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二度目の人生では妃候補になりません  作者: 秋月 もみじ


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14/30

第14話 妨害者と呼ばれて


告発状の文字は違っても、私を黙らせる理屈は前の人生と同じだった。


薬草院へ戻った翌朝、セルヴァン院長の机に封を切られた書状が置かれていた。ヴァレリア・エルンスト侯爵夫人は、私が妃候補への推薦を辞退したことで王宮と基金へ遺恨を抱き、慈善事業の信用を傷つけるため検体へ灰紫根を混ぜた疑いがあると訴えていた。


王妃毒害未遂という言葉はない。


それなのに、指が冷える。前の人生で聞かされた文言も、私の動機を先に作り、見つけた薬の方を疑わせるものだった。候補としての期待に応えられなかった令嬢。注意を引きたがる不安定な娘。今度は推薦を辞退したことが、同じ位置へ置かれている。


「座りなさい、オフィーリア助手」


院長の声で、私は立ったままだったことに気づいた。椅子へ腰を下ろしても、背中は硬い。


卓上の告発状を開くために使った小刀が、まだ書類の脇にある。銀の刃は小さく、害をなす物ではないのに、手を伸ばして遠ざけることができなかった。


ノエルが告発状を読み終え、別の書類束を机へ並べた。


「告発は、二地点の検体についてオフィーリア助手が接触したことを根拠にしています。しかし、第一ロットは院長、私、リュシー、配布係の立会いで未開封から採取。第二ロットは施療所薬師と書記を加えた立会いで採取しています」


「立会人を買収したと主張なさるでしょうか」


私の声は、自分で聞いても薄かった。


「主張はできます。証明できるかは別です」


院長が厳しく言った。


「そもそも、事故を報告した者の性格を責める書状で、汚染薬の搬入経路は一行も説明されていません。これは鑑定に対する反論ではなく、あなたを外すための訴えです」


責められているのが私だけではないと分かる言葉だった。院長は、自分が止めた薬と、自分が署名した記録を守るためにも怒っている。


「私が、説明しなければなりません」


「当然、説明の機会は求めます。ただし、一人で侯爵夫人の前へ出る必要はありません」


院長は告発状を私の目の前から外し、別の紙を置いた。そこには第一の汚染を発見した後、停止した箱の番号が各施療所へ通知された日時、第二の箱が照会された日時が並んでいる。


「こちらを見なさい。あなたが薬へ触れたから事故が広がったのではありません。あなたが手順を提案したから、別の場所でも使われる前に止まったのです」


告発状の文章ばかりを読んでいると、そこに記された私が本物の私に思えてくる。院長が差し出した日時の並びは、短いけれど私が実際にしたことを示していた。


ノエルは、告発状と同じ卓に二部の封印採取記録を置いた。各人の署名、箱番号、検体の保管先、送付時刻。私が複写帳を提案した後に送った通知の写しもある。第一の箱を見つけた時点から、私たちは一つずつ手間をかけてきた。


その手間が、今、私を白塔へ送らせない壁になっている。


「私の言葉で説明します」


私はもう一度言った。今度は、声を机の上へ置けた気がした。


「そのために、提出する順序を確認させてください。最初に採取記録、次に第一と第二の箱の共通番号、最後に検品免除申請書がよいと思います。私が辞退した理由は、汚染経路の説明にはなりません」


