第二話 裏の町、革ジャンとチャイナドレス それと黒い影
仲間たち
レイに連れられてやってきたのは水族館の中にある夜しか開店しない「BAR SINNYA」であった。私は未成年なので入れないから内装は知らなかったが、結構広いバーのようだった。大きいカウンターに椅子が六席分ありカウンター内の棚にはずらっとお酒並んでいる。
テーブル席のスペースはかなり広く、テーブル席の近くにはビリヤード台が置かれていて、大人な雰囲気を漂わせていた。それでいてその奥には大きな水槽があり、ここが水族館であることを再確認させてくれる。
「おい。そのガキは誰だ。なんでこんなところに居やがる。」
胸を突き刺すような刺々しい声でレイに尋ねる。声の主はカウンターの椅子に座り鋭い目つきでこちらをにらみつけてくる。
青い革ジャンに細身のジーンズで、鋭い目の下にはウロコのようなものが浮き出ている。よく見たらグラスを持つ腕に鋭利なヒレのようなものが生えている。
「もう、そんな脅すような声じゃお嬢ちゃんがびっくりしちゃうじゃない。
こんにちは、小さいお嬢ちゃん。それとおかえり、レイちゃん。随分かわいらしい子を拾ってきたじゃないの。」
鋭い声とは対照的に優しく、どこか艶っぽい声がカウンターの向こうから聞こえてきた。話しかけてきたのはタレ目でチャイナドレスを着た妖艶な女性だった。
背中からはタコの触手のようなものが生えているのが見える。このメンバーの中では一番親しみやすそうと感じた。小さいと言われたのが少し引っ掛かったが気にしないことにする。
「ただいま、真子。おい刃。あのサメはお前の仕業だろ。」
「あらフカちゃん。そんなことしたの?」
「敵だと思ったから仕向けただけだ。そっちこそ邪魔しやがって。」
あのサメはこの人の仕業だったのか。こっちは本当に死にかけたというのになんて淡白な反応だろうか。
「危うくこいつが死ぬところだったんだぞ。」
レイだって私のこと殺そうとしたくせによく言うよ。
「大体お前はあまっちょろいんだよ。そんなどこの馬の骨かもわからん奴はさっさと殺せばいいだろ。」
レイの言葉に対して刃と呼ばれた革ジャンの男は苛立ったような声色で言い返す。
「関係ない奴を巻き込むのはダメだ。町の秩序を守る者として住民に顔向けできない。」
「そんなの俺からしたら関係ねえな。」
「なんだと?」
二人の間に険悪になっていく。仲間のもとに連れていくという話じゃなかったのか?二人の口喧嘩に困惑しているとカウンターの方から触手が伸びてきて二人の口を塞いだ。
「喧嘩はダメよ? レイちゃん。フカちゃん。」
レイから真子と呼ばれた女性が二人を制止する。優しい口調だがその声と表情には威圧感がこもっていた。
「ここはいったんお嬢ちゃんとレイから説明してもらいましょ。それでいいわよね、レイちゃんとお嬢ちゃん?」
「…わかった。」
「わかったよ。真子。」
「フカちゃんもいいわね?」
「わかったよ。チッ タコ女が。」
フカちゃんと呼ばれた男が悪口を言うようにつぶやくと真子さんはフカちゃんと呼ばれた男性に向けてにらみを利かせると男性は目をそらした。真子さんって強かな女性なんだなあ。二人のまとめ役って感じするし。
とりあえずこの場は収まったようだ。レイはあからさまに納得のいっていないような不服そうな顔をしていた。
「そういえば名前を教えてなかったわねえ。私は瑞多 真子。これでもこのBARのマスターなのよ。本業は違うけどね。」
チャイナドレスとBARのカウンターは確かに似合わないがマスターの方が本業ではないのか。なら何が本業なんだろう。チャイナドレスを着る仕事なんて思い当たらない。
「ほらフカちゃん! あなたもちゃんと自己紹介しなきゃ駄目よ?」
「なんで俺がこんなガキに。」
「あなただって私たちの仲間なのよ。ちゃんと教えてあげて。」
「……鱶崎 刃だ。」
鱶崎さんは観念したように名前を名乗る。鱶崎だからフカちゃんなのかあ。それにしてもこの人、真子さんには弱いみたいだ。いますぐ指摘したくなったがここで余計なことを私が言うとさらにこじれそうなので黙っておこう。
「お嬢ちゃんは何て名前なのかしら?」
カウンターに頬杖をついて真子さんは話しかけてくる。言われてみて今の今まで名乗っていなかったことに気づく。
「水凪 円海です。」
私が名乗ると真子さんは笑顔をさらに明るくさせると
「円海ちゃんって言うのねえ! かわいい名前じゃないの! 敬語なんか使っちゃってかわいらしい!」
ハイテンションでそんなことを言いながら私の頭や頬を撫でてくる。いい人なんだろうけどテンションわからないなこの人。あと触手で撫でるのはやめてほしい。
「真子。その辺にしておけ。円海が困ってるだろ。」
レイが呆れたようにいう。レイのくせに助け船を出してくれるのか。
「残念ねえ。こんな小さくてかわいいのに。レイちゃんも撫でてみたくならないなの?」
「ならんな。こんなちび相手に。」
「ちび言うな。」
レイに言われるとむかつくな。初対面とは到底思えないようなやり取りをしていた。
