第28話 2人の帰り道
学校を後にした2人は帰り道が同じ方向ということもあり、一緒に帰っていた。最初は晴翔たちが見てるかもしれないと警戒していたがどうやら本当に先に帰ったようだ。今は2人並んで歩いていた。
「すまなかった。勉強していた所を邪魔させて」
孝也は歩きながら晴翔たちによって勉強の中断をさせられたことを星乃に謝る。
「いえ、私も楽しかったので気にしてないですよ? それに勉強会の約束まで出来ましたから」
彼女は気にしてないようだった。表情はいつも通りだが楽しみにしているのか、いつもより雰囲気が明るいように感じた。
迷惑がっているのではないか不安だった孝也だが杞憂に終わったようだ。
孝也がホッとしていると星乃が何かを思い出したようで話しかけてくる。
「そういえば、三河さん」
「どうした?」
振り返り彼女の目を見るとどうやら真面目な話ということが伝わってきた。
「花香さんたちが突然来て中断してましたが、三河さんは他の方からも勉強を誘われていましたよね?」
彼女から言われて、そういえばそうだったと思い出し、首を縦に振る。
「ああ。だが晴翔たちとやることになったし、断ろうと思ってるんだが……」
断る理由ができたので明日にでも言おうと思っていた孝也だが、星乃から名案だと言わんばかりに笑顔でとんでもない提案がされる。
「せっかくの勉強会なんですからその方も呼びましょう」
「あ、えっと……そうだな。そうか、まあそういう発想になるよな」
それを聞いた孝也は困ってしまい、言葉をうまく紡ぐことができていなかった。
ある程度は予想がついていたことだが、頭を掻きながらなんて言おうか考える。そしてそのまま黙ってしまった。
孝也としてはできれば断りたいことだった。あの人(松原のことだが)が参加すれば絶対に面倒臭いことになるのは避けられないだろう。何せ晴翔と遙がいるのだからな。
しばらく黙って悩んでいる孝也を見ていた星乃が動く。彼女が孝也の事情を知るはずもない。星乃は上目遣いで眉尻を下げて説得しにかかってきた。
「駄目なんですか?」
星乃の表情を見て息を呑んで、すぐに顔を逸らした。心臓の音が早くうるさく聞こえて来る。
自分の顔が赤くなっていることを自覚しているので顔の下半分を片手を使って隠す。今、自分でどんな表情をしているのかは分からないが星乃には見られたくはない。
全く、ずるいな。そんな表情をされては断れる男なんてそうそういないだろう。かく言う孝也も断れる訳もない。逆に断れる人間がいるなら教えてほしい。
しばらく星乃の方に顔を向けないでいると服の袖が引っ張られる。
「あの、どうかしましたか?」
あの可愛さを無自覚でやっていたようで少し焦ったように聞いてくる。
「いや……なんでもない。少しだけ待ってくれ」
孝也は落ち着くために深呼吸をして顔の赤みが元に戻るのを待ってから星乃の顔を見る。
「……わかったよ。明日、その人にも伝えておく」
少し溜めてから孝也は渋々承諾した。それを聞いた星乃は一段と表情が明るくなる。
「ありがとうございます。やっぱり人数が多い方が楽しそうですから」
「そうだな」
もう考えるのが面倒になった孝也はテキトーに返事をした。
「三河さん。もう一つ聞きたいことがあるのですが」
「どうした?」
星乃から訊かれたことはいたって普通のことだった。
「その三河さんを誘った方はどんな人なんですか?」
その問いに孝也は特に深く考えることもなく、シンプルに教えた。もちろん松原と孝也の事情は言わないが。
「4組で学級委員長をやってる松原由紀ってやつ」
「女の子ですか?」
彼女は意外そうに目を丸くしていた。
「そうだが、なんでそんな顔をする」
「いえ、まだ会ってからそんなに日は経ってないですけど三河さんの性格上、女の子と話すのは結構無理しているのではないかと」
出会ってからまだ半月も経っていないのによくそこまでわかるものだ。と孝也は感心していた。
星乃に言われたことに首を縦に振って頷く。
「確かに間違ってはいないかもな」
それを聞いた星乃は眉尻が下がった。困っているような表情をしていた。
「もしかして私と話すのも結構無理してますか?」
「最初のころはな。今は普通になったからそんな顔するな」
それを聞いて安心したのようでホッと息を吐いていた。そして孝也も星乃を見ていて一つ疑問に思ったことがあった。
「星乃は勉強会みたいなことはしたことあるのか?」
「ないです。ですから今回のことはとても楽しみなんです」
いつも以上に彼女の声に弾みがついている。
「そうか。ま、ちゃんと勉強するやつなんて星乃ぐらいだろ。学年1位の学力期待してるからな」
今回参加するメンバーを考えるとまさにその通りだった。晴翔と遙、それに松原も多分教えられる側になるだろう。松原の学力がどの程度なのか分からないが、学年の1、2位がいる時点で教える立場になることはない。
孝也の言葉に星乃が頬を膨らませている。
「なんですか、それ。変に期待しないでください」
口ではそう言っているが、よく見れば頬が膨らんでいるのではなく、緩み微笑していた。彼女が笑っている姿につられて孝也も口角が上がっていた。
彼女の表情が明るくなっていると孝也も無意識のうちに嬉しい気持ちになっていた。それでも無意識ということでまだ孝也は自分の感情に気がついていなかった。
しばらく2人は他愛のない会話をしていると気がつけば2人の家へとそれぞれ向かう分岐点にきていた。
「それじゃ、また明日な」
「はい。また明日」
2人は別々の道を行く。1人になってから晴翔のある言葉を思い出していた。それは『お前、やけに星乃さんには甘いよな』というもの。言われた時には意味がわからなかったが今思い返すとあながち間違いじゃないかもしれない。
夕焼けというには暗く、見える星が多くなり過ぎている空を眺めながら呟く。
「……はあ、わからねーな」
頭を掻きながら家の玄関前に辿りついた孝也だった。
第28話を読んでいただきありがとうございます。作者の霊璽です。
夜中更新は今回でひとまず終わりです。来週からはいつも通り21時の間に更新を再開する予定です。
GWそんなに更新できなくてごめんなさい!
そして多分ですがこれを公開するとPVが2000を超えます! 読者の皆様には感謝しかありません。
そんな作者からお願いです。感想やブックマークなどもお待ちしておりますのでみなさんよろしくおねがしますね!
それではまた次回、お会いしましょう




