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戦えない俺、ダンジョンで“休憩所”を作っただけなのに最強探索者たちが通い詰めて世界の拠点になってしまった  作者: ローナ


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ここは安全地帯じゃない——“出たいのに出られない”と気づいた瞬間、全員の顔が崩れた

——違和感は、小さかった。


最初は、誰も気づかない程度の。


「……あれ?」


ぽつりと。


新しく入ってきた男が、呟いた。


「……出口って、どこだ?」


静寂。


誰も答えない。


いや——


答えられなかった。


「……出口?」


ミアが、首をかしげる。


「……来たとこから戻れば……」


「……戻れねぇんだよ」


男が、苦笑する。


「……さっきから探してるけど……」


振り返る。


「……“壁”なんだよ」


沈黙。


「……は?」


誰かが、声を漏らす。


「……いやいや……そんなわけ……」


セリスが、ゆっくりと歩く。


そして——


壁に手を当てる。


——コツン


「……硬いな」


もう一度、叩く。


——コン、コン


「……通れない」


静寂。


「……おい」


タンクがいない今、その役目のように別の男が言う。


「……入口はどうした」


「……消えた」


セリスは、あっさり答えた。


沈黙。


「……は?」


「……だから」


セリスは振り向く。


「……“閉じた”んだよ、この場所」


空気が、一気に冷える。


「……カナメ」


ミアが、ゆっくり俺を見る。


「……これ……どういうこと……?」


少しだけ。


間を置く。


「……仕様だ」


答えた。


「……は?」


「……安全を保証するには」


一言。


「……外との接続を切る必要がある」


沈黙。


「……つまり……」


誰かが、震える声で言う。


「……出られない……?」


「……ああ」


肯定。


完全に。


その瞬間。


「——ふざけんな!!」


絶叫。


さっきの男が、壁を叩く。


——ドンッ!!


「……開けろ!!」


「……帰らせろ!!」


何度も叩く。


だが——


びくともしない。


「……嫌だ……」


ミアが、後ずさる。


「……ここ……」


一言。


「……閉じ込められてる……」


静寂。


その言葉が、全員の中で形になる。


「……違う」


俺は、言った。


「……守られてる」


「……同じだろ!!」


男が叫ぶ。


「……自由がない時点で!!」


沈黙。


「……カナメ」


セリスが、面白そうに笑う。


「……いいね、これ」


「……最高だ」


「……何がだよ……」


誰かが、吐き捨てる。


「……ここにいれば死なない」


セリスは言う。


「……それ以上、何がいる?」


沈黙。


「……自由だよ!!」


別の男が叫ぶ。


「……外に出たい!!」


「……出てどうする」


俺は、静かに問う。


「……死ぬぞ」


「……それでもだ!!」


即答だった。


「……選びたいんだよ!!」


静寂。


その言葉が。


やけに、重かった。


「……なるほど」


俺は、小さく呟く。


「……じゃあ選べ」


沈黙。


「……は?」


「……出たいなら」


一言。


「……“拒否する”」


空気が、止まる。


「……それで出られる」


「……本当か!?」


男が、目を見開く。


「ああ」


俺は、頷く。


「……ただし」


一拍。


「……二度と入れない」


静寂。


「……え……」


「……この場所から“外れる”ってのは」


淡々と続ける。


「……そういうことだ」


沈黙。


「……っ……」


男の顔が、歪む。


「……どうする?」


俺は、見下ろす。


「……選べ」


長い沈黙。


誰も、動かない。


誰も、言葉を出さない。


その時。


「……俺は出る」


一人の男が、前に出た。


震えている。


だが、目は決まっている。


「……ここは……無理だ」


「……そうか」


俺は、頷く。


「……拒否するか?」


「……ああ」


深呼吸。


「……する」


沈黙。


全員が、見ている。


その決断を。


「——個体、自己拒否を確認」


“それ”が、告げる。


「——接続解除」


光が、男を包む。


「……っ……」


最後に、こちらを見る。


「……ありがとう……な」


——パチン


消えた。


静寂。


数秒後。


——ザザッ


声が、流れる。


「……ぎゃあああああ!!」


外の世界。


絶叫。


「……痛い!!」


「……なんだこれ!!」


「……回復しねぇ!!」


沈黙。


「……戻れない……」


誰かが、呟く。


「……戻れないんだ……」


その現実が、全員に刺さる。


「……カナメ……」


ミアが、震える。


「……これ……」


言葉にならない。


「……ああ」


俺は、静かに言う。


「……ここはもう」


一言。


「……“選ばれた者だけの世界”だ」


沈黙。


「……そして」


ゆっくりと、視線を巡らせる。


「……次は」


一言。


「……“誰を拒否するか”だ」


空気が、凍る。


——逃げ場はない。


ここはもう、楽園じゃない。


選別の箱だ。

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