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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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裕はこのダンジョンでやらなければならないもう一つの理由を思い出していた。


国家未詳案件調査対策室の課長に新たな空間の場所を教えると約束していたのだ。


そうすれば晴れて正式に国家未詳案件調査対策室のアルバイトとしてお給料を貰える事になっている。

まあ、色々と秘密にしなくてはならない事が多いのは今まで通りだが、それでも裕にとっては家族を見返すための第一歩として重要な事だった。


(俺は叔母さんの財産目当てで叔母さんに尻尾を振っている訳じゃ無い)


今まで散々言われてきたいろんな事や、役立たずだとかニートだとかヒモの様だと言うたとえよりも、兄に言われたこの言葉が裕の心に深く根付いていた。


家族達はあのボロアパートの頃は、借金してまであんなボロを手に入れていったい何を考えているんだと叔母を散々馬鹿にしていたのに、新しいアパートを建てたと聞くと掌を返したかのように態度を変え、そして祝いの振りして来たついでに裕には言いたい事を言って帰っていった。


自分の家族ながら本当に反吐が出る思いだった。


あんな家族達と二度と関わりたくも無いが、馬鹿にされるのは我慢できない。

これが赤の他人ならいざ知らず、家族だからこそ許せないと言うか、裕を馬鹿にしながら叔母までも馬鹿にされている様で本当に裕には我慢がならなかった。


「できればここから近い場所にあるできるだけ新しい空間に転移」


裕はざっくりとした条件だったが、課長と取引のために教えるのならできるだけ新しい空間の方が良いだろうと考え、場所は国内なら問題無いだろうと言った気持できっちりと限定する事は止めて探した。


そして転移した空間が裕の余計な認識で認定されるのを避けるために急いで出入り口から外へと出た。


この先この空間は裕自身が関わる訳じゃ無いので、なるべく自分の認識から外す事を考えていた。


そして場所だけはきっちりさせておかないととスマホのマップアプリを開き確認する。

そこは、隣の県にある新興住宅街の近くで、まだ開発が続いているのか山を削る作業途中の現場に近い場所だった。


(ここってこの作業がこのまま続いていたら、この出入り口の下の地面も削られここは上空に位置する事になっていたのかな?)


小高い山と言った雰囲気のその場所がまるまる削られ、平地となった所を想像して裕はそう考えていた。


(この場所を教えても問題無いのかな?)


かっぱ擬きダンジョンを手に入れるために叔母とのアパートの交渉はどうだったのかはっきりとは知らないが、何となくではあったが他人の土地をましてやこんな開発途中の土地の交渉は難しいのじゃないのかと考えていた。


「でも俺の考える事じゃないか、問題があれば何か言って来るだろうしな」


裕は取り敢えず自分を納得させ、この場所を課長に教える事にした。


だが今後また課長に頼まれて新たな空間を探す時は、国有地と条件を設定した方が良いのだろうかと考えていた。


それに考えてみたら、転移して見つけた空間がかっぱ擬きダンジョンの様に誰かの部屋の中なんて事が無いとも限らない。


それに気づかずに急いで出入り口から出て、いきなり他人の部屋に侵入なんかしたら直ちに犯罪者になってしまうし、裕が外側から探したと言う言い訳が立たなくなり、空間内転移の能力をバラさなければならなくなるだろう。


裕はこれからもきっと新たな空間の場所を教えて欲しいと頼まれるだろうと既に覚悟していた。

多分だが、欲が絡んだ大人はまだまだいるに違いないと普通に思っていた。


しかし逆にその能力のお陰で国家未詳案件調査対策室で優遇されるのだと言う事も分かっている。


だから課長に頼まれての空間探しはもっと条件をきっちりしなくてはと考えるのだった。


が、それと共にふと、それを利用してダンジョンの消滅に手を貸せば良いのかとも思い始めていた。



読んでいただきありがとうございます

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