「……外に出てくる。付いてくるなよ。」
私たちのやり取りを興味なさそうに聞いていた鱶崎さんはそういうと椅子から降り、バーを出ていった。相当私に興味がなかったようだ。
「あら……出て行っちゃったわねえ。もう少しおしゃべりしていけばいいのに。」
真子さんは笑顔を崩さないまま残念そうな声色でつぶやいた。
「じゃあ円海ちゃん。どうやってここに来たか教えてもらえるかしら?」
私は事の経緯を説明した。といっても自分でもわからないことがほとんどだったから説明と言えるほど長ったらしく喋ることはできなかった。
家族と誕生日にこの水族館に来ていたこと。ここは私のいた水族館ではないこと。見た目こそ同じだが雰囲気がまるで違うこと。このくらいの説明だ。真子さんは私の話を笑顔で、真剣に聞いてくれた。
「もしかしたらマドちゃんは“裏”に迷い込んじゃったのかもねえ。」
真子さんが裏というワードを出してくる。マドちゃん呼びはスルーした。
「裏? 裏ってなんですか?」
「そうねえ。ならレイちゃんに聞いてみたらいいんじゃないかしら。レイちゃんの方がくわしいだろうし。ほらほら二人とも椅子に座って?」
真子さんがそういうとレイはあからさまに嫌な顔をした。私は真子さんが触手で指した手前の椅子に座る。
「なんで私が。真子の方が説明はうまいだろ。」
「レイちゃんのほうがこの世界に詳しいだろうし丁度いいんじゃないかしら。」
「……わかった。じゃあ円海、何か聞きたいことはあるか?」
レイはそういいながら気だるげに私の隣の椅子に座り足を組む。
「なんで和服姿なの?」
「……そんなこと言っている場合か?」
ちょっとからかったつもりだったが普通に心配されてしまう。レイは思ったより冗談が通じないタイプかもしれない。
「つまんないのー」
「もっと建設的なことが聞いたらどうなんだ……。」
レイは随分と呆れたような表情をして手を額に当てる。からかい甲斐がないなぁ。
「じゃあ真子さんの言った裏って何なの?」
「今私たちがいるのは裏の汐光町だ。円海がいたのが表の汐光町。そこから見た町だから裏というわけだ。まあ外観は表と瓜二つらしいからお前から見たら感覚はそんなに変わらないのかもな。」
確かに見た目は私の知る水族館と同じだった。それなら町も瓜二つということが想像できる。
「町の外も瓜二つだったりするの?」
「それがわからないんだ。」
「分からない?」
「そうだ。町の境界線に結界か何かがあるのか、外に行こうとしても行けないんだ。」
結界なんてものがこの世界にあるのか。裏の町という時点で現実味は無いのに結界て。
そんなことを考えていると、カウンターの方から視線を感じた。どうやら真子さんがこちらをにこにこと見つめているようだ。
「円海ちゃんって、本当に表の人間なのねえ。」
「そうだな。尻尾もヒレも触手もないし。ただの人間だな。」
「ん? そうだけどどうしたの?」
まるでそれが普通ではないような言い方に首をかしげる。
「そうか。円海にはまだ行ってなかったな。この町の住民はみんなこんな感じだ。」
レイはそう言うとカウンターから立ち上がり、自分の細長い尻尾を見せ、真子さんの触手の方に指をさす。真子さんはカウンターの向こうから笑顔で「ハーイ」と言い手と触手を振ってくる。
「何かしらの身体的特徴があるんだ。魚のヒレが生えていたり亀の甲羅を持っていたり。海の生物みたいな体の部位を持った連中が住んでいるんだ。」
その話だけ聞いてもピンとは来なかっただろうが、実際に目の前で見せられると信じざる負えないように思う。
「まぁ私たちみたいに戦う能力を持っているとどっちかと言えば「海異」な気がするけどな。」
「そうねえ。私は戦うのは苦手だけどねえ。」
真子さんがそういうと二人は顔を合わせて息を溢れさせるように小さく笑う。そんな様子の二人の会話から聞き覚えのある言葉が聞こえてきたのを私は見逃さなかった。
「待ってレイ。いま「海異」って言った? それってどんな奴なの?」
「そういえば海異のことも言ってなかったな。たまに出てくるんだ。サメとかシャチとか色んな海の生物の姿をして町や住人を襲ったりするやつだ。それがどうかしたか?」
レイは私の疑念に満ちた様子を見て不思議そうに首をかしげる。
「海異ってやつ、表にもいるの……」
「は? あんな危なっかしいのがお前のいた町にもいるのか?」
レイは少し前のめりになって、目を丸くしこちらに尋ねる。
「いや、レイが言ってたみたいな危ないのじゃないの。クラゲとか小魚とかそんなもの。でも、前に一回、サメの海異が商店街を襲ったことはあったよ。」
「そいつはどうなったんだ。」
「わかんない。いつの間にかいなくなってたらしいの。こっちの町で海異の研究が進んでからは危険な海異はいなくなったよ。」
本当にいつの間にか。いつから海異が安全になったかなんて詳しくはわからない。
「そうか…私たちみたいなのが表にいるのか?」
レイはそういうと姿勢を直して口元に手を当てて考えているような仕草をとる。
