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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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「宜しければあの土地を安く譲りますよ。ええ、私共にはもう用が済んだ土地ですし、山伏さんには最後までお付き合いいただき、また大変お世話になりましたからね。その上に色々とこちらの無理も聞いて頂いてますから、私共のせめてもの誠意と受け取って頂ければと思うのですよ。勿論私も知っていますよ、山伏さんがアパートを欲しがっている事は。あの土地は私の好きにできる事になっていますので、微力ながら私も力になれればと思いましてね。そうそう、佐藤君の報告では引き続き浄化の済んだ土地の観測もしたいとの事ですので、山伏さんがあの土地にアパートを建てた後はこちらの研究員の入居の許可さえいただければ何の問題もありませんので、いかがでしょう山伏さんにもけして悪い話ではないと思うのですよ」


かっぱ擬きダンジョンの消滅を果たし、裕は叔母のアパートに引っ越し新しい生活に慣れようと何日かのんびりしていた所、課長に呼び出され久しぶりに国家未詳案件調査対策室に来ていた。


裕は一応まだ国家未詳案件調査対策室のアルバイトでいると思っていたので、これからの事を話すのには丁度良いかと思い足を運んだが、相変わらずの課長の勢いと話の内容に少し戸惑っていた。


裕としてはすっかりと浄化の済んだ住み慣れたあの土地を安く手に入れられるとなると願っても無い事ではあったし、そこに新しくアパートを建てるのは悪い話ではないと思うが、如何せん予定資金に不安があるので今すぐとなるとどう考えても無理っぽい話だった。


「折角の話ですが予算的にちょっと無理ですね」


「山伏さんそこで提案です。このまま私共でアルバイトとして実績を積んでいただければ融資の話もどうにか致しましょう。佐藤君の話ではまだ山伏さんには秘密がある様ですが、その秘密を打ち明けていただく訳に行かないのでしたらそれでも構いませんので、是非この国家未詳案件調査対策室のために活用していただけないものでしょうかね。多分ですが、その秘密は山伏さんが言う所のダンジョン絡みなのでしょう?私共としてはこのままより多くの情報を集めたいところなのですよ。あの空間の新たな活用方法も探したいですし、私自身も俄然興味が沸いて来ましてですね、是非私自身でも研究したいと考えているのですよ。山伏さんの悪い様には絶対に致しませんので是非お考えいただけませんでしょうか」


超能力以外にあまり興味も無く、以前は適当にあしらわれていた感じだったのに、そんな課長がただのアルバイトの裕に頭を下げた事に裕は驚いていた。


これがいつか涼太が言っていた欲が絡むと人間が変わると言う実例かと思うしかなかった。


「でもホントに秘密って言われても」


「山伏さんお分かりいただいていないようですが、あの口座は誰も干渉はしませんが監視はされているのですよ、一応ですね。ですから私共にも報告は入りますので、いずれはどんな秘密をお持ちか推測できてしまうのですよ。もっとも以前の様に隠されてしまえばそうとは言い切れませんが、そうなると不便なのは山伏さんの方になりますよね。まあ、お考えいただく時間が必要ならそれでも構いませんが、私共と協定を結んで友好的に話を進めた方がお互いの為にも宜しいかと思うのですがいかがでしょう」


裕は以前も思ったが、涼太と言う助け船が居なかったらもう蛇に睨まれた蛙状態で、裕にはこの課長相手に太刀打ちできそうもなかった。


すべて見越されてあの口座の提案をされたのかとさえ思えた。

と言う事は、この土地の交渉も裏にはどんな考えがあるのかと疑う気持ちも湧いて来る。


しかし考えてみれば悪い事ばかりじゃない。

実際あの口座のお陰で堂々とアパートの購入を考えられる様になったし、ダンジョンでの稼ぎを隠さなくて済むようになった。


その上あの口座に入れた現金は課税無しなんて、裕にとっては有利過ぎる待遇としか言いようが無い。

そして融資まで考えられる様になるなら、もう悩む事無く理想のアパートを建てる事もできる。


憧れの安定した不労収入生活も夢では無くなるのだ。


空間内転移の能力をそのまま話すのはまだ抵抗はあるが、適当なダンジョンを探して教える程度なら問題ないんじゃないだろうか。


寧ろそれだけでここのアルバイトとしてお給料を貰うってのも悪くないかも知れないと裕は考えた。


「俺は簡単ではないが一応他にもあんな空間を見つける事ができる。だからその場所を教えてくれと言われれば可能だけど、その代わりここのアルバイトとしてここに籍を置く限り、それに見合った給料が貰えるなら課長の言う条件で話を飲んでも良い」


裕は隠し口座以外の口座に預けられる堂々と年収として計上できる収入が欲しかった。


いつまでも家族達からニートの様に思われるのは面白くなかった。


叔母が新しくアパートを建てそこに同居しはじめたと知り、あの家族達は早速裕の事を叔母に養って貰っているニートとして馬鹿にしに来たのだ。


そして、いずれあのアパートを一人で相続する気じゃ無いだろうなと痛くもない腹を探られ、兄達から嫌がらせを受けた。


いくら裕にそんな気は無いと言っても、叔母があのアパートを裕の実家にするのだと言ってくれた気持ちが嬉しかったので、いずれは兄達に好きな様にされるのかと思うとそれも面白くなかった。


だから今は家族達からニートと言われないだけのきちんとした目に見える実績が欲しかった。


アルバイトをしていると言っても国家未詳案件調査対策室の事は言えなかったため、まだ何か月かの話でたいした稼ぎでも無いだろうと鼻で笑われたのも悔しくてたまらなかった。


正社員じゃない時点で馬鹿にしていたが、今の収入額を知ればそう簡単に馬鹿にもできないだろうと裕は考えていた。

けして言えないけれど・・・


「分かりました、ではその条件で話を詰めましょうか」


しかし課長にマジで詰め寄られ、裕はやはりもう少し考えた方が良かったかもしれないと少し後悔しはじめていた。



読んでいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやー絶対元の土地いらんやろー
[一言] 「裕としてはすっかりと浄化の済んだ住み慣れたあの土地を安く手に入れられるとなると願っても無い事ではあったし、そこに新しくアパートを建てるのは悪い話ではないとということなのかな思う」 叔母が…
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