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エンドレスエンド  作者: kaxali
魔術霧中/痲術夢中
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神無

ちょっと久々の2週連続更新です、やったね

 ロンドン北西部、ワトフォードを中心とした半径16km圏内が、一瞬にして壊滅した。

 それは、隕石や核によるものでもなく、はたまたエイリアンの侵略によるものでもなく、たった1人の少年によって。実際には、月に転移させられた少年が帰ってきた結果壊滅してしまった、なのだが、被害者たちに知る由はないし、知ったところで意味はない。

 上空38万kmから飛来した災害を生き残ったものなどいないのだから。

 空から帰ってきた少年はしばらく歩き、自身で生み出したクレーターから這い出ると、そこで足を止めた。


「てめェ、よくもやってくれたなァ、あァ?」


 自身に降りかかる煤を手で払いながら、元凶たる少年、つまり禍言は眼前にいる男に話しかける。

 話しかけられたエンジンフラッシュは、あまりの出来事に愚痴をこぼす。


「……なんで月から帰ってこれんだよ」

「できるから帰ってきただけだろうが、よォッ!!」


 エンジンフラッシュの当然とも言える愚痴に適当な返事をすると、禍言は力強く踏み込み、エンジンフラッシュとの距離を詰める。そして、その勢いを乗せたボディーブローを放った。

 しかし、その一撃をエンジンフラッシュは鈍い音を立てながら前腕で受け止めた。


「っぶねぇ、ギリ間に合ったぜ」


 エンジンフラッシュはそう言いながらガードした腕をブラブラと振る。

 その腕は、先ほどまでの一般的な人間のものではなく、黒く、大きく、そして分厚い筋肉で武装された人外じみた腕だった。

 長身のエンジンフラッシュにすら不釣り合いなその腕で、禍言の一撃をガードしたのだ。


「”ヤールングレイヴ”、対はてなさんように開発した術なんだが、出し惜しみしてたらお前に殺されちまうからな」


 そして、その術を全身に施すことで身体能力を強化する。メキメキと音を立てながら体格を変えてゆき、身長は3mを越え、筋骨隆々とした、元の面影など微塵も残っていない姿となった。

 しかし、禍言はそれに動じることはなかった。いや、この変化に気付くほど禍言はエンジンフラッシュを見てはいなかった。

 誰の目から見てもエンジンフラッシュは先ほどまでとは全く違う姿だと気付けるのだが、禍言の激情に染まった視界には他の有象無象と同じ、”オレをイラつかせるゴミカス”としか映っていなかった。