「……たちみたいなの?」
「ちょっとレイちゃん? ちゃんと説明してあげないと。」
私の困惑した様子を感じ取ったのか、真子さんが顔を少しむくれさせてレイに言い聞かせる。もともとかわいらしい顔なので怒った顔もかわいらしい。
そんな様子の真子さんの言葉にレイの綺麗な顔は苦い表情に変わり「そうだな……」と小さい声を漏らす。真子さんに対して弱くなっているレイもかわいらしく思えた。真子さんとは全然違うけど。
「……私たちは海異から町を守る自警団的なことをしてるんだ。「イサナ」という町の管理者からの任務で動いているんだ。」
レイの言い方からして、危険な海異と戦うのが仕事なのだろう。そう思うと、私を襲ったサメの海異を一刀両断したレイにも納得がいく。
しかし先ほどと比べて、自信を失ったような弱々しい声で説明してくれるレイの様子を見るのはどことなく優越感を感じる。レイはそんな私の様子を見て顔をしかめる。
「町の管理者の人ってどこにいるの? イサナっていう人だよね?」
レイの説明の中に新しい名前が出てきたのでそれについて問うてみる。レイは難しい表情をして少し考えこむ。
「……それも分からないんだ。任務は全部スマホに来るし、顔を全く見せないんだ。」
「レイって意外とわかんないこと多いね。」
「しょうがないだろ! わからないんだから!」
レイがムキになって大きい声を出す。最初に姿を見た印象は大人な美人といった感じだったけど、意外と子供っぽい?
そんなことを考えていると、私たちのやり取りを、頬杖を突きながらほほえましそうな顔で見ていた真子さんが口を開く。
「二人とも仲良しねえ。」
「「そんなことない(です)!」」
不意に仲がいいと言われてとっさに否定するが、文言どころか真子さんの方を向くタイミングまで揃ってしまい、余計に恥ずかしくなってしまう。レイも恥ずかしいのか、私の方から顔を背けている。
「本当に仲良しねえ。なら二人で町を見てきたらどうかしら?円海ちゃんも町を見てみたいでしょう?レイちゃんは円海ちゃんのボディーガードになってあげなさい?」
仲良し認定されたのが少々釈然としないが、町は確かに見たい。レイもその意見には賛成したのか、あごに手を当ててうなずいている。
レイは椅子から立ち上がり何も言わずに出口へと歩いていく。
「ちょっと! 待ってよレイ!」
私は勢いよく椅子から立つと駆け足でレイを追っていく。
「いってらっしゃ~い二人とも~」
真子さんの声を遠くから感じながら私はレイの隣まで走っていった。
水族館から出る途中、私はレイに気になっていることを聞いた。
「レイは私のこと結構気にしてくれてるけどどうしてなの?」
思えば私とレイは最悪な出会い方をした。初対面で剣先を突き付けられたし。だけど今はこうして二人で水族館を歩いている。
なんだかんだ私を助けてくれたし説明もレイなりに頑張って丁寧にしてくれたのも分かった。実際丁寧でわかりやすかった。でも所詮迷い込んだだけの私、一人の一般人に過ぎない私をここまで助けてくれるのかがわからなかった。
「……別に」
私の問いかけに目も合わせずにそっけなく答える。
「えー?! 別にで済ますことじゃないでしょ?! 絶対何か隠してるでしょ。」
こいつが何かを隠してるのは態度からしてまるわかりだ。意外とわかりやすいな。
「ほんとはなんでなの? ねえ教えてよ。」
「いやだ」
強情だな。こいつ。ならこっちにも手がある。
「教えてくれないならレイと一緒に行くのやめようかなあ。」
子供がかまってほしい時みたいなやり方で気を引こうとするが、いざ自分でやってみると結構恥ずかしい。こんなので引っ掛かるかよ。
「ッッ! ……わかった。教えてやる。」
予想に反して効果てきめんだった。こういうのに弱いのかこいつは。だが教えてくれるというならやった甲斐があったってものだ。
「あいつがいきなり殺そうとしたり、私が剣先を向けたりしただろ。それでその……責任を感じていたんだ。あの時はすまなかった。」
「あれのことで? 私はもう気にしてないよ。本人はあんまり私に興味無さそうだし、それにレイの立場ならしょうがないところもあったよ。」
案外拍子抜けな内容だった。実際、殺されかけて最初は混乱していたのもあって怒り心頭なところもあったけど、真子さんやレイと話してある程度わかってくると冷静に考えてしょうがないところもあったと思う。それに、レイはこうして謝ってくれた。なら尚更気にする意味がない。
……まあレイに対してちょっとだけいたずら心みたいなものはあるけど。
「それと……」
レイは弱弱しい声でそういうと、こちらの方をチラチラと見て様子を伺っている。
「それと?」
「言わなきゃ駄目か?これ。」
「だめ。」
何のことだが心当たりはないが、自分から切り出した以上、この期に及んで言わないとか許されないだろ。というか、こっちが聞いてみたい。
「……助けないといけない気がしたから。」
「え?」
予想外だった。ただの善意をここまで言い渋っていたのか?