ノエルが静かに頷いた。


「同意します。あなたが説明する部分と、私が管理責任者として説明する部分を分けましょう。検体保全は私の職務です。あなたに証拠保管の責任まで負わせません」


信じています、と言われるより、その切り分けの方が頼もしかった。



昼過ぎ、私は一度白樺小邸へ戻った。


ミナは私の顔を見るなり、用意していた昼食を温め直そうとしたが、私が外套を脱ぐ前に椅子へ座ってしまうと、何も言わず温かい水を運んできた。


「何かございましたか」


「告発されたの。私が、薬へ灰紫根を混ぜたのだと」


ミナの手から水差しの蓋が鳴った。


「そのようなこと、お嬢様がなさるはずがありません」


まっすぐな怒りは嬉しい。けれど、前の人生でも私を信じてくれる人はいたのかもしれない。信じる声が、手続きの外で止まってしまえば届かない。


「ありがとう。でも、信じてもらうだけでは足りないの。今回は記録がある。私が箱を開ける前から、皆が見ていてくださった」


言葉にするうち、震えていた手が少し落ち着いた。


「小邸へ警護の方が来るかもしれないわ。あなたに不便を掛けるけれど」


「不便で済むなら、いくらでも。お嬢様がここへ帰っていらっしゃることの方が大切です」


ミナがカップへ湯を注いだ。香りのない湯が喉を通る。この家では、差し出された飲み物を自分で受け取るか決められる。


「この家へ移っておいて、よかったわ」


思わず口にすると、ミナは返事の代わりに窓の掛け金を確かめた。公爵邸でも守られただろう。だが、母の棚と、自分で選んだ鍵のある部屋で告発を受け止めることには意味がある。私は候補居館へ連れ戻される者ではなく、勤務先へ戻って説明する助手なのだ。


ミナは食事を少しだけ皿に載せた。食欲はなかったが、査問に立つなら倒れてはいけないと考え、スープを飲む。以前なら誰かの言うまま口にした薬が、今は自分で選んだ食事へ変わっていた。



夕方、薬草院へ戻ると、王妃府の印を持つ使者が到着していた。


灰色の制服を着た使者は、院長とノエルの前で任務状を読み上げる。


「王妃府法務室は、施療基金から提出された告発状および薬草院からの緊急事故報告を受領しました。汚染薬の供給経路と、理事長が選定委員を兼ねることによる利益相反の有無を調査するため、法務官を派遣いたします」


利益相反。


その言葉を聞いて、侯爵夫人の二つの顔が初めて同じ書面の上に置かれたのだと分かった。薬を配る権限と、私やセシリアの立場を評価する権限。その両方を持つ人が、なぜ私の推薦辞退を汚染告発の理由にしたのか。


使者は続けて、法務官が受領するものを読み上げた。二つの封印検体、検品免除申請書、薬草院の事故報告、施療所の立会い記録、そして侯爵夫人自身の告発状。私は、自分の記憶がその一覧に入っていないことに気づいた。


それでよい。私が一度死んだことを証明できなくても、今この季節に届けられた危険は、現世の記録で止められる。


「調査の間、告発対象者への接触制限も申請できます」


ノエルが静かに補足した。


「選ぶのはあなたです。勤務を続けながら警護を付ける方法と、法務官の指定する滞在所へ移る方法があります」


白百合宮や白塔のように、守る名目で移されるのではない。選べると明示されている。


「白樺小邸から通います。警護の手配をお願いいたします。私は薬草院で、必要な説明を続けたいのです」


院長が頷き、使者がその希望を書き留めた。


使者が封書を院長へ渡す。派遣法務官の名は、アマーリエ・ローデン。


到着は三日後。調査対象には、私の行為だけではなく、基金理事長の申請と選定委員としての接触記録も含まれていた。


私は告発状を畳み、もう小刀の刃から目を逸らさなかった。


一度折った紙の角は少し歪み、完璧な形には戻らない。それでも記録としては十分だった。私はそれを証拠箱へ収める係へ、自分の手で渡した。


「三日後、私も法務官へ申し上げます」


声に出すと、廊下の冷たい空気が肺へ入った。恐怖はまだ身体にある。だが、恐怖のために黙れば、侯爵夫人が書いた動機だけが私の姿として残る。


リュシーが複写帳を抱え、私へ一礼した。


「中央記録庫から受領印が戻っています。二地点の控えは、もうどちらか一方だけでは消せません」


私はその印を確かめた。黒い文字は華やかではなかったが、候補推薦の封蝋より、ずっと強く私の立つ場所を示していた。

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