていた。

第29話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。

次回で30話になります! 自分でもこんなに続けられてて驚いています。

そろそろ梅雨の季節になるのでこの小説と合ってきましたね。もっとたくさんの人に読んでほしい。そしてブックマークや感想もお待ちしておりますのでよろしくお願いします!

それではまた次回、お会いしましょう

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