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戦えない俺、ダンジョンで“休憩所”を作っただけなのに最強探索者たちが通い詰めて世界の拠点になってしまった  作者: ローナ


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20/34

“不要”は消える——世界中で同時に人が消え始めた日、俺は初めて“切り捨て”を選んだ

——静かすぎた。


さっきまで、あれだけ騒がしかったのに。


今は。


「……声が、減ってる……?」


ミアが、呟く。


その声は、かすれていた。


「……ああ」


俺は、短く答える。


「……減ってる」


理由は、分かっている。


「——選別、開始」


“それ”が、無機質に告げる。


空気が、凍りつく。


「……始めやがった……」


タンクが、顔を歪める。


「……マジでやる気かよ……」


「……もうやってる」


俺は、壁の向こうを見る。


半透明の“外側”。


そこに映るのは——


「……人……減ってる……?」


誰かが、震える声で言う。


その通りだった。


さっきまで見えていた“影”が。


いくつも、消えている。


「……なぁ……」


別の男が、言う。


「……あれ……消えた奴……」


沈黙。


誰も、続きを言えない。


だが。


分かっている。


「——不適合個体、削除完了」


その一言が、すべてだった。


「……ふざけんなよ……」


タンクが、拳を握る。


「……人を……データみてぇに……」


「……違う」


俺は、静かに言う。


「……元からそうだっただけだ」


沈黙。


「……カナメ……」


ミアが、俺を見る。


「……本当に……これでいいの……?」


少しだけ。


考える。


そして——


「……いい」


即答だった。


「……え……」


「……ここに来た奴は、生きる」


一言。


「……それ以外は、知らない」


静寂。


「……最低だな、お前」


タンクが、吐き捨てる。


「……ああ」


否定しない。


「……でも」


視線を合わせる。


「……お前はここにいる」


沈黙。


「……っ……」


言い返せない。


その事実が、すべてだった。


その時。


——ガンッ!!


音。


強く、壁を叩く音。


「……っ!?」


全員が振り向く。


そこにいたのは——


「……助けて……!!」


外の人間。


はっきりと見える。


もう、影じゃない。


「……中に入れてくれ!!」


必死の叫び。


「……頼む!!」


手を伸ばす。


だが——


触れられない。


「……カナメ……」


ミアが、震える。


「……助けてあげて……」


沈黙。


全員の視線が、俺に集まる。


「……入れるのか?」


タンクが、低く問う。


「……ああ」


俺は、答える。


「……できる」


空間が、わずかに開く。


「……じゃあ……」


タンクが、一歩前に出る。


「……入れてやれよ」


静寂。


「……無理だ」


俺は、言った。


「……は?」


「……“枠”がある」


一言。


「……ここに入れる人数は、決まってる」


空気が、張り詰める。


「……だから」


俺は、淡々と続ける。


「……誰かを出さないと、入れない」


沈黙。


「……ふざけんな」


タンクが、睨む。


「……じゃあ誰を出すんだよ」


「……決めていいぞ」


俺は、あっさり言った。


「……は?」


「……この中から一人」


一言。


「……外に出せばいい」


静寂。


「……そんなの……」


誰かが、呟く。


「……決められるわけ……」


「……決めろ」


俺は、遮った。


「……ここはそういう場所だ」


沈黙。


「……っ……」


ミアが、唇を噛む。


「……そんなの……」


「……カナメ」


セリスが、笑う。


「……いいね、それ」


「……楽しそうだ」


「……お前……」


タンクが、睨む。


「……狂ってやがる……」


「……最初からだろ?」


セリスは肩をすくめる。


沈黙。


外では。


「……頼む……」


男が、泣いている。


「……死にたくない……」


その声が。


やけに、鮮明に響く。


「……早く決めろ」


俺は、言った。


「……時間がない」


——ザザッ


また、誰かの声が消える。


「……っ……」


ミアが、震える。


「……カナメ……」


「……決めろ」


繰り返す。


沈黙。


長い、長い沈黙。


そして——


「……俺だ」


タンクが、言った。


全員が、息を呑む。


「……俺が出る」


「……バカか」


即座に否定。


「……お前は適合してる」


「……関係ねぇよ」


タンクは、笑う。


「……あいつ、まだ何もしてねぇだろ」


外の男を見る。


「……俺は、ここで十分だ」


沈黙。


「……タンク……」


ミアが、涙ぐむ。


「……いいって」


軽く手を振る。


「……こういうの、嫌いじゃねぇ」


「……嘘つけ」


「……バレたか」


笑う。


そして——


「……カナメ」


真っ直ぐ見る。


「……やれ」


静寂。


ほんの一瞬。


迷う。


だが——


「……分かった」


俺は、手をかざす。


——ドクンッ!!


空間が、反応する。


「——排出、実行」


光が、タンクを包む。


「……じゃあな」


最後に。


笑った。


——パチン


消えた。


そして。


外の男が——


「……っ!?」


中に、落ちてくる。


「……助かった……」


崩れ落ちる。


泣きながら。


「……ここが……」


見上げる。


「……楽園……?」


静寂。


誰も、答えない。


ただ一人。


「……ようこそ」


俺だけが、言った。


冷たく。


静かに。


「……ここは“選ばれた場所”だ」


沈黙。


ミアが、震える。


「……カナメ……」


その声は。


もう、前とは違った。


少しだけ。


恐れが混じっている。


「……次は」


俺は、ゆっくりと言う。


「……誰を残すかだ」


空間が、さらに広がる。


——もう、戻れない。

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