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戦えない俺、ダンジョンで“休憩所”を作っただけなのに最強探索者たちが通い詰めて世界の拠点になってしまった  作者: ローナ


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戦わないのに従わせる――俺の“安全地帯”、最強たちを縛る“契約”になっていた

「……増やす、って言ったよな」


タンクの男が、低く唸る。


「戦えるやつを入れるって」


「ああ」


俺は頷いた。


「……でもよ」


彼は、周囲を見回す。


「誰でもいいわけじゃねぇんだろ?」


「当然だ」


即答する。


もう分かっている。


この空間は——


「……“合うやつ”しか残せない」


そして。


「……“使えるやつ”じゃないと意味がない」


沈黙。


その言葉に、全員の表情が変わった。


「……使う、って」


ミアが、不安げに言う。


「人を……ですか……?」


「……ああ」


俺は、迷わなかった。


さっき、人を切った。


それで分かった。


「……ここは」


ゆっくりと言う。


「守るだけじゃ、維持できない」


全員が黙る。


「外は地獄だ」


俺は、境界の向こうを見る。


「でも中は、安全すぎる」


「……それが問題か」


タンクが呟く。


「ああ」


俺は頷く。


「戦えないやつが増えすぎると——終わる」


空気が、重く沈む。


「……じゃあ」


セリスが、静かに言う。


「どうするの?」


「簡単だ」


俺は、一歩前に出る。


「……条件をつける」


「……条件?」


全員が、こちらを見る。


「ここに入りたいなら」


ゆっくりと、言葉を置く。


「……ここを守れ」


沈黙。


「……は?」


誰かが、声を漏らす。


「守る……って」


「そのままの意味だ」


俺は続ける。


「この場所を狙うやつは、絶対に来る」


全員、さっきの男を思い出している。


「だから」


「ここにいるやつは」


「……戦え」


その言葉に。


空気が、一気に変わった。


「……ふざけんなよ」


一人の男が吐き捨てる。


「なんで俺らがそんなこと——」


「嫌なら、出ていい」


俺は即答した。


静寂。


「……ここは、俺の場所だ」


ゆっくりと、言う。


「ルールは、俺が決める」


「……っ」


誰も、反論できない。


なぜなら。


——出たら死ぬから。


「……なるほどね」


セリスが、小さく笑った。


「“依存”させて、働かせるわけか」


「……そうなるな」


「悪くない」


彼女は、楽しそうに言う。


「むしろ、遅いくらい」


背筋が、少し寒くなる。


「……でも」


ミアが、小さく手を上げる。


「それだけだと……」


「命令、聞かない人も出ませんか……?」


「……出るだろうな」


俺は頷く。


「だから」


少しだけ、間を置く。


「……縛る」


「……え?」


その瞬間。


空間が、わずかに揺れた。


「……これ」


ミアが、息を呑む。


「スキル……?」


「……多分」


俺は、手を前に出す。


すると——


淡い光が、浮かび上がった。


円の中に、さらに小さな紋様が現れる。


「……なんだこれ」


タンクが、警戒する。


「分からない」


正直に言う。


「でも」


“理解”はできる。


「……これ、契約だ」


その言葉に。


全員が凍りついた。


「……契約?」


「ここにいる限り」


俺は、ゆっくり言う。


「……この空間を守る義務が発生する」


「……は?」


「破ったら?」


誰かが聞く。


「……弾かれる」


俺は、淡々と答えた。


沈黙。


「……つまり」


セリスが、目を細める。


「ここにいる=従う、ってこと?」


「……そうなる」


その瞬間。


空気が、完全に変わった。


「……おい」


タンクが、低く言う。


「それってよ」


「……逃げられねぇってことか?」


「……ああ」


俺は、頷く。


「ここに依存した時点で」


「……縛られる」


「……」


誰も、何も言えない。


「……怖すぎだろ」


誰かが、震える声で呟いた。


その通りだ。


俺でもそう思う。


「……でも」


ミアが、小さく言う。


「それ、ないと……」


周囲を見る。


「……崩れますよね」


「……ああ」


だから。


「……必要だ」


俺は、言い切った。


その時だった。


——コン


また、外から音。


全員が振り向く。


「……来たか」


タンクが、舌打ちする。


通路の奥から、三人。


重装備の探索者たち。


明らかに、強い。


「……おいおい」


一人が笑う。


