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エンドレスエンド  作者: kaxali
戦線終結/千繕醜血
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エピローグ

すまぬなお待たせしたぜエピローグじゃよ

 死屍累々の日本軍本部を抜け出し、ダイゴは北往生市に来ていた。この街はその性質上移住希望者以外立ち入ることはできない。故に逃げ込むには最適の場所だった。

 北往生市をぐるりと囲む隔壁の前まで辿り着くと、ダイゴは人1人がやっと通れる程度の穴を開け、それを潜り抜け中に入り込んだ。


 北往生市を囲む隔壁には、8つの大きな門がある。本来はそこを通って中に入るのだが、この門には記憶処理装置があり、外での常識である『北往生市は日本軍が”異能の力”を研究するために設立した街』という記憶が消去される。


 ダイゴは自分が日本軍に追われる立場だということを理解していたため、ここの記憶処理装置に改造が施されている可能性を考慮し、壁に穴をあけそこから入ったのだ。


 潜った先は魑魅魍魎が跳梁跋扈する、まさに地獄のような場所で、ダイゴは目を疑った。

 我が物顔でひび割れた道路を歩く12足歩行のムカデ牛に、透明な表皮から内臓が透けるウサギ、その他にも名状しがたい奇妙な生き物が視界に捉えただけでも10体以上。

 そのほとんどはダイゴのことなど気にも止めないか、気付いた瞬間にそそくさと逃げたが、先程のムカデ牛はダイゴの返り血で赤く染まった姿に反応し突進した。


「バケモンの掃き溜めだとは聞いてたが……ここまでとは思わなかったな」


 だが、所詮は肛門と口が繋がっただけ3頭の牛、駆けだしてすぐ足を絡ませその場に転倒し、立ち上がることもできずにジタバタとしていた。

 その様子を呆れた目で見ていたダイゴは、哀れと思いつつも横を素通りし、より奥へと歩を進める。

 ダイゴの北往生市での生活が始まった。




 1ヶ月後、雨の降る日だった。ここでの生活に慣れたダイゴは、たまたま通りかかった第二大門で、そこにいる門番に声をかけられた。


「あんた……いや、あなたはもしや、総長……?」


 聞き覚えのある声と2人称に、ダイゴは足を止める。

 視線を向けた先にいたのは、反乱軍副総長、薬師寺八丸だった。


「薬師寺……お前、生きてたんだな」

「まぁ、九死に一生を得た、ってやつです」


 薬師寺はそう言って右足の裾をめくる。すると、金属でできた義足が露わになった。


「そうか……まぁ、生きてたんなら良かったじゃねぇか。ところで、お前以外に生きてるやつはいるのか?」

「いえ。みんな、死にました」


 改めて、薬師寺の口から語られた残酷な事実に、ダイゴは奥歯を噛みしめる。


「なぁ、なんで俺たちの作戦は上層部にバレたんだろうな」


 ポケットから取り出したタバコを吸い、自身を落ち着かせたダイゴは薬師寺にずっと気になっていたことを質問する。

 反乱軍の中に裏切者がいるとは思えなかった。反乱軍の存在は、既に反乱軍に所属している者からの紹介以外で知る術はない。やりとりは全て口頭のみで行われ、それは外部の協力者に対しても同じ対応をするという徹底ぶりだった。

 さらに、入隊する際も出生から人間関係まで、入隊希望者の素性は全て調べ上げ、入隊後も誰と電話したのか、何を話したのか、全て記録させていた。もし一寸でも怪しい素振りがあった場合には戦場にて殺害していた。

 これは薬師寺が反乱軍を設立したその日から、あの殲滅作戦の日まで続いていたことだ。つまり、あの日の時点で反乱軍に所属していたのは、100%の信頼を置ける同志という訳だ。


「俺はあいつらの中に内通者がいたとは思えない。そうなると、日本軍の力を俺たちは侮っていたのか?」


 ダイゴの台詞に薬師寺はバツの悪そうな顔をするが、意を決し、口を開く。

 雨足は、少しずつ強くなってゆく。


「……内通者は、僕です」


 薬師寺は、自身の口から、確かにそう言った。

 だが、ダイゴは耳を疑い、聞き直す。


「……すまねぇ、聞き間違えた気がする。もう1回言ってくれ」

「僕が軍の上層部に情報を渡しました。僕がみんなを殺す引き金を引きました。僕が全て計画して、こういう状況になるように」

「それ以上喋んな!!!」


 感情を押し殺し、淡々と言葉を並べる薬師寺をダイゴは大声で制する。


「じゃあなんだ、お前は最初から俺たちをだまして、最初から俺たちを殲滅するつもりで……」


 どしゃ降りの雨に打たれながら、ダイゴは顔を手で覆い、絞りだすように話す。


「……最初から俺たちは、仲間じゃなかったのか?」


 手のすきまから、水滴が滴った。それは裏切られたことよりも、これに気付けず仲間を死においやってしまったという、悔いの涙だ。

 だが、薬師寺はまたも手のひらを返すような発言をする。


「これを計画、実行したのは僕です。ですが、これを実行に移す決断をしたのは、338名の反乱軍全員の意志です」


 その言葉に、ダイゴはうつむいていた顔を起き上がらせる。


「彼ら全員に是非を問い、1人でも反対者がいれば即座に中止するつもりでしたが、1人も反対者はいませんでした」

「……一体どういうことなのか、詳しく、話してくれ」


 顔を上げ、ダイゴはようやく薬師寺に目を見た。



 その後、薬師寺から語られたことをおおまかにまとめるとこうだった。


 薬師寺が反乱軍を立ち上げた際、最終目標を設定した。


 「現状の腐敗した日本軍をひっくり返し、本来あるべき姿へと回帰させる」


 方法は、彼らが行ってきた非道の数々をマスコミにリークしてダメージを与え、世論を身に着けた状態で日本軍本部を占拠し、場合によっては実力を行使し上層部を軍から弾き出す、というものだ。

