表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/81

武田軍を爆撃する

赤備きの殞落、岩王の鉄壁


風魔小太郎が重傷を負って敗退した知らせが届いた時、武田信玄は大軍の中軍本営に鎮座していた。


「甲斐の虎」と謳われるこの名将は驚いた様子もなく、ただゆっくりと手に持つ軍配団扇を下ろし、幕下の諸将を見渡した。山本勘助、馬場信春、山県昌景、高坂昌信……いずれも百戦錬磨の勇将たちだが、この時は皆顔色を曇らせていた。


「風魔一族、手柄を逸したか」信玄の声は穏やかながら、疑いを挟ませぬ威厳を帯びていた。「北条氏康の忍者部隊は大打撃を受け、小太郎に至っては命の危機に迫った。諸君はどう見る?」


山県昌景が真っ先に立ち上がった。赤備騎馬隊の統率者である彼の瞳には、好戦の光が宿っていた。「主公、忍者はそもそも正面戦に長けぬ。暗殺が叶わぬなら、堂々と攻め落とせ!我が赤備が先鋒となり、三日のうちに霊矩関を落としてみせる!」


「昌景殿、相手を甘く見過ぎだ」山本勘助は杖をつき、ゆっくりと言った。「風魔小太郎の実力は我らも知る。彼を重傷に追い込める相手は、並の守備兵ではない。報せによれば、敵には飛行可能な要塞が存在し、空から覆い尽くす攻撃を仕掛けてくる……これは常識的な戦争の枠を超えている」


馬場信春が思案して述べた。「主公、我が軍は十六万の大勢を誇るものの、遠征で疲弊し補給線も長い。霊矩関は地形が険要で、強攻すれば多大な損害を被る恐れがある。迂回を考えては如何か?」


「迂回?」信玄は軽く笑い、地図を広げた。「璃月の地形を見よ。北に絶雲間の天険、南に孤雲礁の海の障壁が連なり、霊矩関こそ璃月港へ通じる唯一の陸路だ。迂回したところで、どこへ回り込む?」


幕内は一瞬沈黙に包まれた。


信玄は立ち上がり、軍幕の入り口まで歩み出て、西方を眺めた。「我が武田家『風林火山』の旗が進む先に、敵の強さを恐れて退いたことはない。それに、我が軍には進まねばならぬ理由がある」


振り返った彼の眼光は電の如く鋭かった。「北条氏康は我らと同盟を結び、その条件が璃月港への道を開くことだ。あの港の富は、武田家が天下を争うに十分な力となる。この戦、必ず戦わねばならぬ」


「しかし主公、あの飛行要塞が……」高坂昌信が心配そうに口を挟んだ。


信玄は手を挙げて制した。「いかなる強大な要塞にも弱点はある。山本、貴殿はどう見る?」


山本勘助は目を細めて答えた。「風魔の情報から分析するに、あの要塞の攻撃は準備に時間を要し、攻撃範囲にも限りがある。我らが十分な速さで攻撃圏を突破し、関下まで迫れば、要塞は無力となる。肝は速さ、そして犠牲だ」


「速さ……そして犠牲か」信玄は二つの言葉を繰り返し、瞳に決断の色が宿った。「全军に伝令せよ。三日後の明け方、総攻撃を開始する。山県、貴殿の赤備を先鋒とし、あらゆる代償を払って敵陣を突破せよ。馬場、高坂は主力を率いて後に続け。小幡昌盛、真田幸隆は両翼を掩護せよ」


「承知!」諸将は一斉に答諾した。


信玄は最後に地図上の霊矩関を眺め、呟いた。「璃月の者どもに、真の戦争とは何かを見せてやれ」




三日後、夜明け前の最も暗き刻。


霊矩関の再建工事は続いていたが、凝光の群玉閣が関隘上空に浮かび、落ちることのない要塞の如く佇んでいた。刻晴は白朮の治療で負傷も癒え、この時凝光と共に群玉閣の観測台に立っていた。


