初めてすれ違ったあの日
夏祭りのあと。
タクマとミサキは、前よりもっとよく話すようになっていた。
休み時間も、帰り道も、ふたりでいることが増えてきた。
でも…
ある日の昼休みのこと。
「タクマ!サッカーやろうぜ!」
友だちに呼ばれて、タクマは少し迷った。
(ミサキと本の話をする約束だったな…)
ちらっと教室を見ると、ミサキが本を持って待っている。
でも…
「今日だけ!すぐ戻るから!」
そう言って、タクマは校庭へ走っていった。
しばらくして、タクマが教室に戻ると――
ミサキの席は空いていた。
「ミサキ、どこ行ったんだろ…」
その日、結局ミサキとは話せないままだった。
次の日。
「おはよう、ミサキ!」
タクマが声をかけると、ミサキは少しだけうなずいた。
「…おはよう」
でも、いつもより声が小さい。
昼休みになっても、ミサキは本を読んだまま。
タクマは思いきって話しかけた。
「昨日は、ごめん!サッカー行っちゃって」
ミサキは本を閉じた。
少しだけ間をあけてから言った。
「…別にいいよ」
「でも約束してたのに」
「タクマくん、サッカー好きでしょ」
その言い方が、いつもと少し違っていた。
タクマはなんだかモヤっとした。
「じゃあ、いいじゃん!」
つい、強い言い方になってしまった。
ミサキはびっくりして、少し目を伏せた。
「…うん」
それ以上、何も言わなかった。
その日の帰り道。
ふたりは一緒に帰らなかった。
タクマはひとりで歩きながら、なんだか胸が重かった。
(なんであんな言い方したんだろ…)
家に帰って、カバンを開けると――
あのみさきからもらったしおりが目に入った。
『タクマくんならきっと大丈夫。応援してます。ミサキ』
それを見た瞬間、胸がぎゅっとなった。
(ミサキ、待っててくれたのに…)
次の日の放課後。
タクマは図書室に向かった。
ミサキがいる気がしたから。
静かな図書室。
やっぱりミサキは、窓ぎわの席にいた。
タクマはゆっくり近づいた。
「ミサキ」
ミサキは顔を上げた。
少しびっくりした顔。
「昨日、ごめん」
ミサキは何も言わずに聞いている。
「約束してたのに、待たせて…しかも変な言い方して」
少しだけ間があいて――
ミサキが小さく言った。
「…わたしも、ごめん」
「え?」
「ほんとは…ちょっとだけさみしかった」
タクマはドキッとした。
「でも、うまく言えなくて…」
ミサキは少しうつむいた。
タクマは少し考えてから言った。
「じゃあさ、今度からちゃんと言ってよ」
ミサキは顔を上げた。
「さみしいって思ったら、言ってほしい」
ミサキは少しびっくりして、それから小さく笑った。
「…うん」
タクマも笑った。
「俺もちゃんと約束守る!」
そのあと、ふたりはいつもの席に座った。
「今日の本、どんな話?」
タクマが聞くと、ミサキはうれしそうにページを開いた。
図書室の静かな空気の中で、
ふたりの距離はまた少し近くなった。
ケンカしてしまったけど――
その分だけ、お互いの気持ちを少し知ることができた。




