君といるとドキドキする気持ち。
ケンカのあと、タクマとミサキは前よりも素直に話せるようになっていた。
そんなある日。
「文化祭でクラスの出し物を決めまーす!」
教室が一気ににぎやかになる。
「お化け屋敷やりたい!」
「カフェもいいな!」
いろんな意見が出る中で、最終的に決まったのは――
「読み聞かせカフェ」
本を読んだり、お客さんに読み聞かせをする出し物だった。
「ミサキにぴったりじゃん!」
クラスの子がそう言うと、ミサキはびっくりした。
「え、わ、わたし…?」
先生もにこっと笑う。
「ミサキさん、本が好きだもんね。どうかな?」
ミサキは少し不安そうにうつむいた。
そのとき。
「いいと思う!」
タクマが言った。
「ミサキ、読み方うまいし!」
ミサキは驚いてタクマを見た。
「タクマくん…」
「俺も手伝うからさ!」
その言葉に、ミサキは少し安心したようにうなずいた。
「…やってみる」
文化祭の準備が始まった。
教室に飾りをつけたり、本を集めたり。
そしてミサキは、読み聞かせの練習をしていた。
でも――
なかなかうまく声が出ない。
人前で読むのが、やっぱり少し怖かった。
その日の放課後。
タクマは教室に残っていた。
「ミサキ、練習する?」
ミサキは少し迷ってからうなずいた。
タクマはイスに座って言った。
「じゃあ、俺、お客さん役やる!」
ミサキは本を開いた。
最初は小さな声。
でも、タクマがしっかり聞いているのを見て、少しずつ声が出てきた。
ページをめくるたびに、言葉がやわらかく流れていく。
読み終わると、タクマは笑った。
「すごいよ、ミサキ!」
「ほんと…?」
「うん!めっちゃ聞きやすい!」
ミサキは少し照れながら笑った。
「タクマくんがちゃんと聞いてくれるから…」
その言葉に、タクマは少しドキッとした。
そして文化祭当日。
教室はカフェみたいに飾られていた。
お客さんもたくさん来ている。
「いらっしゃいませー!」
タクマは元気に案内していた。
そして――
「次、ミサキの番だよ」
ミサキは本をぎゅっと持った。
少し緊張している。
そのとき、タクマが小さく言った。
「大丈夫。ミサキならできるから」
あのときのしおりと同じ言葉。
ミサキは深呼吸して、前に出た。
「……はじめます」
少しだけ震えていた声。
でも、読み進めるうちに――
だんだんと落ち着いていった。
教室は静かになって、みんながミサキの声を聞いている。
やさしくて、あたたかい声。
読み終わると――
パチパチパチ…!
大きな拍手が起こった。
ミサキはびっくりして、それから少し笑った。
タクマは一番前で、誰よりも大きく拍手していた。
文化祭が終わった帰り道。
「ミサキ、すごかった!」
タクマが言うと、ミサキは少し恥ずかしそうに笑った。
「タクマくんのおかげだよ」
「え?」
「応援してくれたから、がんばれた」
タクマは少し照れた。
「そっか…」
少し沈黙が流れる。
夕焼けの空の下。
ミサキが小さく言った。
「タクマくんといると…安心する」
その言葉に、タクマの胸がドキンとした。
(これって…)
前よりも強く感じる、この気持ち。
言葉にはできないけど、確かにあるもの。
タクマは少しだけ勇気を出そうとした。
「ミサキ、俺…」
でも、その先は言えなかった。
風がふわっと吹いて、言葉が止まる。
ミサキも、何かを言いかけてやめた。
ふたりは少しだけ笑って、
「また明日ね」
といつものように別れた。
でも――
その「また明日」が、
前より少しだけ特別に感じられた。




