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誤字報告ありがとうございます。
いつも本当に助かっています。
裕は聖女様のダンジョンへと入ると空間探知能力のマップを開き、黒猫から教わった空間を指さして「この空間へ転移したいんだ」と言った。
≪了承しました≫
聖女様の返事が聞こえると同時に転移の時に起きるあの浮遊感が起こったので、裕は管理者のイメージを眼鏡で髪をアップに結ったタイトなスーツのちょっとエロティックな秘書を一生懸命念頭に置く。
(美人秘書、美人秘書、美人秘書)
転移が完了してもなお裕は目を瞑ったまま心の中で念仏の様に唱えていた。
≪初めまして≫
管理者から声を掛けられ裕が恐る恐る目を開けると、裕の妄想より若干ではあるが年上の美人秘書が現れた。
しかしキャピキャピした感じが抜けている分色っぽさが増していた美人秘書さんに、裕は思わず赤面する。
胸元が大きく広げられたブラウスにも、膝より大分上に裾があるミニに近いタイトなスカートのスリットにも当然目が行く訳だが、裕はそれを直視してはいけないと考え目を逸らしドキドキするばかりだった。
そして裕は雑念を振り払おうと(確か涼太さんはダンジョン認定させて良いって言っていた)と考えながら一生懸命スライムが湧き出るダンジョンを思い浮かべる。
≪ダンジョン認定いたしました≫
美人秘書がそう言うのを確認してから裕は逃げる様に聖女様のダンジョンへと転移した。
(ダメだ、やり過ぎた。あれじゃぁ平常心を保てないだろうが)
裕はどうせ課長に提供する空間だと考え、欲望のままに管理者をイメージしてみたが、現実に現れた美人で艶めかしい秘書さんの色気にすっかりとあてられてしまった。
裕には女性に対しての免疫が無さ過ぎたのだ。
叔母や玲子さんも美しく色っぽい年上女性ではあるが、裕からすれば実際の所年齢的な問題から対象外だった。
それに裕が知る美人秘書さんは、あくまでもドラマの中アニメの中二次元の世界という空想の中のものだったのに、現実の者となって手が触れられる位置にまで迫られ裕は逃げ出す事しかできなかった。
いまだにドキドキする心臓を押さえながら聖女様のダンジョンから出て、雑念を振り払う様に早速課長に連絡を入れる。
「新しい空間を見つけました、出入り口の設置はどこにしたら良いですか」
裕は少しでも課長の話が短くて済む様に用件だけを伝える。
「えっもう探して頂けたのですね、それはとても嬉しい事です。無理をさせてはいませんよね?時間外労働はくれぐれも慎んでくださいね。それでなくても私は山伏さんに大変お世話になっているばかりで心苦しいのですから、お願いしますよ。あっそうそう、それでですね、今回も山伏さんには大変ご活躍いただきました件ですが、当方と致しましてのお礼に関しても是非話し合いたい所ですので、山伏さんの都合がつき次第こちらにいらしていただけますか?お待ちしております」
「それじゃぁ今すぐ伺います」
課長の相変わらずの長話が終わるのを待って裕はそう返事をすると電話を切り、聖女様ダンジョンから課長のダンジョンへと転移で移動し、そのまま国家未詳案件調査対策室へと出向いた。
電話を切って早々に、国家未詳案件調査対策室にある空間出入り口から現れた裕の姿を見て、課長は見るからに驚いた表情を見せていた。
空間内転移ができる事は課長も知っている筈なのにと考えながら、あまりに驚いたまま固まる課長の姿に可笑しさを感じ、裕は課長へと抱いていたストレスが少し発散する様だった。
その後裕は課長専用に買ったボイスレコーダーを作動させて、課長とお礼に関しての話し合いを始めた。
課長の案として国家公務員試験に合格した様に取り計らうので、国家未詳案件調査対策室に正規雇用されてはどうかと言われたが、裕はそれを丁重に断った。
そう言う不正の様な事は絶対にしたくなかった。
裕が本気で国家未詳案件調査対策室の正社員になるとしたら、その資格はきちんと段取りを踏んで自分で手に入れたいと考えていた。
それに裕には不労収入で悠々自適生活を送るために学びたい事もあったし、自分の進路は良く考えてから決めたかった。
「そうしますとやはり金銭的なお礼を考えるしかありませんね。そうなりますと相場と言いうものを私では判断できかねますし、山伏さんの方で何か要望があればはっきりとおしゃっていただけますと有難いのですがいかがでしょう」
(キタコレ、課長のいかがでしょう攻撃)
裕はそんな事を考えながら、今の所欲しい物など何も思い浮かばないので「考えておきます」とだけ返事をした。
そして「それでは」と話を続けようとする課長の話を遮り、新たに見つけた空間の出入り口を早い所設置しましょうと課長を促し席を立った。
課長は渋々と言った感じで裕に続き席を立つと、空間の出入口を設置したい場所へと裕を案内する。
その間課長はやはり色々喋っていたが、その内容の殆どを裕は勿論まったく覚えていない。
もう既に、とにかく早く済ませて部屋に帰りたかった。
「・・・・・という訳でしてね、次は関西方面か北海道で空間を探しては頂けませんでしょうかね。ええ、勿論経費はこちらですべて持たせて頂きますし、出張手当も十分にお出しできるかと思いますがいかがでしょうか」
すっかり聞き流していた話の中に、とても裕の興味を引く話がいきなり出てきた。
どういう訳なのかはまったく聞いていなかったが、関西と言ったら食い倒れにU〇J、北海道と言ったらカニにホタテと言った海鮮にラーメンにジンギスカンと食の宝庫旨いもの三昧。
そうそう、じゃが〇ックルにプリンにチーズケーキも忘れてはならない。
どっちにしても出張手当がついて経費を全て持ってくれるらしい、つまりタダで旅行ができるのだ、裕に断る理由など無かった。
「全然大丈夫です。いつでも行けます!」
「それでは日程などはこちらで決めてさせていただく事にして、早速に話をすすめましょう。準備ができ次第また連絡を差し上げますので山伏さんもその方向で準備の程をよろしくお願いしますね」
「ああ、でも、アメリカの時の様に堅苦しい人との接触とか特別待遇はちょっと遠慮したいんですが」
裕は観光気分で行ったアメリカがまったく期待通りでなかった事を思い出し、先に課長に注文を付ける。
「分かりました、こちらとしてもあまり大勢に知られる事は望みませんのでその様に計らいます」
課長の意志もしっかりと確認出来て、裕は安心して今度こそと旅行気分を再燃させていた。
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