 この計画を実行するにあたって肝心なのは、マスコミと世間を煽るのに十分な証拠を集めること、そして、占拠する際におそらく障害となる奇崎隊を”どうにかする”ことだ。

 証拠集めは時間をかければデータバンクをハッキングして入手できるが、奇崎隊への対処だけは難航していた。

 魔術付与手術の前から日本軍最強の奇崎隊だ、そう簡単に潰せるものでもない。これが薬師寺たちの悩みの種だった。


 だが、そんな時にダイゴは妻の千歳から”息子の大知が日本軍の非合法な実験を受けさせられ命を落とした。そして、この実験からダイゴが適合者であることが分かると、上層部は大知の死を隠ぺいしダイゴに手術を施した”という真実を伝えられる。

 これを知ったダイゴは即座に軍を抜け、外側から日本軍に攻撃しようと覚悟を決めたが、上層部の脅しによって阻止された。

 この話を聞きつけた薬師寺は一か八か、ダイゴに接触する。

 そして、ダイゴは薬師寺の誘いに乗り反乱軍に加入し、皆から認められると、薬師寺の推薦もあって二代目反乱軍総長に就任した。


 これであとは証拠を入手するだけだったが、薬師寺の脳内には常に最悪の可能性がまとわりついていた。

 上層部がマスコミを抱き込みリークをもみ消される、という最悪だ。これをされたらもう”次はない”と考えていい。

 この時、ダイゴは日本軍最強の軍人から世界最強の軍人と言われるまでに戦果を上げ、なかなか反乱軍の集会にも顔を出せずにいた。

 相談できる相手もいない状況だったが、この窮地に薬師寺はある1つの希望を見出した。


 「ダイゴを軍の支配から解放し、自由にする」


 ダイゴであれば1人で日本軍から勝ちをもぎ取ることができる。そして、今のダイゴはまさに日本の英雄、そんな人物の言葉は生半可な報道よりも力を持つ。

 そう考えた薬師寺はダイゴを自由にするための作戦を発案する。

 それは、当初の作戦を実行する際、直前に上層部に自分たちの存在をあえて漏らし、日本軍VS反乱軍の全面戦争を作ることによってダイゴから監視の目を放し、その隙にダイゴを軍の監視下から逃がす、というものだった。

 もちろん全面戦争に反乱軍が勝てれば上々。だが勝てずとも上層部は確実に抹殺し、軍の指揮系統を麻痺させ、ダイゴのことを後回しにせざるを得ない状況を作り出す。


 この作戦はダイゴを除く反乱軍全員に「死ね」と言っているも同然の作戦で、拒絶されるに決まっていると思いつつ、ダメ元で反乱軍の集会で提案をした、ちなみに、この集会にダイゴは欠席していた。

 だが、彼らは全員即答でそれを受け入れた。全員がダイゴのためなら死ぬと応えたのだ。

 こうしてダイゴ以外の全員がこの作戦を承知し、作戦の実行した。

 結果としては1人として上層部の集う会議室に辿り着けず、ダイゴが皆殺しにしのだが、彼らは、最後の最後までダイゴにこの作戦は伝えず、最後の最後までダイゴが反乱軍に所属していることを外部の人間には喋ることはなかった。



「そうか……そうだったのか……!」


 この話を聞いたダイゴは再び顔を隠し涙を流す。だが、その涙は先程とは違う感情がこもっていた。


「あいつらからは絶対に話すなと言われてましたけど、でも彼らの死は無駄じゃなかったって、知ってほしかったんです」


 語っていた薬師寺もいつの間にか目を腫らしていた。


「あぁ、あぁ!あいつらの死は無駄じゃない!無駄になんかさせねぇ!……もう、考えてあるんだろ?」

「えぇ!今度こそ、先送りの作戦ではなく、確実にひっくり返す最高の作戦が、すでに!」


 その言葉を待っていたと言わんばかりに薬師寺は全力でダイゴに応える。彼らの背には、厚い雲の隙間から漏れた光が差し込んでいた。


「この北往生市には表世界には姿を現さない強者が数多く存在します。彼らを味方につけ、今度こそ確実に勝利を収めましょう!」



 北往生管理局に潜入している薬師寺の協力のもと、ダイゴは自由に内外を行き来し、外で情報を集めつつ、見込みのあるものを北往生市に誘い着々と戦力を拡大させていく。


 そして、2018年11月1日、木目丘の大災害の翌日。木目丘市の周辺で奇妙な恰好の少年を見つける。



「よう少年、こんなところで何やってんだ?」

「あァ?なんだァてめェ!話しかけてくんじゃねェよ、クソジジイ!」

はにゃ~

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