「斥候の報せによると、敵軍は三十里先に陣を張り、規模は……極めて膨大だ」刻晴の声には憂いが滲んでいた。「少なくとも十万を超える勢いだ」


凝光は表情を崩さず答えた。「正確な数は十六万七千。うち騎兵約三万、歩兵十二万、残りは補助部隊だ。率いるのは異世界の名将・武田信玄、『風林火山』の戦術で名を馳せる人物だ」


「なぜこれほど詳しく知っているの?」刻晴は驚いた。


凝光は微かに笑った。「商人にとって最も大事なのは情報、私には独自の情報網がある。百暁、報せよ」


百暁が進み出て、詳細な情報巻物を広げた。「武田信玄、五十二歳。異世界戦国時代の最高クラスの大名の一人。用兵神がかり、特に騎馬突撃と山地作戦に長ける。配下の赤備騎馬隊は精鋭中の精鋭で、統率者の山県昌景は『鬼美濃』の異名を持つ。今回従軍する将は馬場信春、高坂昌信、小幡昌盛、真田幸隆ら二十余名の大将に及ぶ」


甘雨は思わず息を呑んだ。「これほどの布陣とは……」


「相手が強大であるからこそ、ここで食い止めねばならぬ」凝光は制御盤に向き直った。「この十六万の大軍が璃月腹地に侵入すれば、結果は計り知れぬ。伝令せよ、『不動天尊』防衛モードを起動、全攻撃システムをチャージせよ。目標:敵先鋒を殲滅せよ」


「凝光、これは少し……」刻晴は言葉を濁した。


凝光は彼女を見つめ、稀に見る厳粛な面持ちで言った。「刻晴、『戦争』の二文字が何を意味するか知っているか? それは生か死かの闘いだ。彼らが侵略を選んだ以上、代償を払う覚悟を持たねばならぬ」


声が落ちるや否や、遠く地平線に第一筋の朝日が闇を裂き、黒々とした大軍の姿を照らし出した。


武田軍、進軍してきた。




山県昌景が真っ先に駆け進み、背後には紅蓮の如く鮮やかな赤備騎馬隊が続いた。三千の赤備は武田家最強の矛、今や驚くほどの速さで霊矩関へ突進していた。


「速め! もっと速め!」山県は怒鳴った。「敵が態勢を整える前に関を突破せよ!」


彼の戦術は単純だ——速さで生き残りを勝ち取る。風魔の情報によれば、あの飛行要塞の攻撃には準備時間が必要で、広範囲を移動する目標への命中率は低下する。関下まで突っ込めば、要塞は自軍の守備兵を巻き込むため攻撃できなくなる。


