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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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裕が本気で毎日そこそこの時間をダンジョンに費やしたなら、収縮を始めたダンジョンなら半年も掛からずに消滅させられるだろう。


かっぱ擬きダンジョンでの経験を参考にして裕はそう計算していた。


しかし涼太や課長があの謎空間をどのように認定させ、どんな風に浄化させているのかは知らないので、実際の所裕の予測があてになるかはまったく分からなかった。


しかし課長には既に収縮を始めた空間を教えた後ろめたさもあって、新しく謎空間を見つけたと言う裕からの報告は半年に1度位で良いかと考えていた。


そしてまた裕はエルフのダンジョンが消滅するだろう時間もだいたいで予測していた。


管理者は感情の無いAIの様なものなので、裕が望む様な良好な意思の疎通は今の所できてはいないが、AIが学習する様にいずれは変化があると信じて裕はエルフや聖女様と接していた。


あくまでも希望的観測でしか無いのだが、何ならエルフと聖女様に名づけを提案しようかとまで思っていた。


しかし、不便だから名前を付けても良いかと言うセリフをなかなか口にできず、そして裕が考えているほどには会話も弾まず、一人で妄想を楽しむ時にだけ勝手に考えた名前を呼んでいるのが現状だった。


アニメの様には上手く行かない、管理者はチョロインでは無いからなと、裕はダンジョンに入るたびに少々落ち込んでいるのだが、しかし同時に裕は諦めてはいなかった。


何しろあの黒猫幼女は年齢的なキャラだったのか、それとも何か別の条件でそうなったのか、独特の口調で人懐っこさを感じさせていた、と、思う。


だからいつかその程度にはエルフや聖女様とも良好で友好的関係にもなれるのじゃないかと日々祈る様に頑張っている、つもりだ、あくまでも。


もっともいずれは消滅してしまうのだと思えば、それほどに入れ込むのは危険とも考えられる。

絶対に別れる日が来ると分かっていて仲良くなるのは、別れの辛さを倍増させるようなものだ。

しかし来るもの拒まず去る者追わずの精神で、絶えずとっかえひっかえだわと開き直ろうと自分には常に言い聞かせていた。


そう、エルフとの別れの日はきっと黒猫以上に辛いだろうが、消滅までの時間を一緒に楽しんだと思えれば別れの時はけして悲しいばかりではないだろう、と、思っている。


そしてその後は次のエルフを探すか、それとも爆乳ボンバーな管理者を自分で設定できるか、妄想力を使ってやってみるだけだと裕は前向きに考えようとしていた。


そう裕は今一番の希望として、管理者も裕の思うままの姿にできるか試したくて仕方なかった。


多分ではあるが、ダンジョンの魔物が裕の認識で設定できたのだから、きっと管理者の姿も自由にできるのだろうと確信めいた思いがあった。


そしてそれが可能だとしたら、黒猫幼女の様なキャラ設定も可能で、今よりも友好的な会話を楽しめるのではないかと考えていた。


しかしこの部屋にこれ以上ダンジョンを増やす訳にもいかず、いまだにその考えを試す事もできずに聖女様やエルフとの意思の疎通の改善を夢見て一人励んでいた。



そしてそんな毎日を送る中、ふと思いついた事があった。


管理者のキャラ設定を自由にできる能力を願ったらどうだ?


年齢や性別や見た目と言った姿だけでなく、性格や口調など細かな設定ができたなら・・・



いや、しかし、逆にそこまで愛着を込めた管理者を作ってしまったら、別れるのがとても辛くなるかもしれない。


それに現実だけど現実じゃない事実を受け止められなくなりそうで怖い面もある。


何と言ってもこのまま夢の世界にどっぷりと浸かった生活を始めるのだけは避けたい。


あくまでもダンジョンは、裕があくせく働かなくてもいい様にと考え、老後の生活に困る事が無い程度に稼ぐための手段であって、そこそこに生活できる不労収入が入る様になったら、ダンジョンを手放し今の生活から絶つつもりでいる。


そしてそれまでの間ダンジョンを楽しむための手段として、管理者の事も考え始めただけだから、裕は自分に強くそう言い聞かせ、これ以上考えるのは危険だと判断しはじめていた。


そう、ダンジョンはゲーム感覚だけどゲームじゃない。

管理者が異世界にでも転移した様な気にさせてくれるけれど、ここは創作の世界じゃない。


偶然見つけたダンジョンで手に入れた能力を使って、裕の今後の人生も良好なものにして行く事が重要なのだ。


管理者に惑わされ、このままズルズルとダンジョンに関わる様な事は本当に避けたい。


あぶく銭は身につかない。

貧乏人はお金を守る手段を知らず考えないから貧乏なのだ。

生前の祖父から散々言い聞かされた言葉だった。


あまりに大金を稼ぎ過ぎ、ダンジョンで簡単に稼げるからと思う様になってしまったら、裕は途端に身を持ち崩すだろうと自分でも分かっていた。


きっとあの家族達を見返す為と言いながら生活を派手にしたり、知人に言われるままに奢ったりするのが目に見えている。


そして挙句にすべてを家族達に知られる事になり、取り上げられ、搾取されるためだけにダンジョンを手放せなくなり一生縛られ続けるのだろう。


本当にこうして少し考え想像しただけで恐ろしい。


ここで絶対に間違える訳にはいかない。


裕は改めて気を引き締めるのだった。



読んでいただきありがとうございます

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