Episode 5
「お疲れ様でした」
ロビーの隅の席に座り、ホッと息をつく。
いつものコーヒーが甘く感じて、昨日借りた本を見つめた。
「東雲さん、こんばんは」
「っ⋯!?こ、こんばんは⋯あ、あの⋯どうして⋯」
「昨日オススメしてもらった小説の感想を話したくて⋯仕事終わりに来ちゃいました」
「っ⋯!じゃなくて⋯名前⋯」
「ああ、名札を見て⋯いきなり東雲さんなんて、馴れ馴れしいですよね⋯」
「違っ⋯!⋯私、ちゃんと名乗ってなかったので⋯びっくりしただけで⋯」
「⋯僕も、ちゃんと名乗ってはいなかったですね⋯改めて、佐藤慧です」
「あっ⋯東雲美夜、です⋯」
優しい微笑みと共に差し出された手を、そっと握る。
「昨日、東雲さんがオススメしてくれた小説⋯凄く面白かったです!」
「⋯良かったです⋯!私も、佐藤さんがオススメしてくれた小説⋯凄く好きでした⋯!」
「ホントですか!?良かったです」
嬉しそうに笑う彼に、胸が音を立てる。
「あの⋯もし良かったら、またオススメし合いませんか?」
「っ⋯!⋯はい、是非⋯」
不意に彼が欠伸をして、恥ずかしそうに微笑んだ。
「っ⋯すみません⋯昨日、つい夜ふかししちゃって⋯」
「っ⋯いえ⋯」
言葉に詰まり、俯いてしまう。
そんな私に、彼は優しく言葉を紡いでくれた。
暫く小説の話で盛り上がり、閉館と共に帰路につく。
何故か、彼の全てに惹かれてしまう自分がいた。