「善意みたいなものもあっただろうが…お前は特別に助けなきゃいけない気がしたんだよ。」
「はえ?」
いきなり特別とか言われたせいで面食らってしまう。目を見開き、無意識に手で口を覆い、レイの方から視線を逸らす。そんな態度で言われたら照れちゃうでしょ。
「そ、そうなんだー。レイはそうおもってるんだー。」
「お前……! 勘違いするな! 本当に気がしただけだ!」
本当に気がしただけなのはわかるけどその言い方は完全にツンデレのそれじゃん! そんな風に言われたらさらに照れてしまう。
「ほら、行くよ! レイ!」
照れ隠しで大きい声を出してレイを呼びつける。実際は意味のない照れ隠しだっただろうけど、この状況じゃお互い何も言わないだろう。
「お前が最初に聞いてきたんだろ!」
「行くったら行くよ!」
怒りのにじんだ声で「お前……!」と聞こえてきた気がしたが、気にしないで水族館への出口へと向かう。後ろから走って付いてくる。
正直な話、私もレイに対してほかの人とは違う何かを感じていた。懐かしさやどこか安心する感覚。自分を殺そうとしてきた相手に対して安心も懐かしさもなにもないと思いながらも、この感覚を気のせいとは言い切れなかった。
裏の町
水族館の外に出るとそこには満点の星空と満月があった。夜だというのに月や星の光で明るいし、商店街の方からは人々の声が聞こえてくる。そんな光景を見ると、ここが私の居た汐光町とは全く違うということを思い知らされる。
「ほんとにここは私の知らない町なんだね……」
「やっぱり雰囲気とか違うのか?」
特に表情を変えずに問いかけてくる。
「うん。夜なのに昼みたいに明るいし。」
「昼みたいにか。それを言うならこの世界は夜しかないぞ。」
「え?」
当たり前のことを言うかのようにそんなことを言う。いやいやいや、昼がないってどういうことだ?
「随分不思議そうな顔をしてるな? まぁ表の昼に慣れているなら驚くのかもしれんな。だがすぐ慣れるさ。」
私をどこか諭すような言い方で語りかけてくる。慣れるとか言われても。
「なんで昼が来ないか考えたことないの?」
「特にないな。別に不便はないし。他になんか違うことでもあるか?」
当たり前のことをサラッと流すような受け答えをしてそんなことを聞いてくる。正直、釈然としない部分はあったが本人がどうでも良さそうなことを掘り下げる気も起きない。
「特にないかな。実際に見ないとわかんないことの方が多いかな。」
「なら商店街にでも行ってみるか?この辺はあまり人が寄り付かないから商店街の方に行けば住人の温度感とかわかるんじゃないか?」
「その方がいいかな。でもなんでここには人が寄り付かないの?営業してないにしてもこの辺は静かすぎない?」
水族館の見た目は表の町と何も変わらない。増設された研究所まで瓜二つだ。しかし、遠くから聞こえてくる人々の声が嘘みたいに水族館の周辺は静かだった。
ただ人がいないから静か、みたいな話ではない。草を薙ぐ風の音、遠くから聞こえるさざ波の音。自然の音が最低限鳴っている。そんな印象だった。
「前に町の人に聞いてみたんだ。なんでも近寄っちゃいけない気がするんだと。」
確かにこの辺の雰囲気は異質だ。だけど「近寄っちゃいけない気がする」なんてそこまで大げさなことを言うほどでもない。住民たちは何を感じているんだろうか?
