Episode 6
一度彼を近くに感じてしまうと、もっと近付きたいと欲が出てしまう。
「⋯今日は、来ないよね⋯」
思わずこぼれた言葉に、驚いて口を塞ぐ。
キョロキョロと辺りを見回して、ホッと息をついた。
「こんにちは、東雲さん」
「っ⋯!さ、佐藤さん⋯こんにちは⋯」
「ごめんなさい、びっくりさせちゃいましたか?」
「⋯いえ⋯今日も来てくれたんですね⋯」
「仕事が早く終わったので、何か借りて帰ろうかなと⋯」
彼の微笑みに、うるさいくらい心臓が鳴っている。
「またオススメ教えて貰えますか?」
「大丈夫ですよ」
微笑みを返し、一緒に本棚へ向かう。
「⋯佐藤さんは、ミステリー以外も読まれるんですか?」
「読みますよ」
優しく微笑む彼に、一冊の小説を差し出す。
「⋯だったら⋯これ、オススメです⋯」
「ありがとうございます!この作者さんの小説は読んだことあるんですけど、これは読んでなかったです」
「⋯私は、この方の小説⋯他は読んだことないです⋯」
「そうなんですか?⋯じゃあ、これ⋯良かったら読んでみてください」
「⋯ありがとう、ございます⋯」
彼の差し出す小説を受け取り、笑みがこぼれた。
カウンターで貸し出し手続きを行う。
嬉しそうに立ち去る後ろ姿を見つめ、自分の中に今まで感じた事のない欲を感じた。




