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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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「そうだよ、相手は欲にまみれた偉そうにしている大人達だ。ダンジョンの事など詳しく知る訳も無いし、何回願いが叶えられるかなんて関係ないんだ。場所だって国内なら何の問題も無いんだろうし、そこまで課長とは詳しく交渉もしていない。だから俺が相手の事をいちいち考えてやる必要もないんだ」


確か黒猫はダンジョンの消滅が追い付かなくて管理者不在の空間が増えだして困っていると言っていた。

だとしたら裕の能力をただ利用し、自分の欲望を叶えようとしか考えていない奴らにはダンジョンの消滅を手伝わせればいいんだと裕は考え始めた。


涼太が今いったいどんな空間を作りどんな研究をしているのか知らないが、あの空間の事を解明しようとしているのは知っている。

だから涼太の様に自分の欲望だけでなく動く人ならともかく、その他の奴らの事など深く考えてやる必要など初めから無かったのだ。


だとしたら、このまだ新しい空間は取り敢えず自分の為に確保しておいた方が良いんじゃないかと思い始めていた。

それにここの出入り口の場所はどう考えても分かり辛く不便そうだから、裕の部屋に設置した方が良いと思われる。


「うん、そうしよう。それが良い」


裕はさほど考える間もなくひとり勝手に納得して、早速ダンジョンに入り管理者の登場を待った。


≪ダンジョン認定致しました≫


ミルクティーブロンドのゆるふわウエーブがかかった髪を静かに揺らしながら現れた少女は、裕がいつか読んだ小説の中で想像していた聖女様の様だった。


裕は温和そうでちょっと背の低い、裕より年齢的にも少し幼い感じのする少女にちょっとの間見入ってしまった。


その姿は少し若い気もしないでもないが、裕自身あまり自覚はしていなかったが、もしかしたら裕の好みドストライクかも知れなかった。


その影響があってか裕はちょっと顔を赤くし照れたような気持ちになり、少々しどろもどろになりながら恒例となったダンジョンでの魔物の討伐報酬の交渉をした。


交渉をしても金額が変わる事は無いが、万が一交渉しなかったために討伐報酬が無かったら困るので確認のためにもこれだけは忘れる訳にはいかなかった。

そしてその後ダンジョンの出入り口を自分の部屋に設置して部屋へと戻った。


二つのダンジョンの出入り口が同じ壁側に隣り合わせで設置された事は良かったと言えば良かったのだが、その分ダンジョンが見つかってしまう危険も増えたのだと気づき、絶対にこの部屋に自分以外の人を入れられないと考えていた。


そしてその壁に並んだ出入り口付近を見つめるうちに、図らずもエルフと聖女様が裕の部屋に居る様な気分になり、忽ちに裕の妄想が炸裂しはじめていた。


妄想の世界での裕はすでにハーレム状態であった。

素っ気ない冷酷そうなエルフはツンデレ気味に裕に接し、ゆるふわ聖女様が裕をまったりと癒す、両手に花状態の脳内で裕は今まさに至福の時間を過ごしていた。


現実では多分あり得ない事だろうが、妄想の世界は裕に優しく思いのままだった。


しかし裕は慌てて頭を振り現実に戻ると、コレじゃ部屋でゆっくりと落ち着く事もできなくなるじゃないかと頭をちょっとだけ抱えた。


そして気持ちを逸らす為にも管理者が毎回違う事に関しての考察をする事にした。


ダンジョン認定されると裕が無意識にでも想像していた魔物が現れる事になるが、じゃあ管理者も裕が無意識に想像し望んでいる姿で現れると言う事だろうか?


一番初めの黒猫は咄嗟に裕がそう考えた事が関係していると思われるが、次の猫耳幼女はロリ趣味の無い裕の想像には絶対に無かった姿の筈だ。

だから裕はただ単に黒猫が成長して擬人化したものかと考えていたが、そうじゃ無いのかも知れない。


それは次に現れたのがエルフに聖女様となると、その姿の基盤はきっとダンジョンと関連した異世界小説の影響だろうと思われるからだ。


となると、やはり裕の意識下にある記憶から裕の望みを反映させその姿が作られると言う事か?


だから管理者は全員たぶん女性なのか?


と言う事は、次はマッチョな獣人戦士とか、高貴な騎士様とか、ちょっと癖のある魔法使い少女が現れるのか?


裕は考察と言いながら、どんどんと妄想の世界に戻りそうになるが、気力を振り絞り結局管理者に聞いてみる事にした。


そうして裕は聖女様ダンジョンに戻ると、少々緊張しながら質問をする。


「管理者の姿はやっぱり俺の影響って事なのかな?」


裕は聖女様相手に何気に口調が丁寧になっている事に本人も気付いていなかった。


≪この空間はすべてあなたの思考や記憶が影響しています。そしてさらにこの空間ができてからの経過時間も影響して私達の姿が構成されます≫


「要するに君たちのその見た目の年齢はこの空間ができてからの時間の経過が関係していて、それで俺の記憶から年齢に見合った姿を作っているって事で良いのかな」


≪あなたと良好な意思疎通をするための手段とお考え下さい≫


良好な意思の疎通は裕の願っている事でもあると、鼻の下が伸びそうになるのを慌てて戻した。


この空間ができてからの経過時間が見た目の年齢で、裕の記憶の中から姿が作られると言うのならば、やはり次に自分の為のダンジョンを探す時は、年齢的な検索条件と共に管理者の姿もしっかりと明確に想像しようと思わずにはいられなかった。


そうして裕は新たなダンジョンでの楽しみが増えた事に心を躍らせ、ある程度稼いだらダンジョンから卒業する気でいた事さえ忘れようとしていた。



読んでいただきありがとうございます

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