「不思議なことも有るもんだね。」
「私としてはお前がこの町にいること自体、不思議で仕方がないがな。」
「そりゃそうだよね……」
そんな会話をしていると人の声がどんどん大きくなっていることに気づいた。
「ついたぞ。ここが商店街だ……といっても、場所はわかっているだろうから案内は必要もないんだろうが。」
私が知る商店街は夜には閉まっているため、中の明かりがついていることも、人がいっぱいいるのも違和感があった。だけど、子連れやカップル、制服を着た学生たち、他にもいろいろな人々が商店街の中を歩いている姿やいろんな店がそれぞれにぎわっているのを見ると、私の居た町の商店街と何も変わらないように感じた。
違うところがあるとすれば、道行く人々にヒレが生えていたり、ウロコが浮き出ていたり、人によっては触手が生えていたりした。レイの言っていた通り海の生物と人間が混ざったような見た目だ。
「どうだ? お前の知っている商店街と違うか?」
首を横に振る。
「そうか。ならお前がいた町もきっといい町だったんだろう。」
そうだ。私の居た町はいい場所だ。家族や友達が居て、大好きな水族館があって。そんな風に表の町に思いをはせていると、急に気持ちが沈んできてしまう。
レイはそれに気が付いたのか、レイは私の手を取ると「せっかく来たんだからいろいろまわるぞ。」と強引に手を引っ張るようにして、私を連れ出した。 意外と人の気持ちに敏感なのかもしれない。
「レイの旦那じゃねえか! そこの嬢ちゃんは……見かけねえ顔だな。」
商店街に入ったところで前の方から大きく快活な声が聞こえてきた。
「大将…あんまり大きい声で呼ばないでくれないか……」
魚屋の店長と思しき人物だった。スキンヘッドにハチマキを巻いている。袖をまくった腕にはウロコが浮き出ている。
「なんだよ。俺とレイの旦那の仲じゃねえか。それはそうとそこの嬢ちゃんは誰だ?」
「レイの旦那」だなんて呼ばれてるところを見るとなんだか笑えてくる。確か性格は男勝りな感じするけど。
「こいつは……その……」
不意に質問をされて静かに動揺する。こいつこういうところは不器用なのかよ。しょうがないから私が助け船を出してあげることにする。
「妹の円海といいます。」
「!! そうだ、うちの妹だ。」
一瞬「こいつマジか」みたいな顔をしたがすぐに察して返してくれた。
「そうだったのか! 確かに仲は良さそうだしな! いやあ姉妹ってのはいいな!」
正直見た目とか全然似ていないし無理があると思ったが何とかなった。この人結構いい加減なところがあるのかもしれない。レイの方は少しだけほっとした表情をしていた。
「ところでお二人さんは何をしにきたんだ?」
「レ……お姉ちゃんとこの辺を見て回ろうかとおもっていまして。」
「そうかそうか。円海ちゃん。この商店街はいいところだぞ?じっくり見てってくれや。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「おう! じゃあな!」
そうして魚屋を後にする。少しひやひやするところはあったが商店街ならではの人の温かさに触れることができ、懐かしさにも似た感情を覚えた。
「さっきは助かった。ありがとう。……お姉ちゃんと言ったのは納得いかないが。」
しおらしくさっきのお礼を言ってくる。お姉ちゃん呼びに対する悪態をつきながら。
「うるさいな。あの場ではそっちの方が自然だったでしょ?」
まぁ、ちょっとしたいたずら心があったのは否定しないけど。
「大丈夫だよ。それにしても、私が寂しそうにしてるのに気づいた割に意外と不器用なんだね。」
私がからかうようにいうとレイは少し不満げな顔をする。
「不器用じゃない。嘘がつけないだけだ。」
それを世間では不器用と言ったりするんだけど。そのあとも商店街を歩いていると一つの小さな書店が目に留まった。
「…本屋が気になるのか?」
「うん。特に本が好きなわけじゃないけど。」
「ならせっかくだし寄ってみるか。」
書店の中はいたって普通の書店だった。レジには耳の位置からヒレが生えている女性店員が接客をしていた。本棚には文庫本や参考書、絵本などが並んでいた。
いろいろ見て回ると歴史の参考書を見つけた。参考書をみて小学生の時のことを少しだけ思い出していた。何かの授業で汐光町の歴史や伝統を調べる機会があった。
その時に書店に行ってみたが、汐光町の歴史に関する本が無くてがっくりしていると店員さんから「汐光図書館だったらあるんじゃないかな。」という助言で汐光図書館へ向かうことにした。
汐光図書館は町で一つしか無い図書館でほしい本を探せば大体見つかるような結構大きい図書館だった。
図書館に向かい、司書の人に聞いてみると「汐光の歴史コーナー」に案内されて、そこでたくさんの過去に記録や伝承とかを見たことを憶えていた。
中でも、大正の町を巨大な影が覆ったと思ったら巨大なエイだったとか、そのエイに目を付けられるとさらわれるとか、そんな話を見た記憶があった。歴史は苦手だったけどその話は何となく頭に残っていたなあ。
そんなことを考えていると一つの可能性に気が付いた。ここが表の町と瓜二つの町であるならば、もちろん図書館があるはずだ。
