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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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裕は漸く新居での生活に慣れ、毎日のルーティンと言うか生活のリズムが出来始めていた。



課長には約束通り適当に見繕った空間を探しその場所を教え、正式に国家未詳案件調査対策室のアルバイトとして契約した。


条件は課長の呼び出しには絶対に応じると言う縛り以外はリモートワーク扱いで、給料は月100時間の時給2000円計算で出る事になった。


課長はもっと待遇を良くしたかったらしく、他のアルバイトと差をつける訳にもいかないと申し訳なさそうにしていたが、裕にしたら願ってもいなかった好条件だと言えた。


何しろ事実上登庁もしないで好きな事ができるのに、決まった給料が国家未詳案件調査対策室に籍を置く限り出ると言う事だ。


裕のメインの仕事と言えばあの謎空間の場所を見つけて教える事だが、一応ダンジョン関連の報告もする事になっていて、その報告書を書くのは面倒ではあったが、こればかりはお給料を貰うのだから仕方ない事だろうと納得していた。


課長には取り合えず新たに空間を見つけたら教えると言う事にしてある。

そうする事で無理に強要される事を避けたのだが、課長は裕が簡単に見つけられる事を当然知っている様だった。


なので敢えて裕は事前に見つけてあった空間を教えると念を押す様に話しながら案内したが、その作戦が成功したと思いたかった。


そしてこれで少なくとも家族からニートと馬鹿にされないで済むと考えても裕は満足していた。


それからボロアパートが建っていた土地を破格の安さで譲って貰う事になり、あのボロアパートを解体し更地にしてから正式に契約する事になっているので、今はその作業が終わるのを待っている所だった。


叔母には国家未詳案件調査対策室の仕事内容は守秘義務があって詳しく話せないと説明し、部屋には機密もあるし籠る事もあるからと裕の部屋に鍵を付けさせて貰った。


そして家賃などの生活費の話をすると叔母は水臭いと言うので、然程する事も無かったが管理人の仕事の継続と家事をする事で相殺する事になった。


家事は食事の準備や買い物に掃除に洗濯と結構やる事はあったが、裕はそれを苦にする事はあまり無かった。


掃除と言っても叔母の部屋と裕の部屋とリビングとダイニングキッチンと部屋数も少なく広さもたいした事は無かったし、そもそも叔母も裕も散らかす事は殆ど無かった。


食事の準備も叔母は大抵帰りも遅く外で食べて来る事も多かったので、時間を気にして作るのは朝食だけだったし、洗濯は結局叔母は自分の分は自分でしていてクリーニングに出すのを頼まれるくらいだったので、裕は完璧な主夫ができる様な気がしていた。


朝食を準備し叔母が出かけるのを待って洗濯機を回しながら掃除を済ませ、買い物やその他の用事を済ませてから高卒認定試験の為の勉強をして、昼食後にダンジョンに入る毎日だった。


それから結局空手は止めてボクシングにだけ週3日通うのを続けていた。

空手も嫌いではなかったが、基礎身体能力の維持を目的に考えての事だった。


と言うか、子供達に混じって空手の型を習うより、自由に運動器具を使わせて貰える様になった事で、ボクシングジムの気軽さが裕には合っていたと言うのが正直な気持ちだった。



そして裕は今、ダンジョンに入る事を心から楽しんでいた。


魔物の湧きの早さも自分で適度に調整できるようになったし、時間も決めて入る様にしているのだが、何よりも「また明日」とか「明日は来られそうもない」とか、裕は必要も無いのに挨拶をする事で、まるで約束をして聖女様に会っている様で、どうしても気分が上がってしまうのを抑えられなかった。



それから空手を止めて空いた時間を使ってエルフに会いに行っては浄化を手伝っていた。


本来は消滅を急ぐために逆にした方が良いのだろうが、何となく、まあ、何となくだが、折角出会ったエルフと少しでも長く付き合いたいと裕は考えていた。


なので、一日のダンジョンでの稼ぎが大分減ったが、今の裕には何の問題も無かった。


何しろ今まで経験した事も考えた事も無かったデートの様な事を、マンガやアニメなどの世界でしか会えないと思っていた聖女様やエルフとできているのだ、こんな至福的時間にどんな問題があるというのか。


土地は購入予定とは言えかなり安く手に入るし、予算が足りなければ焦ってアパートを建てる必要もない。

国家未詳案件調査対策室のアルバイトとして、困らない程度には収入もある。


寧ろ聖女様やエルフに入れ込み過ぎない様に気を付けるのが大変だった。

何しろ時間が空けばダンジョンに入りたくなってしまう、だから敢えて「また」と約束を始めたとも言えるのだが、その約束でさえ破っても良いかと思ってしまう。


あの一心不乱にダンジョンに入った時の様な無理さえしなければ大丈夫だろうと、自分に言い訳を始める事も多かった。


しかし自分で決めた事とは言え、一度でも破ったらそこから際限が無くなり、生活のリズムも壊れるだろうと簡単に予測できたので、自分の健全な生活と健康の為だけでなく叔母との快適な同居生活の為にもと自粛していた。


しかしベットに寝ころび、ダンジョンの入り口付近を見詰めてはついニヤニヤする自分に、これは現実だけど現実では無いのだと、裕は自分に一生懸命に言い聞かせるのだった。



読んでいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんなに愚かな主人公はなかなかいないからすごい
[一言] 時給2000円はないなぁ 悪い意味で 医師の当直の時給を基準にしたほうが良い
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