㉖ 犬王の休日
その日から一週間、犬王アヌビスは休暇を取った。
例え王様と言えども、働き方改革じゃ!
あの下等なハダカ猿族の世界にさえ、そういう波が来ているのだ。
もっと高次元の存在の、我等がやらずしてどうするのだ?などと屁理屈をこねて、部下どもに対して押し切ったのだった。
休暇の目的は、すっかりお気に召した……というか、むしろ虜になってしまった、真田由理子に再会するためだった。
彼等犬族は、猫族と同様に、他の並行宇宙を旅する技術を持っていた。それは、単純なタイムトラベルなどよりも、遥かに高度なテクノロジーだった。
2つの種族は、遥か昔に協定を結び、その技術を門外不出とした。特に好戦的な性質を有する、ハダカ猿族・爬虫類族・鳥族たちには、絶対教えてはならない、とされている。
ヤツラはなんでもすぐに、軍事転用してしまう。
それに加えて、罪深い征服欲にまみれた精神を持っているのだ。
だから、彼等とは、くれぐれも距離を取って付き合うべし。と、先祖代々言い伝えられて来たのだった。
しかし、由理子は違った。
アヌビスには、多少テレパシーの嗜みがあったのだが、それにより彼女の裏表の無い純真な魂に触れて、いたく感動したのだった……そして首ったけになってしまったのである。
彼は近習の者も付けず、早速お忍びで、国王専用の宇宙船に乗り込み、由理子の居場所をサーチした。
彼はこんな事もあろうかと……というか確信犯的に、由理子が帰る折り、その赤い髪に、蚤型時空発信機を付けておいたのである。まったく、時空を股にかけた、とんだストーカーも居たものである。
犬王は由理子の現在地の座標を確認すると、すぐにコンピュータに数値を入力し、宇宙船を出発させたのだった。
因みに犬王の宇宙船のスタイルは、いかにもUFOと言った、プレーンなものだった。
すなわちそれは、所謂、銀色の船体の、アダムスキー型なのであった。
実のところアヌビスは、今まで何度もお忍びで、ハダカ猿族の惑星を訪れていたのである。
だからちょくちょく、その宇宙船は現地で目撃されていたのだった。
あっと言う間に、彼女の座標を確定すると、アヌビスは直ちにUFOを発進させた。
船内コンピュータの分析によると、現場には障害物が多い事が予測されたので、座標より10数m直下に修正して、時空転位の出口とした。
つまり、あの猫王子のミケーネより、スマートな操船をした訳である……いや、同じ技術を持つ彼にも、当然、同じ事が出来たはずだったのだか……。




