Episode 11
「オススメの吸血鬼映画、教えてください⋯!」
自分の事を知りたくて、軽く放った一言。
この言葉をキッカケに、彼の部屋で硬くなっていた。
「ごめんね、家に来てもらって⋯」
「いえ⋯たくさん見せてもらえて、楽しかったです⋯」
彼の持っているDVDをいくつか見終えて、頂いた紅茶を口に運ぶ。
ホラーな吸血鬼映画を想像していたのに、見せてもらったのはどれも吸血鬼のラブストーリーばかり。
正直、映画どころではなかった。
「映画、どうだった?」
「⋯正直、あまり見ないジャンルなので⋯よくわからない、です⋯」
「そっかぁ⋯」
「ごめんなさい⋯私からお願いしたのに⋯」
「そんなの気にしなくて良いよ」
優しく微笑む彼に、緊張が高まる。
「⋯佐藤さんは⋯吸血鬼が実在したら⋯映画みたいに恋したいですか?」
「うーん⋯恋って、したいと思ってするものじゃない気がするけど⋯東雲さんみたいに、優しくて趣味の合う人なら⋯」
「えっ⋯?」
「っ⋯!ごめん、いきなり東雲さんみたいに⋯なんて、嫌だったよね⋯?」
「っ⋯違います⋯!嫌、とかじゃなくて⋯」
「⋯良かった⋯僕、東雲さんと居ると⋯凄く楽しくて⋯」
「っ⋯私も⋯楽しい、です⋯」
嬉しそうな瞳を見つめる。
「っ⋯!」
今までとは違う、渇きのような波が押し寄せてきた。
慌てて視線を落とす。
「⋯東雲さん⋯」
「っ⋯はい⋯」
「⋯僕、恋とかよくわからないんだけど⋯東雲さんとは、これからも一緒に居たい⋯これって、恋⋯なのかな?」
「っ⋯!わ、わかりません⋯私⋯東雲さんが初恋なので⋯」
自分の発した、初恋という言葉に慌てて口を塞ぐ。
「⋯初めて、一緒に映画を観た時⋯東雲さん、好きって言ったよね?」
「っ⋯それは⋯」
「席だって言ってたけど⋯本当は僕の事だったって思ったら⋯自惚れかな?」
何も言えずに俯く。
「⋯僕、あの好きって言葉を聞いて⋯ドキッとしちゃったんだよね⋯だから、自惚れてもいい?」
黙ったまま、そっと頷いた。
私には、それが精一杯だったから。
クスッと笑う声が聞こえ、思わず顔をあげる。
「東雲さん、顔真っ赤⋯」
からかうような言葉にも、優しさが滲んでいた。




