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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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「京都に着いたらまず例のものを探して頂いて、その後大学の研究室に設置していただく予定です。今日中に見つけられない事も考えて、京都のホテルは今日と明日と2日押さえてあります。その後もし裕君が観光をお望みならその予定を組み込みますので、今のうちに行きたい所があれば仰ってください。最大で1週間までの要望なら受け付ける予定ですので、遠慮なく仰ってください」


裕は赤塚さんの事務的な仰々しい敬語にどうもムズムズしていた。

案内の為に助手として同行させますと課長は言っていたが、まるで仕事に厳しい秘書の様だった。


きっと距離を置かれているのだろうと思うと、ただでさえ観光気分だった裕にとって、隣に座っているのも申し訳なく思えてくるから勘弁して欲しいと思っていた。


「えっとぉ、俺と距離を置きたいのは分かりますが、その敬語は止めて貰えませんか、俺そう言うのちょっと苦手だし、課長を思い出して話が全然頭に入って来ないんだよね」


裕は女神に向かってつい本音を冷たく言ってしまっていた。


「ぁ、違うんです。私、あの、重要案件と聞かされていて、その、一人だし、誰にも頼れないし、失敗しちゃいけないって緊張してて・・・」


顔を赤くしてしどろもどろになる赤塚さんを見て、裕は何だか可愛いと思ってしまった。


(天使かよ)


急に見せた赤塚さんのギャップが、裕の中で抱いていた女神と言う印象から天使へと変化した瞬間だった。


それはけして降格した訳では無く、遥か高み住む世界の違う女神が天使となって地上に降り立ったという意味で、裕にとっては現実の理想に少しだけ近づけた様な気がしたのだ。


とは言っても、まったく手の届く範囲で無い事は自分でもちゃんと理解できているつもりだ。


それにけして嫌われているとか、距離を置かれていた訳じゃ無かった事にもどこか安心していた。


これから1週間一緒に居られる天使に、仕事とはいえ距離を置かれていたら辛すぎる。

裕の中で1週間の出張という名の日程が、今ここで決まったのだった。


「失敗する様な事は何も無いと思うけど、俺もできるだけ協力するし大丈夫だろう。それより京都も少し観光したいけど、やっぱり絶対に大阪には行ってみたい。後時間があれば神戸とかもお洒落で美味しい店がありそうだよね」


裕は赤塚さんの緊張を少しでも解そうと考えていたのだが、何故か自分の要望を中心に捲し立てる事しかできなかった。


結局のところ裕も緊張していた様だ。


「フフフ、ありがとう、ちょっと肩の荷が下りた感じ。じゃぁ改めて1週間よろしくお願いします」


「こちらこそお願いします」


軽く頭を下げる赤塚さんにつられ裕も同じ様にお辞儀をしていたが、お互いに緊張はだいぶほぐれた様だった。


そして1週間の関西観光の日程を、赤塚さんにも受け入れて貰えたのが裕には何より嬉しかった。


「関西は初めてなの?」


「俺こういう旅行自体慣れてないんだ。修学旅行も行って無いし、友達いないから」


裕は同情をかうつもりもなく、比較的軽い感じで咄嗟に口から出た自分の言葉に自分でも驚いていた。


(聞かれた以上に喋るなんて、これが本当にハニトラだったらチョロ過ぎるだろう俺・・・)


「それじゃぁ関西を思いっきり楽しみましょう。私自慢じゃないけど旅行の予定をたてたりガイドをするの上手いのよ」


裕の反省を他所に赤塚さんは裕に同情する事も無く、眩しい程の笑顔を見せてくれた。


(ま、眩しすぎる。※あくまでも裕の中での感想で事実とは異なる点がありますって、注意書きがありそうだな)


裕は赤塚さんに軽く笑いかけられただけで返事をする事もできず、一人内心でツッコミを入れていたが、裕も現実の天使に少しずつではあるが慣れつつある様だった。


しかし裕がどう頑張っても当然会話が弾む訳も無く、時折赤塚さんの質問に答えたりしているうちに京都へ着いた。


とても長い時間だった様でもあり、あっという間でもあった不思議な時間だった。



京都は紅葉の時期が終わっていたが、それでも観光客の多さに驚いていた。


こんなに人がいては空間も探しづらいと考えて、裕は空間探知マップを広げ探しやすい場所にある空間を探して歩いた。


それが意図せずに名所めぐりの様になり、裕は空間を探している事を忘れる時もあった。



空間出入り口を新しく作るのは空間内でしかできなかった。

しかしそれが空間の外でもできる様になれば、出入り口を必死になって探す事も無く、管理者や空間の認定をせずとも出入り口を設置するのも可能になるのじゃないかと思っていた。


何しろ九尾のダンジョンは認定する前に出入口を作れたのだから、当然だろうと考えてはいるが、その為にどんな能力を願ったら良いのか思いつかなかった。

あの時の様にこの空間の出入り口をココにと念じるだけで設置できる様になればどんなに楽か・・・



1日目は観光名所の様な所を巡り歩き、2日目も京都のあちこちを巡り漸く空間を見つけ、3日目に大学の研究所に空間出入口を設置してその足で大阪に向かう事にした。


課長に前もって要望してあった通り面倒くさそうな偉い人との対応はまったく無く、赤塚さんの指示通りに動いていれば良かったのでとても楽だった。


赤塚さんも重要案件を終わらせてホッとしている様だったので、これで明日からもっと楽しめるだろうと裕は思っていた。


そして大阪に着き少し早い時間だったがホテルにチェックインして、明日に備えゆっくりと身体を休める事にした。


しかし裕はホテルの周りを一人で散策して歩き、大阪の空気をそこそこ堪能し気分上々で夕飯を一緒に食べている時になって、裕はショックを受ける事になった。


「明日から私の最重要ミッションが始まります。裕君が楽しめる様に頑張って接待しますね」


ステーキにナイフを入れながらニコッと微笑む赤塚さんの言葉は、裕に鋭くグサッと突き刺さった。


(接待って・・・、分かっていたけどさぁ、そんなハッキリ言わないでよぉ)


京都の街中を一緒に歩く間、時々デートの様だと妄想を楽しんでいた裕には、接待と言う言葉は本当にショックだった。


それでも今までが楽しい時間だったのは事実なので、今の裕は天使に接待される様になったのだと前向きに捉える事にして、ずっと行きたかった食い倒れにU〇Jだと明日からの予定を楽しみにした。



読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 気持ち悪い無能な中学生男子のような内面を描くのが上手い うますぎて過去の自分のようで張り倒したくなる
[良い点] はにとら [気になる点] 赤塚さんは殺り手? [一言] 裕君が初々しい
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