「なんだよここ」


「楽園じゃねぇか」


「……」


俺は、前に出る。


「……入りたいか?」


「ああ」


男が即答する。


「その代わり」


俺は、静かに言う。


「……条件がある」


「……ほう?」


「ここにいる間」


「……ここを守れ」


男は、一瞬だけ考えて——


「……いいぜ」


あっさりと答えた。


「どうせ外じゃ死ぬ」


「……そうか」


「それと」


俺は続ける。


「……契約がある」


「……契約?」


「破ったら、即出禁」


「……はは」


男は笑う。


「面白ぇな」


「いいぜ、それで」


その瞬間。


空間が、反応した。


——光が、走る。


男の足元に、紋様が浮かぶ。


「……おい」


男が眉をひそめる。


「なんだこれ」


「……成立した」


俺は言った。


「……今から」


「お前は、この空間の一部だ」


沈黙。


「……は?」


男が、動こうとする。


その瞬間。


——ピタリ


動きが、止まった。


「……なに……これ……」


「……拒否、できない」


ミアが、震える声で言う。


「……完全拘束……」


「……はは」


男が、乾いた笑いを漏らす。


「マジかよ……」


ゆっくりと、こちらを見る。


その目にあるのは——


恐怖と、興奮。


「……最高じゃねぇか」


その言葉に。


全員が息を呑んだ。


「……逃げられない代わりに」


男は、周囲を見る。


「……絶対に死なねぇ場所か」


ニヤリと笑う。


「そりゃ、縛られても来るわ」


その瞬間。


理解した。


「……これ」


ミアが、呟く。


「……依存、加速します」


「……ああ」


俺は、静かに頷く。


安全だけじゃない。


「……逃げられない」


それが、加わった。


「……終わったな」


タンクが、苦笑する。


「もう普通の拠点じゃねぇ」


「……そうだな」


俺は、境界の外を見る。


闇の奥。


あの男が、また来るだろう。


「……来るなら来い」


小さく呟く。


「……今度は」


拳を握る。


いや。


握らない。


「……戦わない」


その代わりに。


「……縛る」


その瞬間。


セリスが、笑った。


「いいね」


「完全に、支配者だ」


「……違う」


俺は、首を振る。


「……ただの管理だ」


でも。


その言葉を。


誰も、信じていなかった。


——この場所を握る者。


それが、何を意味するのか。


全員、もう分かっている。


その時だった。


——ドクン


空間が、大きく脈打った。


「……?」


ミアが、目を見開く。


「……これ……」


床の紋様が、変化していく。


「……拡張、してる……?」


「……は?」


タンクが驚く。


「……人数増えたからか……?」


「違う……」


ミアが、震える声で言う。


「……“契約”がトリガーです……」


全員が、固まる。


「……つまり」


セリスが、静かに言う。


「縛れば縛るほど」


「……強くなる?」


「……ああ」


俺は、ゆっくり頷く。


「……そうみたいだ」


沈黙。


そして——


誰かが、笑った。


「……バケモンだろ、これ」


その通りだ。


でも。


「……使うしかない」


俺は、静かに言った。


その時。


ミアが、小さく呟く。


「……でも」


「……これ」


全員を見る。


「……外の人、どうなりますか……?」


その言葉に。


空気が、止まる。


外には、まだいる。


入れなかったやつら。


「……」


俺は、境界の向こうを見る。


暗闇。


その中に——


いくつもの視線。


「……来るな」


誰かが呟く。


「……奪いに」


その通りだ。


「……じゃあ」


セリスが、ゆっくりと言う。


「……どうする?」


俺は、少しだけ考えて——


「……増やす」


また、同じ答え。


「……え?」


「戦力を」


俺は、静かに言う。


「……囲い込む」


その瞬間。


全員が、理解した。


「……ここ」


タンクが、低く言う。


「……軍になるな」


「……ああ」


俺は、頷く。


「……拠点じゃない」


ゆっくりと。


言葉を置く。


「……勢力だ」


その時。


遠くから——


爆音が響いた。


「……始まったか」


セリスが、笑う。


「……奪い合い」


俺は、境界の外を見つめる。


闇の奥。


何かが、動いている。


「……来いよ」


小さく呟く。


「……全部、取り込む」


その言葉に。


空間が、わずかに震えた。


まるで——


応えるように。

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