理屈の上ではその通りだ。


赤備騎馬隊が霊矩関前十里の圏内に突入した瞬間、群玉閣頂上の百八枚の呪符が一斉に光を帯びた。


「大勢の敵が攻撃圏内に侵入を確認」百識が冷静に報告する。「約三千、速度極めて速く、三分後に関口到達見込み」


凝光は制御盤の前に立ち、ホログラフィック投影に敵軍のリアルタイム位置が映し出されていた。「『天星雨降らし』準備、前方扇形エリアをロック、飽和攻撃を仕掛けよ」


「しかし凝光殿、これほど高密度の攻撃では呪符備蓄の八成を消費します……」百聞が注意を促した。


「命令を遂行せよ」凝光の声は断固として譲らない。


百識が令旗を振り下ろした。「第一陣、発動!」


三百枚の火元素呪符が一斉に励起し、燃える流星となって夜明け前の空を駆け、赤備騎馬隊の突進ルートに正確に降り注いだ。


山県昌景は空を見上げ、瞳を大きく見開いた。「散れ! 全速で散開せよ!」


だが時すでに遅かった。


流星は一つ二つではなく、一面に降り注いだ。爆発は一響二響ではなく、幾重にも轟いた。炎は一輪二輪ではなく、一面の火の海となった。


第一波の攻撃は方圆二里を覆い、三百の赤備騎兵は馬ごと炭化して消えた。第二波が続き、今度は氷元素の攻撃。極寒が突進する騎兵を氷像に凍らせ、後続の騎馬に砕かせた。


「突進を続けろ! 止まるな!」山県昌景は目を真っ赤にして叫んだ。止まれば死ぬだけ、突き進む以外に生きる道はない。


赤備騎馬隊は武田家の精鋭に恥じず、これほど恐ろしい攻撃を受けながらも、突進陣形は完全に崩れなかった。隊列を散らし、より疎らな形で突進を続けた。


だが群玉閣の攻撃は止まらない。


第三波は雷元素呪符。数百の稲妻が空から降り注ぎ、無作為ではなく一人一人の騎兵を正確に捉えた。馬は驚いて倒れ、騎兵は感電して灰と化した。第四波は岩元素の攻撃、地面から突然岩の棘が隆起し、騎兵を馬ごと貫き通した。


山県昌景が五里の死の地帯を抜け出した時、振り返ると三千の赤備は八百にも満たない数に減っていた。


そして前方には、まだ五里の道が残っていた。


「主公……昌景……使命を果たせぬかもしれぬ……」彼は苦笑し、槍を掲げた。「赤備よ、我に続け……」


言葉が途切れる間もなく、丈余りの金色の光柱が空から降り注ぎ、彼を正確に捉えた。


爆発も轟音もなく、ただ極限の浄化の力が満ちていた。「鬼美濃」と謳われる猛将・山県昌景は、光柱の中で跡形もなく消え去り、愛馬も鎧も武器も、微塵も残らなかった。


赤備騎馬隊の突進は、ここに完全に崩壊した。




後方五里、武田信玄は千里眼でこの一部始終を見届けていた。


彼の手は震えていた。恐怖ではなく、怒りと驚きが入り混じる激しい情緒のせいだ。三千の赤備、武田家が二十年の歳月をかけて鍛え上げた精鋭が、たった十五分で塵と化した。


「あれは一体何だ……」彼は独り言を呟いた。


山本勘助は顔を青く曇らせた。「主公、進軍を即時停止せねばなりません! あの要塞の攻撃範囲は予想をはるかに超え、威力も桁違いだ……これはもはや戦争ではない、虐殺だ!」


「停止?」信玄は猛然と振り返り、目には血の筋が浮かんだ。「十六万の大軍が全面に展開した今、どうやって停止する? 馬場信春の左翼は既に敵と交戦し、高坂昌信の右翼は迂回を進めている。今止めれば、全軍崩壊だ!」


その時、伝令兵がよろよろと軍幕に駆け込んだ。「報告! 左翼・馬場信春殿は敵の空襲を受け、多大な損害! 右翼・高坂昌信殿も阻止され、前進不能となりました!」


信玄は幕外に駆け出し、眼前の光景は生涯忘れ難いものとなった。


空に浮かぶ群玉閣は神々の宮殿の如く、絶え間なく滅びの光を降り注いでいた。火の雨、氷の嵐、轟雷、岩の棘……あらゆる元素攻撃が死の網を織り成し、戦場全体を覆い尽くしていた。


武田軍の陣形は崩れ始めた。訓練された兵士も、この超自然的な攻撃の前には凡人と変わらない。盾は空からの稲妻を防げず、鎧は体を貫く氷の棘を阻めない。馬は炎の中で鳴き、兵士は恐怖に駆られて逃走した。


だが信玄は名将の名に恥じず、瞬く間に冷静さを取り戻した。「伝令! 全軍は小部隊に分散して前進せよ! 小幡昌盛、馬上石元、山田内佑、小野寺山、各々配下を率い、四方から牽制攻撃を仕掛け、要塞の攻撃死角を探り出せ!」


「主公! あまりに危険です!」山本勘助が焦って諫めた。


「これが唯一の道だ!」信玄は怒鳴った。「十六万の大軍をここで待ち殺すわけにはいかぬ!」


命令は直ちに伝達された。武田軍は戦術を転換し、密集陣形から分散突撃へと変わった。小幡昌盛は五千の足軽を率いて東側の谷間を迂回、馬上石元は三千騎で西側丘陵を突進、山田内佑と小野寺山は各四千の兵を率い南北から牽制した。


