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「それでうちでの雇用条件の話ですが、見合った給料と言う曖昧な提示ではなくはっきりといくら欲しいのか仰っていただけますか。大抵の職員は現地に赴く事も多いので申告による自由登庁やリモートも認めています。ですから山伏さんが登庁されなくても仕事をしていると言う体でいくらでもお給料の調整はできるのですよ。私としましても、私専用に新たにあの空間の情報を頂けるとなりますと、それなりの給料を出しても構わないと考えてはいますが、山伏さんははっきり言ってどの位の額をご希望なのでしょうか。それから勿論の話ですが、うちから給料を出すとなるとこれから山伏さんが提示される情報のすべてはこの国家未詳案件調査対策室に権利と責任が移る事になります。その辺もご了承いただけるのですよね?故に今までの様にそうそう簡単に大き過ぎる対価を払う事はできなくなりますし、情報自体極秘扱いで他に漏らす事は絶対に控えていただく事になりますがご理解いただいているのですよね」
課長による説明の内容は裕にはイマイチ良く理解出来なかったが、要するにここへ通勤しなくてもそれなりの給料をくれると言っているのだろうと思われた。
その為に情報は絶対に極秘にしろと言うのも別に納得できるし、情報と交換にこれ以上何か優遇して貰おうとは裕は考えてはいない。
第一これ以上のどんな有利な条件があるのかなど裕には思いつきもしなかった。
今はただ、きちんと働いていると言う実績と、家族達に堂々と見せつけられる源泉徴収票が欲しいだけだ。
ただそれなりに家族達を黙らせる程度の年収は欲しいとは思っているが。
「良く分からないのですが、俺を馬鹿にしている家族を黙らせる位の自分に見合った年収を希望するとなるといくら位が妥当なのでしょうか」
本当ならこの辺の話は裕としては涼太とゆっくり納得いくまでしたかったが、課長相手に今する交渉として考えると裕には何の考えも浮かばず正直に聞くしかなかった。
課長は裕が無理な交渉をしようとしている訳では無いと判断したのか、途端に雰囲気を柔らかくしにこやかになった。
「そうですね山伏さん位の年齢で考えてと言う事でしょうか、それともうちの職員達を基準でと言うお話でしょうか。それによっても額や待遇が変わって来ますが、うちも山伏さんの様なアルバイトを雇用するのは初めての事でしたし、今までは事実上うちの懐は痛まないと言う事と、あのダンジョンでの稼ぎを計上するために便宜上極秘に破格の優遇をしていたのですから、これから正式にうちからお給料を出すとなると基準を決めなくてはなりませんね。もっともこれからは山伏さんの様なアルバイトが増える事になるかも知れません、ですからこの辺ではっきりと決めておく必要があるのも確かですから早急に決める事にしましょう。ですが本当にそれで宜しいのですか?何でしたら今までの様にダンジョンでの収入を便宜し極秘にする事も可能ではありますよ」
折角の課長の提案だったが、今はダンジョンの稼ぎは例の口座に預け入れられるので、極秘にして貰う意味が無かった。
「でもそれだと俺の源泉徴収票が出ないでしょう。それに正式にアルバイトだと言いづらい所もあるし、この先ダンジョンにそう頻繁に入れるかどうかも分からないし」
裕は金銭的な問題よりも今はとにかく見た目で分かり易く判断されやすい確実なものが欲しかった。
なので以前考えた様に高卒認定試験を受けて専門学校なり大学なりを目指し、自分が本当にやりたい仕事を探すのも悪くないかと考え始めていた。
裕にはそれをするのに可能なお金もあるし、何なら不労収入の予定も立っている。
不労収入だけで生活するのも悪くは無いと思ってはいるが、その事はこの先もしばらく秘密にするつもりなので、それではあの家族達に馬鹿にされ続けるのかと思うと我慢できなくなっていたのだ。
粘着されたくもないし、かと言って今までの様に馬鹿にされるのも面白くない、はっきりと見返してからきっぱりと家族の縁を切ってやると今では裕は強くそう考えていた。
それにダンジョンには趣味で楽しむために入る程度に留めたいとも思っていた。
消滅を急ぎ一心不乱になったあの期間は思い返してもかなり辛かった。
確かにお金にはなったけれど、何一つ楽しかった記憶がない。
もうあんなのは二度とごめんだと裕は本気で思っていた。
「分かりました、では取り急ぎ基準を決めましょう。ですので次回は是非私に新たな空間の場所を教えていただけますか、私もその間準備を進めておきます。少々話が長くなりましたが、次回はそうですね急ぎで申し訳ありませんが来週あたりを考えておいてください、詳しくはまた連絡いたします。では、お願いしますね」
課長は何かとても急いだ様子を見せて話を終わらせた。
急にあっさりと話を締めくくられた事に裕は少々戸惑いを感じたが、課長との話が思ったより早く終わった事に安堵していた。
しかしやっぱりこの課長との話は少々苦手だ、裕の頭にはあまり多くの事は残らないと言うか、何を話し合ったかさえ忘れそうになる。
そうして裕はメモを取るなり録音しておくなりしておけば良かったと考えながら、話の内容を一生懸命に思い出しながら帰路についたのだった。
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