その考えで行けば、「汐光の歴史コーナー」があり、裏の町に関する歴史があるのではないだろうか。外に出る手がかりはもちろん、もしかしたら表の町の海異についても何か知ることができるかもしれない。
私は急いでレイを探した。どうやらレイは書店員の人と話をしているようだ。
「いやだからこれから用事あるから……お茶とか行かないって…」
「いいじゃないですかあ。レイさんかっこいいから一緒に出掛けたいなあ。私そろそろバイト終わるし丁度いいじゃないですかあ。」
なんと女性の店員からナンパされているようだ。人気者なのはわかっていたけどあそこまでかよ!…じゃなくて。あまりの驚きに本来の目的を忘れるところだった。
「レイ! ちょっといい?」
「あれえレイさんその子誰?」
「レイの妹の円海です! ほらレイこっち!」
「おい円海引っ張るな!」
強引に引っ張って外に連れ出す。
「円海。どういうつもりだ。」
「あれでも助けてあげたつもりだよ!」
「む? そうか…それはありがとう。」
不満を言いつつもお礼はちゃんと言ってくれた。そういうところを見るとこいつはやっぱり律儀なんだなと感じる。ここで忘れかけていた要件をレイに伝える。
「そういえば図書館ってあるよね? そこに裏の町の歴史の本とかがあればここから出る手がかりとかあるかもしれない。」
「なるほどな。確かにそこなら何かあるかもしれないな、」
私の意見を聞いて納得した顔をしてそういった。この言い方だと図書館は割と盲点だったようだ。善は急げ、ということで早速行ってみることにした。
イサナの依頼
商店街を出ると気持ちのいいそよ風が吹いてきた。夜を感じる心地のいい風。
図書館は表の町と同じ、商店街から少し外れた位置にあるようだ。
私たちが図書館の方へ歩き出した瞬、。突然レイのほうから「ビービー!」というけたたましい音が聞こえてきた。どうやらレイの携帯からなっているらしい。レイは少し表情をしかめたがすぐに携帯を確認した。画面を見た瞬間、レイはため息をついた。
「驚かせたか? この音は「イサナ」が私たち自警団に依頼を連絡した音だ。つまりこれから依頼に行かなければならない。今来たのは海異の討伐依頼だ。町の方でダイオウイカの海異が出たらしい。」
「ええ? このタイミングで?」
これから手がかりを探すぞって時になんて間の悪い。レイの方も難しい顔で考えている。すると、遠くの方で大きいイカに追われている女性が見えた。
「……ねえレイ。そのダイオウイカってあれ?」
「は? そんな都合のいいことあるわけ…あれだな。」
あった。そんな都合のいいこと。
「てか人が襲われそうになってるじゃん! 早く助けに行かないと!」
私がそういうとレイは一瞬で私の隣からいなくなったかと思えばダイオウイカに向かって針状の刀で切りつけていた。私は急いで追われていた女性に駆け寄る。
「大丈夫ですか? ケガとかありませんか?」
「大丈夫ですよ! ケガとかありませんから!」
私の問いかけをそっくりコピペしたような言葉で元気いっぱいにそう答えたかと思えばげんきげんきーと言わんばかりにポーズをとる。
20代くらいのワンピースをきた若い女性だった。
手にはトートバッグを持っている。今さっきまで襲われていたとは思えないくらい元気そうだ。女性の安否を確認していると後ろの方から何かをすさまじい斬撃音が聞こえてきた。かと思えば今度はダイオウイカのものと思しき叫び声が聞こえてくる。
「こっちは終わった。大きさの割にあっけない奴だった。」
ダイオウイカを倒したのかレイが私のもとに戻ってきた。
「あなたが襲われていた人か。大丈夫か?」
レイは紳士的に女性に話しかける。初対面で刀を突き立ててきた奴と同一人物には思えない。
「大丈夫ですよ。あなたたちが助けてくださいましたから。」
さっきとは打って変わって冷静に答える。そういえばよく見たらこの人ヒレも触手も生えてなければウロコが浮き出てもいない。いったいなんの海の生物と合わさった人なんだろうか。
「そうだ。お二人のお名前は何て言うんですか? 私は澪って言います。ぜひお礼をさせてください。」
正直お礼とかどうでもいいから早く図書館に行きたい。ここは良心が少し痛むが断ることにしよう。
「すみません…ちょっと急いでいて。お気持ちだけ頂いておきます。」
「そうはいきません! 助けていただいたのですから!」
「円海。ここは名乗っておこう。この人は一歩もひかないつもりだ。」
観念したようにレイはそう言う。レイの表情からは諦めが見て取れた。
「……水凪 円海です。」
「私はレイだ。」
「円海さんとレイさんっていうんですね! ほんとはどこかのお店でお礼をしたいのですが急いでるんですよね……そうだ!」
そういいながら持っていたカバンの中を探り始めると何かを取り出し、私とレイに差し出してきた。それはどうやらお守りのようだ
「実は私、山のふもとにある「汐光神社」で巫女をやっているんです。これはそこのお守り
なんですよ。」
「あそこの神社の巫女さんだったのか。」
レイは納得したようにお守りを受け取る。一方、私の方はどこか釈然としなかった。表の
町に汐光神社なんてあっただろうか?
