エピローグ
これにて7章完結!過去最高の被害が出た章でしたねぇ
宇宙船や隕石が大気圏に突入する際、空気が圧縮されることによって熱が発生する。この現象を断熱圧縮と呼ぶ。
本気を出した禍言の拳、神無は純粋な力だけでこれを引き起こしたのだ。
熱を帯び、白く光る禍言の拳はエンジンフラッシュの眉間を正確に捉え、焼き焦がし、吹き飛ばした。
代償に再生したばかリの禍言の左腕も皮膚は燃え尽き、尚失せない熱が露出した筋肉を焦がし、骨は衝撃で砕けているのだが。
しかし再生能力を開花させた禍言はこれを治すことは造作もないこととでも言いたげな眼差しでこの腕を見下ろす。
そして、地上に降り立ち、ひしゃげた腕を修復させた禍言の前に、一人の男が現れた。
「少し見ないうちに随分とボロ雑巾のようになったな」
眼前の男、即ち博士は禍言の姿を見ると、開口一番そう言った。
そう、禍言の肉体はとうに限界を超えていた。禍言は脳が麻痺していたのか、目で見て分かる腕の怪我しか気づいていなかったようだが。
度重なる肉体の耐久度を無視した力の行使に、エンジンフラッシュ戦、月からの帰還、そして極めつけの神無。
これだけの無茶を繰り返して尚、肉体が爆散していない方が奇跡だった。
さらに、修復した腕も完全に治っているわけではなく、砕けた骨を何とか繋げ出血を止めた程度の、ほとんど応急処置だった。
「……ァ……ェ…………」
「聞こえなかったが、何と言った?」
息も絶え絶え、かすれた声で禍言は何かを言ったようだが、博士は聞き取れずに耳を禍言の口に寄せる。
だが禍言はもう一度言うわけでもなく、博士の腹を殴りつける。
ぽすっという軽い音の拳を受けた博士は何も言わず、禍言に肩を貸し、2人で飛行船に帰還した。
墜落するエンジンフラッシュを尻目に、炎と血で赤に染まった壊滅都市を背に。
その後、博士は飛行船でロンドン全域に陣を刻むと次なる戦場、アラスカへと舵を切った。
わずか数分後にはてなが現着するが、その頃には既に飛行船の影さえも捉えることはできなかった。
「……マジで一歩遅かった、な」
いつかの風景を彷彿とさせる、赤きロンドンを真に受けた人類最強・果街はてなは独り愚痴をこぼす。
エンジンフラッシュが負ける可能性を考慮し最速でロンドンまで駆けたのだが、まさかこれほどまでの被害が出るとは思ってもみなかった。
「何が人類最強の砦だよ、こんだけやりたい放題されて、何一つ守れなくて、あまつさえあたしの尻拭いをガキどもに任せるとか、さ……」
不自然に霧の晴れた空を仰ぎながら、はてなは自身を責める。しかし、それだけ呟くと、いつもの鋭い目つきに戻ると、足元に転がる死体のようなものを足でつついた。
「おいエンフラ、いつまで寝てんだよ」
「……」
「ハッ、かの魔術の祖たるソロモン様の転生体もあんなガキにやられてこのザマか、随分と堕ちたもんだな」
「……はてなさん、いくらアンタでも言っていいことと悪いことがある」
ソロモンと呼ばれ、その名を貶されると、地に伏していたエンジンフラッシュは起き上がり、低い声ではてなを睨む。だが、はてなはそれを意にも介さず、鼻で笑う。
「テメェが起きねぇからだろ。……それにしたってマジでテメェが負けるとはな」
「えぇ、あいつは全力を出さないと、いや出しても尚負けたんでね。この顔のやけども治せないし」
自身の顔面にできた大きなやけどの痕を手で触りながら、エンジンフラッシュは禍言の拳を思い出す。
「はぁ、こりゃいよいよもってあたしもあの場所でコイツを”抜かなかった”の失敗だったな」
はてなは愛用している大剣に目を向けながらそう言った。
「あーやめやめ!反省会は後だ後!そんなことより、あたしはここに来たのは未来の話をするためでもあるんだ」
「……未来?」
未来の話、その単語にエンジンフラッシュは食いついた。禍言に負けて以降、延々と暗かったエンジンフラッシュの瞳に光を取り戻させるのには十分だった。
「あぁ、あたしと、神前議会と北往生の生き残り、そしてあたしの見込んだヤツら。このメンツで近々”対・人類最大”の組織を立ち上げようと思ってる。そいつにゃテメェが必要だ、力を貸してくれ」
ここで書きたいことは次で書くから!読みたきゃ次のあとがき読みな!




