焼き肉、最高!
ぼく焼肉屋でバイトしてるんすよ
「よし、できた」
「何が?」
「ほら、くれてやる」
「うぉっ」
博士はある物を禍言に投げ渡し、ポケットから取り出したアメを舐める。
「これ……」
「義腕だ、そのままだと不便だろう」
「あら、あり」
博士が渡した物は、欠損した左腕を補う、機械じかけの赤い義腕だった。
「これどうやって付けんの?」
「刺せ」
「え?」
「中に太い針があるだろう?腕の傷口に刺せ」
禍言が義腕を覗くと、中の針がギラリと光る。
「……マジ?」
「マジ」
「なんで?」
「神経と接続するためだ、死ぬよりは痛くないだろう」
「そりゃそうだけどさ……ええいままよ!フンッ!!」
覚悟を決め、義腕を腕に突き刺す。むき出しの骨を砕くと、太い針の中から細い針が無数に飛び出し、腕の肉を内側から貫く。
「っつ……やっぱてめぇサイコだろ」
「最高だな」
「チッ」
禍言の悪態をサラリと躱す博士。舌打ちをした禍言は腕の流血を気にも止めずに義腕の動作を確認する。
「どうだ、マトモに動くか?」
「ちょい遅い」
「ふむ」
禍言の要望を聞き、博士は義腕にUSBコードを突き立てる。
「なぁ博士、オレらこんなのんびりでいいのかよ」
「良くはないが、お前全人類敵に回してるのに片腕ないんじゃ締まらないだろう」
「確かに」
「……インストール、終わったな。これでいいだろう」
「おっ、いいじゃん」
「観念しろォーッ!お前たちは完全に包囲されているッ!!抵抗は無駄だ、大人しく投降しろォーッ!!」
「なんか外騒がしいなぁ」
「十中八九、ワタシたちのせいだと思うが」
この2人、現在立てこもり中。本人たちは立てこもっているつもりなんて微塵もないが。
「そろそろ行くか?」
「まだのんびりしてようぜ?あ、店員さーん、タン塩5人前追加でー」
「か、かしこまりました」
「なぁ禍言、お前金あるのか?」
「外のケーサツから貰えば」
「それをないと言うんだ」
「チッ、しゃあねぇなぁ」
禍言は席を立ち、窓から顔を出す。そして、息を大きく吸い込み。
「ここの支払いしてくれりゃ出てきてやらー!!!」
「……分かった、払おう」
「そこの店員さん、ジンジャーエール1つと豚トロ3人前追加で」
警察の返事を聞いた瞬間、それまで一切食べてこなかった博士も注文を入れる。
「よっしゃこれで食い放題だな」
「んぐ……だな。それはそうと、なんでワタシたち立てこもり犯だと思われてるんだろうな」
「さぁ?お、来た来た、支払いよろしくケーサツさん」
「なぁ、お前たちなんでそんな平然と焼き肉を楽しんでいるんだよ」
リスのように頬をパンパンにさせた禍言を見て、入店した髭面の刑事は呆れながらツッコミを入れる。
「まぁとにかく早く済ませてくれ、言っちゃあ悪いが、この店の迷惑になっているんだ」
「おいおい、ワタシたちを刺激するような事言っていいのか?暴れるぞ?」
「すまんすまん、でもお前たちその気はないんだろう?見れば分かるさ。あ、大ライスとハラミ4人前お願いします」
店員の引きつった笑顔に申し訳なさを感じながら、髭面刑事も注文を入れるのだった。
「ふぅ、もう食えねぇ。……このままスヤリとしてぇなぁ」
「やめろ、お前たちはこれから署まで来てもらうんだからな」
「へいへい」
1時間後、満腹になった禍言と腹八分目で抑えた博士が、髭面刑事に連れられて店から出てきた。
禍言が撒き散らした血は警察の方々がお掃除しましたとさ。
それはそうとさ!人間の肉焼いて食うと思った!?思ったでしょ!いままでそんな話ばっかだったからね!