生まれてからずっと汐光町で暮らしてきたがそんな神社があった覚えがなかった。もしかしたらただ単に忘れているだけかもしれないが。
「もし何かあったら山のふもとへ行ってみるといいかもしれませんよ。では私はこれで。助けていただきありがとうございました!」
そういうと澪さんは山の方へと足早に消えていった。
「そういえば依頼は?」
「やはりあのダイオウイカが討伐対象だった。あのイカを倒してすぐにイサナから依頼完
了の連絡が届いたよ。」
すぐに連絡が届いた? どこかでずっと監視でもしているんだろうか。それってなんか怖いな。
「それより図書館に行くんだろう?それなら早くいこう。いつ閉館するかわからない。」
「ああそうだったね。早く行こうか。」
危うく本来の目的を忘れるところだった。レイに言われなければそのまま商店街に戻っていただろう。そうして今度こそ私たちは図書館へ向かった。
これから起こることなんて知らずに。
謎の本
しばらく歩くと図書館についた。図書館は私が知っている馴染みのある図書館の姿をしていた。だけど中に入った瞬間に私は唖然とした。内装が私の知っている表の町の図書館とは全く別だったのだ。
「ここにお前の言う「歴史コーナー」があるんだな?」
「そのはずなんだけど内装が表の図書館と全然違くて……」
「そうか。」
レイはそういうと一瞬で近くのカウンターに飛んで行ったかと思えば一瞬で戻ってきた。
「歴史コーナーはあっちにあるらしいぞ。」
「はやっ」
あまりにも速すぎるスピードでレイがこの図書館に歴史コーナーがあることを突き止めてくれた。レイはそのまま私の手を取ると私を半ば引っ張るように連れていってくれた。
「ここが歴史コーナーだ。ここに何かあるといいが……」
「そうだね。とりあえずいろいろ見てみようか。」
私とレイは手分けして本を見てみることにした。本棚から本を取って中を見てみる。中身は表の図書館で見たことがあるような内容ばかりだった。私が小学生の時に見たエイの記録や過去の汐光町の歴史書、町の名前の由来など手がかりになりそうなものは見つからなかった。
「他に何かないのかなあ。」
そんなことを呟きながら本棚をうろうろしていた。すると本棚の端っこに一つの古びた本があるのを見つけた。この本は他の本と違って何かを感じさせる雰囲気を漂わせている。
タイトルは書いておらず、まっさらな表紙。本を開いてみると一ページ目に「けん・じょ・きろ・」と書いてあった。ところどころ文字が消えていて読めないが恐らく「けんきゅうじょのきろく」とかだろう。他に当てはまりそうな字もないし。
だけどどうして研究所の記録がこんなところにあるんだろうか? さらにページをめくると今度は真っ黒なページがあった。
しかもその黒は元々黒いページだったわけでもなければ、黒く塗りつぶしたわけでもなく、焼け焦げたような黒であった。ページをめくって続きをみてもすべて焦げた黒で読めたページは最初のページだけだった。
「何か見つけたか? こっちは手がかりになりそうなものは何もなかった。」
「うわびっくりした! いきなり話しかけないでよ!」
「む? 驚かせたか。それはすまなかった。」
本に夢中になっていたせいでびっくりしてしまった。律儀に謝ってくるのはレイらしい。
「この本見て。なんかすごい変な本があったの。」
そういいレイにさっき見つけた本を見せる。
「なんだこの本は? 最初の文字以外読めないじゃないか。」
「そうだよね。でもなんかすごい目に入ったから何かあるのかと思って。多分『けんきゅうじょのきろく』って書いてあるんだろうけど。」
私としては確かに普通じゃない気配を感じたつもりだったが、なんも読めないんじゃ結局なんも見つかっていないのと同じだ。
「それにしても変だな。」
「やっぱりそうだよね。全然読めないし。」
「そうじゃなくてだな。この町に研究所なんてないんだ。」
「え?」
レイの発言に目を見開く。レイは今、この町に研究所は無いと言った。しかし表の町には研究所があり、その研究所は水族館付属の鯨井さんが責任者だ。この世界に鯨井さんがいないとはいえ、外から見る限りじゃ研究所の施設は見えたし、研究所の設備くらいはあるんじゃなかろうか。
「なんだ? そんな目を開いて。なにか変なことでも言ったか?」
何もわからないといった様子で私に問いかける。
「……表の町だと研究所があったの。しかも水族館に付属して。ねえレイ。レイたちの拠点の水族館に研究所みたいな建物とか部屋ってなかった?」
「いや…初めて水族館に来た時からそんなものは見ていないが……」
そんなものないと言うが、正直、外から施設が見えている以上、まったく存在しないなんてことはないはずだ。
「じゃあレイ。水族館に帰ったらみんなで探そう! 絶対研究所の建物はあるよ! その本だって研究所のことが書いてあったみたいだし、絶対何かある!」
「そうか…なら一回戻って探してみるか。刃はいなくても真子ならいるだろう。本は借りていこう。」
そうして私たちは本棚から離れてカウンターへ向かう。そのときだった。
