表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/32

モンド築城

テイワット大陸の風は、かつてモンドの原野にあって、かくも奔放で束縛を知らなかった。タンポポの種と吟遊詩人の調べを乗せ、果酒湖の碧き波をなで、蒼風高地の山嶺を渡り抜けていた。だが今、この風には異質な鉄錆と土埃のにおいが混じり、大地の鼓動のように重く響く、異郷より届く戦太鼓の音も紛れ込んでいる。


甲斐の虎・武田信玄。その赤備え軍団は灼熱の鉄の流れとなり、モンド平野に立ちはだかるあらゆる抵抗を薙ぎ払った。西風騎士団は、最初にして最も凄惨な野戦幾度かで壊滅。代理団長ジン・グンヒルドルは残兵と一部市民を率い、やむなくモンド城へ退いた。自由の都の高き城壁と、風神の(おそらくの)加護を頼り、絶望的な籠城戦を続けている。広大なモンド領域は、わずかな頑強な拠点を除き、既に支配者を替えていた。


信玄は急いでモンド城へ総攻撃を仕掛けようとはしなかった。「風林火山」の道を知り尽くしたこの軍略家は、根幹を固めることの重要性を深く悟っていた。モンド城周辺、特に璃月の商道に繋がり、暁のワイナリーを見下ろす広大な一帯には、未開の空き地が無数に広がっている。信玄の目には、これは荒れ果てた土地ではなく、自らの雄大な軍事構想を描くには絶好の画布に映った。


その折、配下にあって朝日の如く輝きながら、狡知に長け行動力に驚くべき才を持つ将——豊臣秀吉が、大胆にして荒唐無稽とも思える計画を打ち出した。


「信玄公」

いつも笑みを絶やさぬ秀吉の顔に、今は興奮の輝きが宿った。

「モンドの地は果てしなく広々としており、城を築いて根幹を固めるにはうってつけです。一夜、たった一夜だけお与えください。この大地に、武田家の新たな城を聳え立たせてみせましょう」


信玄は顎の髭を撫で、鋭い眼差しで秀吉を見極めた。彼はこの男の才を知っており、常に不可能を可能に変えてきたことを心得ている。

「一夜か。木下……いや、豊臣。これは戯れ言では済まされぬ。成せば我が軍の背後は安泰、敗れれば士気は大きく損なわれる」


「必ずご期待にお応えいたします!」

秀吉は深く頭を垂れた。


ここに、テイワット大陸に前例なき築城の奇跡が、夜の闇に紛れて幕を開けた。豊臣秀吉は驚異的な統率と動員力を発揮した。膨大な工兵隊を指揮するだけでなく、帰順または捕虜となった多くのモンド労働者を巧みに活用し、さらにテイワット固有の元素生物まで動員した。巨石を運ぶ岩ヒルチャールの呪術師、特殊な呪符で制御された遺跡守衛たちは、飽くことなく巨腕を振るい、まさに移動式の起重機となった。


炎が夜空を白昼の如く照らし、掛け声・突き固める音・木材切断の音が雄大で奇妙な交響曲を紡ぎ出す。人の姿は織りなすように行き交い、車馬は龍の如く連なり、元素の光と人の汗が共に大地に注がれた。信玄は臨時に築かれた本陣の高台に立ち、沸き立つ工事現場を眺め、満足の色を浮かべた。秩序と効率、そして秀吉が混沌を創造へと変えるまるで魔法のような才能を、その目で確かめたのだ。


東の空に最初の白みが漂い始めた時、モンドの原野は姿を一変させた。


かつての空き地に、雨後の竹の子のように、モンドの建築様式とは全く異なる、濃き東洋戦国風情を湛えた城郭が次々と立ち並んだ。完璧とは言えず、慌ただしく築かれた跡も残るが、林立する櫓楼、堅固な石垣、曲がりくねった塁壕は、その純粋な軍事用途を余すところなく物語っていた。


信玄は諸将に取り囲まれ、馬を進めて一夜の成果を巡視した。


最もモンド城寄りには、最も規模の大きな「信条城」が聳え、雄大な天守閣で四方を見下ろし、この地における武田家の揺るぎない権威を象徴している。その側翼には、城壁を朱赭色に塗り分け、機動騎兵を駐留させた「赤馬城」が控え、今にも炎の如く駆け出さんばかりだ。様式は古風ながら構造が異常に堅固な「武田丸」は、その名の通り武田家の海上拠点——モンドに海は無いものの、湖に臨んで築かれ、港の役割も備える——として君臨する。さらに遠くには高地を守る「武上城」、平野の要衝を抑える「岩田原城」、物資の流通拠点となる緩やかな地の「平町城」など、十を超える新城が互いに犄角をなし、モンド城を囲み封じ込める巨大な鎖を形作っていた。


「良し、良し、良し!」

信玄は三度賛辞を唱え、洪鐘の如き声が朝の空気に響き渡った。

「豊臣、見事に期待に応えてくれた。これほどの速さで城を築くは、まさに神跡と言うほかない!」


秀吉は慎ましく身を屈めるも、眉間に宿る得意の色は隠しきれない。

「全く信玄公の威光と、将兵の奮戦の賜物にございます」


「伝令せよ!」

信玄は大きく手を振った。

「各城に直ちに兵馬を分けて駐留させ、馬場信春・高坂昌信・内藤昌豊らにそれぞれ守備を任せよ。モンド城を嵐のただ中の孤島と化させるのだ!」


軍令は山の如く厳しく、赤備え騎兵と足軽部隊はたちまち新城の守備地へ進発し、旗は翻り、鎧は鮮やかに光を放った。


この前例なき勝利と築城の成就を祝うため、信玄は完成したばかりの「信条城」本丸にて、盛大な宴を開くことを決めた。本丸の奥地には露天の温泉が巧みに引き込まれ、湯気は立ち昇り靄が立ち込めている。これは秀吉が築城中に偶然発見した地熱の泉眼で、直ちに本丸の施設として整備され、信玄公が諸将を労う絶好の場となった。


