変化点、その2
ギリ毎週更新をキープしてる
奇崎隊の名は瞬く間に世界中に広まった。
アムール川でのソ連の全戦力を相手に3割以上の損失を与え、全員生還したという快挙を皮切りに、数々の快挙を成し遂げ、日本国内では生きる伝説のように扱われていた。
しかし、それだけのことをやってのけた当人たちは浮かない表情だった。
「最近、さらに拘束が酷くなってきましたね。自由なんてあったモンじゃないですよ」
奇崎隊のオペレーター、小明は装甲車の座席で愚痴をこぼした。
隣に座る雁屋もタバコをふかしながら、その愚痴に乗っかる。
「全くだ、これじゃ英雄なんかじゃなくてただの奴隷だ」
「英雄ってのは本来こういうモンなのかもな」
「あ?」
「いや、気にすんな」
雁屋の愚痴を聞いた倉木が一言こぼすと、雁屋は苛立ちまじりの煙を吐いた。
居心地の悪くなった小明は窓を開け換気をした。
「すいません、僕がこんな話題を出したせいで」
「気にするな、みんなストレスが溜まってるんだ」
小明が謝罪すると、それまで口を閉ざしていた男、桂川がなだめる。
「しかし、ここまで露骨に拘束されるとは、何か嫌な予感がするな。本部は何と言っているんですか、隊長?」
「あぁ、いつも通りだよ。煙に巻くような返事ばっかだぜ、全く……」
「あのおっさんの口癖うつってません?」
「言うな倉木」
はははっ、と乾いた笑いが窓から漏れた。
「ん?……そういや、奇崎さん息子さんいましたよね?」
「あぁ、今年で13になるな。それがどうした?」
端末をせわしなく操作していた小明が、何かを見つけたのか、ダイゴに話しかけた。
「今ちょっと軍の居住区の住民リスト見てたんですけど、そこに息子さんの名前がないんですよ、奥さんの名前はあるんですけど」
「見落としてるんじゃねぇの?」
「違ぇよ、ほら、お前も見てみろよ。ほら奇崎さんも」
つっついてきた雁屋と、助手席から身を乗り出したダイゴに端末の画面を見せた。そこにはダイゴの妻の名前しかなく、息子の名前はどこにもなかった。
先程桂川の言っていた”嫌な予感”を思い出したダイゴは、携帯を取り出し妻の携帯に電話をかけた。
しかし、少しのコールの後、『おかけになった電話番号は--』と、お決まりの機械音声が流れただけだった。
「おい北野、進路変更だ、本部居住区に迎え」
「任務はどうするんですか?」
「今はいい、それに他の隊のやつらもたまには自分たちだけで戦ったほうがいいしな」
「フッ、了解です」
「小明は一応この車が次の任務に向かっているように偽装してくれ」
「もう完了しました、北野、飛ばしていいよ」
運転手の北野は小明のその台詞を聞くと、アクセルを思いっきり踏んだ。
「千歳!大知!いるか!」
居住区のアパートの一室、小明が特定した部屋の扉を叩きながらダイゴは大声で呼びかけた。
少ししてガチャリ、と鍵の開く音がすると、中から髪のボサボサな女性が頭をのぞかせた。
女性は目をこすり目の前にいる男がダイゴだということを認識すると、しばしダイゴの胸で静かに涙を流した。
しばらくして、ダイゴは装甲車に戻ってきた。しかし、その顔は久しぶりに家族に会えた者とは到底思えないものだった。
「みんな、すまないが、俺は軍を辞める」
「……ダイゴさん、ちょうどそのことで本部から電報が届いてます」
そう言って北野はダイゴがいない間に本部からの内容を伝えた。
簡潔に書くと、それは脅しだった。軍を辞めた場合、息子だけでなく、妻も失うことになるぞ、という。
「軍は意地でも奇崎さんを手元に置いておきたいようです」
「そうか……分かった。なら仕方ない、な」
ダイゴは部下たちに背を向けそう言うと、装甲車の助手席に座った。
なんだかきな臭くなってきましたねぇ~