この戦術は当初一定の効果を見せた。群玉閣の攻撃は威力こそ絶大だが、分散した目標に対しては効率が低下した。四方の部隊はいずれも数里前進に成功し、最も迫った小幡昌盛の部隊に至っては霊矩関の城壁が見えるほどになった。


「効き目あり! 更に進め!」小幡昌盛は興奮して叫んだ。


だが彼は知る由もない、群玉閣の内部で凝光が戦術を調整していたことを。


「敵が分散したか」彼女はホログラフィック投影を眺め、穏やかに呟いた。「好都合、新兵器の実験としよう。百識、『誅仙砲』システム起動、エネルギー五十パーセントチャージ、目標は四方の敵将と定めよ」


「しかし凝光殿、『誅仙砲』は未だ完全試験が済んでおらず、エネルギー制御が不安定です……」百暁が心配した。


「戦場こそ最高の試験場だ」凝光は淡々と言った。「実行せよ」


群玉閣の底部から巨大な水晶砲身が四本ゆっくりとせり出し、砲口に眩い金色の光が集まり始めた。これは単なる呪符攻撃ではなく、群玉閣の核心陣が直接駆動するエネルギー兵器で、蓄えられた岩元素力を消費する代物だ。


「目標ロック完了:東側敵将・小幡昌盛。チャージ完了、発射」


三尺の直径を持つ金色の光線が空を裂き、五里先の小幡昌盛を正確に捉えた。武勇を誇ったこの将は反応する間もなく、光線の中で跡形もなく消え、周囲十余名の親衛も共に消し飛んだ。


「西側目標・馬上石元、発射」


第二の光線が放たれた。馬上石元は騎兵を指揮して突進中、不吉な胸騒ぎを覚え空を見上げると、金光が目前に迫っていた。次の瞬間、彼も愛馬も後続の三百騎も、全てが消え去り、地面には丈深い溶けた穴だけが残った。


「南側・山田内佑、発射」


山田内佑は幸運だった。東西の光線を目撃し、本能的に馬から飛び降り掩護物を探した。だが光線は直線攻撃ではなく、追尾する性質を持っていた。金光は空に奇妙な弧を描き、岩肌を回り込んで彼の隠れ場所を正確に撃ち抜いた。


「北側・小野寺山、発射」


小野寺山は最も賢い選択をした——即時転身して逃走した。親衛隊を率いて全速で後退したが、光線の速度は馬の脚をはるかに超える。二里逃れたところで、ついに追いつかれた。最期に空中要塞を振り返った彼の瞳には、不服と恐怖が宿り、やがて光塵と化した。


四人の大将、四筋の光線、四度の瞬殺。


武田軍の士気は、この瞬間完全に崩壊した。




戦場に奇妙な光景が広がった——十六万の大軍が引き潮のように一斉に敗走し始めた。兵士は武器を捨て、騎兵は馬を見捨て、将校は制止する術もなく、監督部隊さえ我先にと逃走した。


信玄は高台に立ち、この光景を眺めて胸が締め付けられる思いだった。


「主公、撤退せねばなりません!」山本勘助が焦って進言した。「軍心は完全に崩れた、これ以上遅れれば手遅れです!」


信玄は目を閉じ、深く息を吸った。再び目を開けた時、瞳には冷静さが戻っていた。「全軍に伝令、交替で掩護し秩序立って後退せよ。負傷兵……連れ帰れる者は極力連れ、叶わぬ者には安楽な最期を与えよ」


「主公……」


「命令を遂行せよ」信玄の声は疲弊しつつも揺るぎなかった。「それに、損害を集計せよ」


半日後、損害の暫定報告が信玄の手に届いた。


十六万の大軍のうち、戦死七万三千余人、行動不能な重傷者二万余人、軽傷は数え切れない。失った大将は既に把握している——山県昌景、馬場信春、高坂昌信、小幡昌盛、馬上石元、山田内佑、小野寺山……武田家の精鋭将軍は、一戦で半数近くを失った。