再び夜が訪れたが、城内に漂うのは切迫した工事の気配ではなく、勝利の歓喜と酒と料理の薫りに満ちていた。


信玄はゆったりとした浴衣をまとい、真っ先に湯船に身を浸した。続いて山県昌景・馬場信春・高坂昌信・内藤昌豊ら腹心の猛将、そして大功を立てた豊臣秀吉も、鎧を脱ぎ湯に入る。長き遠征と昨夜の監督の労苦も、立ち込める湯気の流れに溶け消えるようだった。


湯池の辺には、侍たちが既に座卓と豪華な宴席を整えていた。モンド特有の焼き肉やタンポポ酒ではなく、紛れもない和風料理が並ぶ。精巧な漆器の箱には、テイワットの近海魚(従軍料理人が食用を慎重に見極めたもの)を素材に、精湛な包丁さばきで仕立てた刺身が納められ、薄く蝉の羽の如く切られた身は瑞々しい桃色と白を映し、擦りたてのわさびと濃口醤油が添えられている。寿司台には、占領した農地から緊急に調達した米で作った酢飯に、海鮮や漬物を載せた寿司が並ぶ。大きな酒樽の泥蓋が割られ、芳醇な米の薫りが温泉の硫黄の香りと混ざり、奇妙ながら心和らぐ雰囲気を醸し出していた。


信玄は重たい陶製の盃を掲げ、死を共にくぐり抜けてきた配下の面々を見渡し、朗らかに語った。

「諸君よ。我ら海を渡りこの異郷に降り立ち、苦戦を経てついに基盤を築いた。モンドの豊かな土地は大半が我が手に落ちた。さらに豊臣の一夜築城により、武田家の根幹は磐石となった。これは天の恵みであり、諸君の奮戦の賜物でもある。さあ、一気に飲み干せ!」


「信玄公に万歳!」

諸将は一斉に唱和し、声は屋瓦を揺るがすほどに響き、一斉に盃を飲み干した。


温泉の熱さと酒の酔いに、普段厳粛な武将たちも心を和らげた。馬場信春はマグロ腹の寿司を頬張り、感嘆した。

「この異郷の魚も実に脂が乗り、故国のものに劣らぬ美味だ!」


赤備えを率いる山県昌景は辛口の酒を好み、盃を重ねて顔を赤らめ、慨然と言った。

「モンド城を落とし、西風騎士団長を捕らえた暁には、彼女の剣で信玄公に酒を注いでみせよう!」


高坂昌信は穏やかな性格で、鯛の刺身の上品な甘みを味わいつつ微笑んだ。

「これほどの佳肴と美酒、そして温泉が疲れを癒してくれる。まるで甲斐の春に戻ったかのようだ」


豊臣秀吉は最も陽気に振る舞い、自ら飲み食いを楽しむだけでなく、信玄や重臣たちに次々と酒を注ぎ、機知に富んだ話を連ねる。昨夜の築城の逸話や危機、不器用な遺跡守衛をどう指図し、恐怖に怯えるモンドの労働者をどうなだめたかを語り、座を笑いで満たした。


信玄は温かい湯船の縁にもたれ、侍に盃を継がせる。配下の歓談を聞き、異世界の星が瞬く空を眺め、胸中に雄大な野心がみなぎった。テイワットというこの大陸には七神が治める国々があり、不思議な元素の力が宿るが、彼の目には戦国乱世と本質的な違いはない——強き者が尊ばれ、軍略が勝利を決するだけのこと。風神バルバトス?既に長く眠りにつくと聞く。たとえ目覚めたとしても、我が「風林火山」の軍勢、神と渡り合えぬはずもない。


「諸君」


信玄が声を上げると、たちまち騒ぎは静まり、全員が恭しく彼を見つめた。


「モンド城は既に壺の中の鼈、侮ることはならぬ。三日間休養し、兵糧を補充せよ。三日後、この信条城の天守閣より、武田家『風林火山』の旗をモンド城の隅々まで翻させてみせる!」


「はい!」


諸将は轟音の如く応じ、瞳に征服の炎を燃やした。


温泉の湯気は立ち昇り、酒香はあたりに満ち、宴と歌は夜半まで続いた。一夜にして興った巨城・信条城は、モンドの大地に這う鉄の巨獣の如く、その影は遠く自由を尊ぶ城邦を覆い始めていた。武田信玄の野望は、この温泉のように熱く煮えたぎり、やがてテイワット全土を席巻しようとしている。そしてモンドにとって、この夜は自由が墜ちる前の、最も長く冷たい闇であった。

作者コメント:本編は史実を基にした創作です。1931年九一八事変の勃発後、日本軍は中国東北三省を占領し、東北各地に数多くの和風建築を建造しました。

同時に現地の中国の子供たちに日本語を強制的に学ばせ、文化浸透・文化侵略によって中国人を同化させようと企み、中国東北を日本の固有領土にしようとたくらんでいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