「いつまでもオレん前でジャマばっかしやがってよォ!いいカゲンくたばれこのクソヤロオォッ!!!」


 怨嗟の咆哮をあげながら禍言はエンジンフラッシュに猛攻を仕掛けた。

 変化の意味も虚しく、エンジンフラッシュは防戦一方となってしまう。だがその表情にはどこか余裕があった。

 一撃一撃が必殺なその拳を受け続けるエンジンフラッシュからは、ガァァン、とまるで金属でもぶつかったかのような音が何度も響く。

 その音は次第にグシャリ、グチャリという音に変わるが、禍言の拳はそこで止まった。


「ハァッ、ハァッ、やっと、効いてきた、か」


 禍言の猛攻を耐えきったエンジンフラッシュは、グチャグチャになった黒腕を修復しながら笑った。

 猛攻を止めた禍言は頭を抑えその場に崩れそうになるが、すんでのところで足を一歩前に出すことで踏ん張った。


「てめェ……何しやがったァ?」


 苦しそうに呼吸をしながら、見上げるように禍言はエンジンフラッシュを睨む。


「俺はただお前の周りの酸素を少しばかり薄くしてやったのさ、真空だとすぐ気付かれちまうからな」


 低酸素状態による酸欠。つまり今の足のふらつきは、高山病によるものだった。


「お前がどんなに強くなっても呼吸をする限りはこれは避けらんねぇよな?」


 煽るように軽口を叩きながらも、エンジンフラッシュが警戒を緩めることはない。

 先ほどの一件から学習していたのだ。月に飛ばしても帰ってくるようなやつがこの程度で止まるはずがない、と。

 あくまでもこれはエンジンフラッシュが体勢を整えるまでの、ちょっとした時間稼ぎにすぎなかった。

 そしてその読み通り、禍言は反撃の拳を振るった。

 しかし、すでに準備を終えたエンジンフラッシュに届くことはなく、禍言の拳の衝撃を増幅・反射させることで禍言自身を吹き飛ばした。

 吹き飛ばされた禍言は時計塔に激突し、その壁に埋まるが、即座に抜けると、ロケットのように飛び出す。


「そろそろ終わらせる、か。……模造・原初の剣」


 ”模造・原初の剣”、エンジンフラッシュがそう呟くと、無数の長剣が生み出され、空中に浮かんだ。

 そして、迫りくる禍言に狙いをつけ、エンジンフラッシュは生み出した剣を撃ち出す。

 ”あの剣を受けんのはヤバい”と、本能で悟った禍言は義腕である左腕で防御する。

 刃の雨を潜り、エンジンフラッシュのこめかみを蹴りつつ、振り抜かずに足先を頭にひっかけ、方向転換をしながら距離を取った。

 低い姿勢を保ったまま、禍言は義腕に突き刺さった剣を全て引き抜く。

 しかし、何を思ったのか、義腕の接続部を力強く掴んだ。

 そして、バキバキ、ブチブチ、ズルズルと気味の悪い音を立てながら、腕に突き刺さった巨大な針ごと強引に引き抜いてしまった。


「お前のそれ、義腕だったんだな」

「テメェにゃカンケェねェよ」


 ドボドボと溢れだす血を気にも止めずに、禍言はエンジンフラッシュの問いかけを冷たくあしらった。


「……フゥ、少し頭が冷えてきたぜ。博士はオレに掛けられた呪いを解くためにワザとキレさせたんだなァ。やっと分かったぜ」

「宇宙じゃ頭は冷えなかったのかよ」


 痛みで冴えた頭で博士の行動の意図を推察しながら、禍言は首を鳴らし、目を瞑って拳を握りしめる。


「じゃあよォ、この収まりどころのねェイライラはどこにぶつけりゃいいんだろうなァ?」

「そりゃお前の勝手にすりゃいいが、俺らにぶつけんなよな……って、なんだそりゃ」


 エンジンフラッシュも禍言同様に適当に返すが、途中で何かに気付き、驚嘆の声を上げた。

 禍言の腕から溢れる血が既に止まっていた。否、止まったのではない。傷口がなくなっていたのだ。つまり--


 --以前、魔法使いまがいの骸骨に消し飛ばされた腕が再生していたのだ。


「ハァー、オレァ、んなこたァしたくなかったんだけどなァ」

「こんなこと?」

「あァ、……時間稼ぎなんて、オレらしくねェよなァ」

「ッ!?」


 ここまで散々暴れまわった禍言だが、実のところ本気、というより自身の力を100%出してはいなかった。

 もちろん肉体への負荷など気にしてはいなかったが、それでも無意識に力をセーブしていたのだ。

 だが、肉体の負荷を気にせず、それでいてある程度の理性を取り戻した禍言は、再生した左腕、そこに100%の力を込めていた。

 それに気付いたエンジンフラッシュは空に飛び上がり、禍言との距離をさらに開く。

 しかし、禍言も追うように飛び上がり、一瞬にしてその距離を詰めると、拳を構えた。


「終わりだ魔術師ッッ!!!」


 エンジンフラッシュはとっさに防御と妨害の魔法を幾重にも張り巡らせ、禍言の拳から身を守ろうとする。

 だが、禍言はそれを撃ち破り、全てを無に帰す最大の奥義の名を叫んだ。



(かん)ッ!!()ッッ!!!」



 その拳は霧を裂き、朝陽で壊滅したロンドンを照らした。

禍言くんはここしばらく攻撃するときに技名を言うことがなかったのですが、それには2つの理由があります。

1つは、突風だとか爆風だとかの初期に使っていた技が今の禍言くん的にはチャチすぎて技と呼びたくないから。

もう1つは、いちいち技名を言ってられるほど敵が弱くないから。

です。でも今回の神無、これカンナって読むんですけど、これはぼくが個人的に言ってほしかったので言ってもらいました。別にエンフラが弱いってわけじゃないですよ。この人果街はてなの次くらいには強いですから。

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