最も致命的なのは、あの要塞は本気を出していないように見えることだ。本気を出されれば、十六万の大軍に生きて帰れる者は一人もいないのではないかと信玄は疑った。


「山本」信玄の声は嗄れていた。「貴殿はどう見る?」


山本勘助は長く沈黙し、ゆっくりと答えた。「主公、あれは我々が敵う力ではありません。もはや人力の域を超え、まさに天災の如き存在だ。璃月との戦争を根本から見直さねばなりません」


信玄は肯き、西方の空中要塞を眺めた。「全軍に伝令、三十里後方に陣を張り再編成せよ。同時に使者を北条氏康のもとに遣わし、計画の変更を告げよ。更なる情報、更なる準備、そして何より……あの力に対抗する手段を探さねばならぬ」


一拍置き、補足した。「それに、密かに璃月と接触し、和談の可能性を探れ。戦争は目的ではない、利益こそが真の狙いだ」


「主公の英断です」山本勘助は安堵した。信玄が我を忘れて攻め続けることを心底恐れていたのだ。


信玄は最後に霊矩関の方角を眺め、白衣の女の姿が眼前に浮かぶようだった。


「凝光……今回は貴様の勝ちだ。だが戦争は、まだ始まったばかりだ」




群玉閣の上で、凝光は敗走する敵軍を眺め、穏やかな表情を崩さなかった。


「敵軍は三十里後方まで撤退し、再編成を進めています」百暁が報告する。「我方の損害……ゼロ。群玉閣のエネルギー消費は六十八パーセント、『誅仙砲』システムの冷却に七日を要し、呪符備蓄は九十三パーセントを消費し尽くしました」


刻晴と甘雨が観測台に上がり、二人の顔には複雑な思いが宿っていた。


「私たち……勝ったの?」刻晴は確信が持てず問いかけた。


「一時的な勝利に過ぎぬ」凝光は振り返った。「だが武田信玄は安易に諦める男ではない。今回の敗北で彼はより慎重になり、次の進軍は更に致命的なものとなるだろう」


甘雨は憂慮して言った。「凝光、これほど大規模な攻撃は消耗が激しすぎます。再び敵が来襲した時、我々に迎え撃つ余力は残っているのでしょうか?」


凝光は微かに笑った。「だからこの隙に二つのことを成さねばならぬ。一つは霊矩関の通常防衛を強化し、いつまでも群玉閣に頼るわけにはいかぬ。もう一つは……」


彼女は璃月港の方角を眺めた。「璃月の真の力を目覚めさせる時だ。帝君は隠居したものの、仙人たちはまだこの地にいる。そして璃月の民にも、迫り来る脅威を知らせるべきだ」


「事を公にするの?」刻晴は驚いた。


「火中の栗を隠すことは叶わぬ」凝光は欄干まで歩み下を眺めると、勝利を祝う千岩軍の兵士たちが見えた。「彼らを不安な憶測に惑わせるより、覚悟を持って脅威に立ち向かわせる方が良い。璃月は魔神戦争、層岩巨渊の戦いを経てきた。今回も……例外ではない」


顔を上げ、遥かな空を見つめた。「それに予感がする、武田信玄と北条氏康は始まりに過ぎぬ。テイワットの平穏は、もうすぐ打ち砕かれるだろう」


夕陽が西に沈み、群玉閣は夕映えに金色の輝きを放っていた。下では霊矩関の廃墟の上に、新たな城壁が築かれつつある。遠方には武田軍の営火が点点と灯り、傷ついた獣のように闇の中で傷を癒していた。


この戦い、璃月は勝利した。


だが凝光は知っている、真の試練はこれからだと。二つの世界の衝突が全面的に広がった時、璃月がこの土地を守り、民を守り抜けるかは未知数だ。


彼女は手に持つ岩元素の碁石を強く握り、瞳に揺るぎない決意を宿した。


何があろうと、最後まで戦い抜く。


璃月のため、契約のため、愛してやまぬこの土地のために。


夜が訪れ、群玉閣の灯りがともり、闇の中に消えることのない星の如く輝いた。そして更なる深い闇の中で、無数の眼がこの土地を見つめ、次なる進撃を企んでいた。


戦争は、決して終わってはいない。姿を変え、ただ続いているだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