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戦えない俺、ダンジョンで“休憩所”を作っただけなのに最強探索者たちが通い詰めて世界の拠点になってしまった  作者: ローナ


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逃げても無駄だった――“安全地帯”が外まで侵食し、選ばれるか排除されるかの世界になった

——ザザッ。


「……っ!?」


外へ逃げた探索者の一人が、突然その場で膝をついた。


「おい、どうした!?」


仲間が叫ぶ。


だが。


「……来るな……!」


男は、顔を歪めていた。


「……なんだよ、これ……!」


地面に手をつく。


その瞬間。


——ドクン


空間が、脈打った。


「……え?」


境界の内側。


ミアが、息を呑む。


「……今の……」


「……繋がったな」


俺は、小さく呟いた。


「……は?」


タンクが振り返る。


「……何がだ?」


「……外だ」


俺は、境界の外を見た。


「……あいつ、触れた」


「……何に?」


「……“俺の空間”に」


沈黙。


「……いやいや」


タンクが苦笑する。


「外だぞ?」


「……関係ない」


俺は、淡々と答えた。


「……もう、広がってる」


その瞬間。


外の男が、叫んだ。


「……来るなああああ!!」


——ズルッ


体が、引きずられる。


「……おい!?」


仲間が手を伸ばす。


だが。


——パチン


弾かれる。


「……は?」


「……なんで……!」


誰も触れない。


「……引かれてる……」


ミアが、震える声で言う。


「……こっちに……!」


その通りだった。


男の体が、じわじわと境界へ向かっていく。


「……ふざけんな……!」


必死に抵抗する。


地面に爪を立てる。


だが。


——ズル、ズル


止まらない。


「……やめろ……!」


叫び。


そして——


——ドンッ


境界にぶつかる。


「……っ!」


その瞬間。


空間が、強く反応した。


「……選別」


俺は、静かに呟く。


「……始まったな」


「……は?」


タンクが固まる。


「……どういうことだ」


「……分からない」


正直に言う。


「でも——」


分かることもある。


「……あいつ、“呼ばれた”」


沈黙。


「……呼ばれた?」


「……そうだ」


俺は、境界を見る。


「……合うやつは、引き寄せる」


「……合わないやつは?」


セリスが、低く言う。


「……排除」


その瞬間。


外で別の悲鳴。


「……っ!」


もう一人の男が、倒れた。


「……なんだよ……これ……!」


体が、痙攣する。


「……空気が……!」


呼吸が乱れる。


「……回復できない……!」


「……外、地獄だな」


タンクが呟く。


「……ああ」


俺は、頷いた。


改めて分かる。


「……ここ以外、終わってる」


その時。


——ドンッ


境界にぶつかった男が、顔を上げる。


「……入れろ……!」


必死の目。


「……頼む……!」


「……」


俺は、黙って見ていた。


「……助けてくれ……!」


震える声。


「……死にたくねぇ……!」


その言葉に。


ミアが、一歩前に出る。


「……カナメ……」


「……ダメだ」


俺は、即答した。


「……え?」


「……そいつ」


男を見る。


「……合ってない」


「……そんな……!」


「……入れたら、崩れる」


沈黙。


「……じゃあ……」


ミアの声が、震える。


「……見捨てるんですか……?」


「……ああ」


俺は、迷わなかった。


その瞬間。


男の顔が、崩れた。


「……ふざけんな……」


涙と、怒り。


「……こんな……場所……!」


「……俺は……!」


手を伸ばす。


「……こんなとこに……!」


その瞬間。


——パチン


境界が、完全に閉じた。


「……あ」


男の手が、弾かれる。


「……入れない……」


「……頼む……」


声が、小さくなる。


「……一瞬でいい……」


「……」


俺は、動かない。


「……なぁ……」


最後の声。


「……助けてくれよ……」


——静寂。


数秒後。


男は、動かなくなった。


「……」


誰も、何も言えない。


「……これが」