「ズドン!」
外で何かが落ちてくるような大きな音が鳴り響いた。それと同時に
「ぎゃああああ!」
と人々の叫ぶ声がする。私たちは顔を見合わせる。
「ねえレイ……今の音何?」
「わからん……だが、とても嫌な気配がする。」
「私も……」
とてつもなく嫌な予感と気配がした。だけど図書館の出入り口は一つ。そこからしか出ることができない。だから私たちが感じている気配の正体からは避けることができない。
私とレイは覚悟を決めると唯一の出入り口から外に出た。
黒い影
外に出ると何もなかった。だけど私たちが来るまでにはそれなりに賑わっていた人だかりが完全に無くなり、周囲は水族館の周辺とはまた違った異質な雰囲気をまとっていた。
明らかにまだ何かいる。目に見えていないだけで確実にそれはいた。レイも何者かの気配を感じ、刀を構える。
「円海、気をつけろ、確実に何かいる。それも只者じゃない。この町のどの存在とも似つかない、正体不明の気配だ。」
レイがそう言い終わると同時に私の耳を風切り音が横切った。その瞬間「それ」は私の背後に一瞬で現れた。
「危ない!」
レイがそう叫びながら刀で「それ」をはじき返す。
私とレイはそこでようやく「それ」の姿を見る。
全身を真っ黒い服で身を包み、上半身や腕、足には鋼鉄の防具を、背中には漆黒のマントを身に着け、頭には鋼鉄の機械のようなヘルメットをかぶって顔を隠している。
そして両手には刀が握りしめられていた。さしずめ黒い剣士だ。
はじき返された黒い剣士は力が抜けたようにだらんとしながらこちらに顔を向けると右手の刀をこちらに向けて、
「1………タイショウ……シュウセイ……ケス」
そうつぶやいたかと思えばレイに急接近し刀で切りかかった。レイも負けじと針状の刀で応戦する。
「お前は何者だ! なぜ襲いかかってくる!」
レイの問いかけに黒い剣士は答えずに二振りの刀で容赦なく切りかかり続ける。
「くっ……!こいつ、思っていた以上の強敵だな! はあ!」
レイが刀を構え黒い剣士に切りかかろうとした。だが黒い剣士は一瞬のうちに姿を消した。かと思えばまた私の方へ切りかかろうとする。レイはすぐさま攻撃に反応して黒い剣士の攻撃から私を守ってくれた。
「大丈夫か!」
レイが振り返って心配をしてくれる。
「あ、ありがとう、レイ……」
レイにお礼を言う。はじき返された黒い剣士はまたうなだれながらこちらの様子をうかがっている。
「大丈夫だ。円海は私が守り切る…!」
そう言った瞬間だった。
「マ……ドカ……マドカ! マドカマドカマドカ! グアアアアア!」
突然私の名前を連呼し始めたかと思えば苦しむように暴れ始めた。ひとしきり苦しみ終えた「それ」はこちらを一瞥するとゆっくりとこちらに向かって歩き始めた。
「オマエラ……ココデ……ケス!」
そういいながらだんだん速度を速める。このままではまた切りかかられてしまう。レイが刀を構える。その瞬間。
「バリン!」
と音が聞こえたかと思えば黒い剣士の後ろから何者かが腕で胸を貫いた。その腕には見たことのあるヒレが生えていた。
「やっぱり出やがったな! この真っ黒野郎!」
「刃! なぜここに!」
レイがそう叫んだと同時に鱶崎さんは腕を黒い剣士から引き抜く。
「はん! 結構渾身の一撃を叩き込んだつもりだったんだがな。やっぱりお前はタダモンじゃねえよ!」
そういうと鱶崎さんはそのヒレで黒い剣士に切りかかる。
「レイ! そのガキ連れて逃げろ! どうして俺がここにいるかなんて今はどうでもいい!」
鱶崎さんが黒い剣士と応戦しながらレイに叫ぶ。
「だが刃! お前はどうするんだ!」
「こんなやつ適当にいなしてさっさと帰る! お前はそのガキを連れて帰ることを優先しろ!」
「…わかった。刃、死ぬなよ。」
「こんなとこじゃ死にたくても死ねねえよ!」
鱶崎さんはさらに猛攻を仕掛ける。唖然としているとレイは私を雑に抱きかかえる。
「うわ! ちょっとレイ!」
「戻るぞ円海! 今は緊急事態だ! お前の文句は聞いてられん!」
そういいながら建物の屋根を飛び越えるようにしてとんでもないスピードで私を運んで行った。
あれはいったい何だったのだろうか。いきなり私たちを襲ってきたかと思えばいきなり苦しみ始めた 私はレイに抱えられながら鱶崎さんの無事を祈ることしかできなかった。
二話目「裏の町、革ジャンとチャイナドレス それと黒い影」
はじめましての方も、二回目の方も、こんにちは。 深水 優です。
設定開示回。それぞれの色や味を持ったキャラクターたちが裏の町についての話を進めます。
レイと円海の絡みと刃のキャラは個人的にお気に入りです。
刃のあの荒っぽい感じ、まだ何とも言えないけどなにか裏みたいなものがありそうでとてもエロ・・・良いですよね。
今回も読んでいただきありがとうございました。
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三話目は7月29日 19:30分投稿の予定です。 ぜひ楽しみにしていてください!




