㉘ 由理子と再会
「ところで、由理子さんをお訪ねという事ですが……。」
サン・ジェルマンが、脱線した話を元に戻す。
「……彼女は今ちょうど鷹志君と、コンビニに買い物に出かけてまして……多分、少ししたら戻りますよ。」
「そうですか。ならばコチラのカフェで、それまで待たせていただいても良いかな?」
「どうぞ、どうぞ。珈琲と紅茶、どちらがお好みですか?」
「……ホットミルクはあるかな?」
「はい。では、ただ今準備致しますから、そちらにお掛けになってお待ち下さい。」
「うむ。頼んだぞ。」
アヌビスはそう言うと、眺めのイイ窓辺の席に陣取って座った。
白い麻呂眉の黒毛の柴犬が、未来チックなツナギを着て、レストランのイスに収まり、品良くカップのホットミルクを飲む姿は、可愛らしいこと、この上ない光景だった。
やがて、買い物を終えた二人が、エレベーターで上がって来た。
「あらっ。」
犬王を見た由理子の開口一番は、ソレだった。
「えへへ、来ちゃった。」
先程までの威厳は何処へやら。
犬王は舌を出して、ハァハァ言いながら、尻尾をブンブン振る、良く懐いた小犬のようになっていた。
彼は、矢も盾もたまらず、由理子の元に駆け寄り、彼女に頭やら顎の下やらを撫でて貰った。
流石に……というか、やっとのことで、仰向けに寝転がって腹を出すことだけは、かろうじて我慢したのだった。
「おお、よしよし、元気にしてたかい?」
由理子の問いかけも、もはや仔犬に対するモノと、大差無かった。
「もう吾輩は、会いたくて、会いたくて……。」
「何だか"20年後の西野カナ"みたいに言うのね?」
「おお、その名なら知っておるぞ。吾輩も由理子と話が合うように、日本の流行歌は、一通り学習済みだからな。確かマネージャーが彼氏で……。」
「……やめて!恐ろしいネタバレを食らわさないで!」
「えっ?」
「私は未来の情報から、気に入った曲を拾って聴いているだけなんだから!」
「おやおや、コレは失礼しました。有名なスキャンダルだったのでつい……。」
「もう、気をつけてよね?ところで、今日は突然どうしたの?何か困り事でも?」
「いやいや、だからもう、ただ会いたくて……。」
「……あのぉ〜、そのクダリ、まだヤリますか?」
杉浦鷹志が話に割って入って来た。
「誰じゃあ、お主は?吾輩と由理子の話に割り込む、狼藉者めが。」
「このヒトは、私の大切なパートナーの杉浦鷹志サマよ。アヌビス君、失礼な事を言わないでよね!」