タンクが、低く言う。


「……選別か」


「……ああ」


俺は、静かに頷く。


その時だった。


「……っ!」


もう一人の男が、突然叫んだ。


「……違う……!」


自分の手を見る。


「……俺は……」


ゆっくりと、立ち上がる。


「……来いって言われてる……」


その目。


焦点が合っていない。


「……おい」


仲間が後ずさる。


「……近づくな……!」


だが。


男は、止まらない。


フラフラと、境界へ向かう。


「……来いって……」


ぶつぶつと呟く。


「……ここに……」


そのまま。


——ドンッ


境界へ。


「……っ!」


一瞬、弾かれる。


だが——


「……っ!?」


紋様が、光った。


「……おい」


タンクが、息を呑む。


「……開いたぞ……!」


「……ああ」


俺は、静かに言った。


「……合ってる」


その瞬間。


男が、境界を越えた。


——ドクンッ


空間が、大きく脈打つ。


「……はぁ……」


男が、その場に崩れる。


「……やっと……」


涙を流しながら。


「……戻れた……」


「……戻れた?」


ミアが、呟く。


「……違う」


俺は、静かに言った。


「……来たんだ」


その男は。


もう外に戻れない。


「……これ」


セリスが、笑う。


「……やばいね」


「……ああ」


俺は、頷いた。


「……完全に始まった」


何が?


「……選別の拡張だ」


外にいても。


関係ない。


「……ここに合うやつは」


ゆっくりと言う。


「……勝手に来る」


「……じゃあ」


タンクが、低く言う。


「……合わねぇやつは?」


「……死ぬ」


沈黙。


「……終わってんな」


誰かが呟く。


その通りだ。


だが——


「……これが、現実だ」


俺は、静かに言った。


その時。


黒コートの男が、笑った。


「……面白いな」


「……なにがだ」


タンクが睨む。


「……もう、外と内の境界が曖昧だ」


男は、ゆっくりと言う。


「……世界そのものが、選別され始めてる」


沈黙。


「……つまり」


セリスが、目を細める。


「……ここが基準になる?」


「……そういうことだ」


男は、頷く。


「……ここに適応できないやつは、消える」


その言葉に。


全員が、黙った。


「……カナメ」


ミアが、小さく言う。


「……これ……」


震える声。


「……止められますか……?」


「……無理だな」


俺は、あっさり言った。


「……え?」


「……もう、始まってる」


空間は、広がっている。


勝手に。


「……じゃあ……」


「……使うしかない」


俺は、静かに言った。


その瞬間。


全員が、こちらを見る。


「……どう使う?」


セリスが、笑う。


「……簡単だ」


俺は、境界の外を見る。


まだ、何人か残っている。


震えているやつ。


逃げようとしてるやつ。


「……選ぶ」


その一言で。


空気が凍る。


「……助けるんじゃねぇのか?」


タンクが、低く言う。


「……違う」


俺は、首を振る。


「……必要なやつだけ、入れる」


「……それ以外は?」


「……いらない」


沈黙。


「……完全に、神様気取りだな」


誰かが、苦笑する。


「……違う」


俺は、静かに言った。


「……ただの、管理だ」


でも。


もう、誰もそうは思っていない。


その時。


——ドクンッ!!


空間が、今までで一番強く脈打った。


「……なに!?」


ミアが叫ぶ。


紋様が、一気に広がる。


「……これ……!」


「……範囲、増えてる……!」


タンクが、驚く。


「……どこまでだよ……!」


俺は、ゆっくりと目を閉じて——


「……分かる」


「……え?」


「……上だ」


全員が、天井を見る。


「……ダンジョン、上層まで……」


沈黙。


「……は?」


セリスが、笑う。


「……もうダンジョン全部じゃん」


「……ああ」


俺は、静かに頷いた。


「……ここは」


ゆっくりと言う。


「……拠点じゃない」


全員を見る。


「……“世界”になる」


その瞬間。


誰も、笑わなかった。


——冗談じゃないと、分かったからだ。

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