㉔ 魔女の天誅
確かに彼女の見た目は、今日も小娘だった。
冬物のセーラー服の上にトレンチコートを羽織り、マフラーを"フリーレン巻き"にしている。
見かけは"永遠の17歳"。実年齢はそれより、10年ほど経過しているだろうか。しかし、それ以上に、数々の並行宇宙での経験を重ねたせいで、精神的には、今やかなり老成していた。
それはあの"シュタルク"にババア呼ばわりされるレベルに達していたと言ってるも良いくらいだった。
無論、隣に居るサン・ジェルマンは、既にそれ以上の経験を積んでいるのだが……。
「私がアナタをどうするのか、ですって?こうするのよ。」
彼女はいきなり、チカラを使ってゲートルを空中に持ち上げた。
「ほう、面白いな。サイコキネシスですか?でも、惜しいかな、チカラにムラが有りますな。」
ゲートルは余裕の笑みだった。
彼は空中で宙づりになったまま、周りに落ちていた小石やら瓦礫やらを、雪子に向かって飛ばし始めた。
もちろん、そんなモノは雪子の敵では無い。全ての石つぶては空中で止められ、向きを変えられた。
だが、ソレらは敵に向かって飛んで行かず、その場にバラバラと落ちてしまった。
ゲートルは悠々と地面に舞い降りる。
「どうやらアナタの闘いぶりには、エレガントさが足りないようだ。」
「言うわね。じゃあ、こういうのは、お好みかしら?」
彼女がそう言うと、空が一気に暗くなった。
やがて辺りに、ゴロゴロと不穏な音が響き出したのだ。
「コレはつい先日、とある女神様に教えていただいたワザよ。」
雪子がそう言うや否や、目の前のゲートルに、強烈な稲妻が炸裂した!
「まあ、雷にエレガントもクソも無いでしょうけどね?」
小首を傾げて、黒焦げになったゲートルだったモノを眺めながら、雪子はちょっとダーティーなセリフを吐くのだった。
「どうです。少しはスッキリしましたか?」
と彼女に尋ねるサン・ジェルマン。
「まあね。留飲を下げるまでは行かないけど、ある程度、納得したわ。どうやらこれで、ヒトラー殺しの旅は、辞められそうよ。」
「それは良かった……おっと。」
彼は異変に気づき、背中に隠し持っていたオリハルコンの剣を出して、倒れているゲートルの首を切り離した。
「再生しかかってましたね、彼。」
雪子はそう言いながら、その生首に向けて再度、トドメの稲妻を落とした。それはヒトの皮が焦げて剥がれ、中身のトカゲの鱗が出かかっていたのだった。
「ここまでやらないと、死なないという事は……。」
「我々と、同類と見て良いでしょうな。」
「……だから、あんなに余裕タップリだったのね?」




