Episode 7
あれから、仕事終わりにも本を借りに来るようになった。
休憩中に感想を言い合ったり、随分と仲良くなれた気がする。
「東雲さん、お疲れ様」
優しい微笑みと共に、コーヒーが差し出される。
「⋯ありがとうございます⋯」
受け取ったコーヒーを一口飲んで、笑みをこぼした。
彼に対する想いは、日に日に増している。
「⋯佐藤さん、この小説⋯凄く面白かったです⋯!」
「良かった!いつもと雰囲気違うから、少し心配だったんだけど⋯」
「こういう雰囲気の作品も、凄く好きです⋯!⋯自分からは、あまり読まない気はしますが⋯」
「東雲さん、正直だよね」
「っ⋯すみません⋯!」
「謝らないで!変に誤魔化したり、話を合わせられるより⋯正直に言ってくれた方が良いから」
「⋯はい⋯」
「自分からは読まないけど、好きな雰囲気の作品ってあるよね⋯」
「⋯そう、ですね⋯矛盾してる気もしますが⋯」
顔を見合わせて、苦笑する。
こうした何気ない会話が、私にとっては宝物みたいに輝いていた。
「⋯そういえば⋯前に東雲さんが好きだって言ってた小説⋯映画化されてるんだね」
「えっ⋯?そうなんですか?」
「この前、映画館にポスター貼ってあったよ」
スマホで検索して、画面を見せてくれる。
「ほら⋯今月末まで上映してるって」
「⋯知りませんでした⋯教えてくれて、ありがとうございます⋯」
「どういたしまして」
優しく微笑む彼に、また好きが募っていく。
「⋯あ、あの⋯もし良かったら⋯一緒に見に行きませんか?」
「⋯いいよ、今週末とか⋯どうかな?」
「っ⋯大丈夫です⋯!今週末、楽しみにしてます!」
「僕も楽しみ」
連絡先を交換して、帰路につく。
今まで他人と距離を取ってきたのに⋯
普通だとか、普通じゃないとか⋯
考える間もなく、誘ってしまった。
不思議と、後悔や不安はない。
きっと自分が思っている以上に、彼を求めているのだと⋯
そう、自覚した。




