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ちいさな恋の始まり

季節は冬。


教室の窓から見える景色も、すっかり冷たい色になっていた。


黒板のすみに書かれた文字。


「卒業まで あと15日」


それを見たタクマは、なんとなく胸がざわっとした。


(もうすぐ…終わるんだな)


今まで当たり前だった毎日が、もうすぐ変わってしまう。


昼休み。


「ねえミサキ」


タクマが声をかけると、ミサキは本を読むのをやめ、顔を上げた。


「なに?」


「卒業したらさ、中学バラバラだよな」


ミサキは少しだけ目を伏せた。


「…うん」


「そっか…」


それ以上、言葉が続かなかった。


その日の放課後。


タクマはひとりで校庭にいた。


冬の空気は冷たいけど、頭の中はもっとぐちゃぐちゃだった。


(このままでいいのかな)


(ミサキに何も言わないで終わるの…いやだ)


ポケットの中に手を入れると、あのしおりがあった。


少しだけくしゃっとしているけど、大事に持っていたもの。


『タクマくんならきっと大丈夫。応援してます。ミサキ』


それを見て、タクマは決めた。


(ちゃんと伝えよう)


次の日。


放課後。


タクマはミサキに言った。


「今日、ちょっといい?」


ミサキは少し驚いたけど、うなずいた。


「うん」


ふたりが向かったのは、あの図書室。


はじめてちゃんと話した場所。


夕方の光が静かに差し込んでいる。


少しの沈黙。


タクマは深呼吸した。


「ミサキ」


「うん」


「俺さ…ミサキといると楽しい」


ミサキは静かに聞いている。


「運動会も、夏祭りも、文化祭も…全部」


タクマは少しだけ手を握った。


「ミサキがいると、なんか…がんばれる」


ミサキの目が少し揺れた。


タクマは勇気を出して言った。


「これが何なのか、ちゃんと分かんなかったけど…」


少しだけ間をあけて――


「ミサキのこと、好きだ」


図書室の中が、しん…と静かになる。


ミサキはびっくりしたまま、動かなかった。


タクマは続けた。


「中学、別々でも…」


「また一緒に話したいし、会いたい」


少し震える声。


「ミサキは…どう思う?」


ミサキはしばらく黙っていた。


でも、ゆっくり顔を上げて言った。


「わたしも…」


小さな声。


でも、はっきりと。


「タクマくんといると、すごく楽しい」


目に少しだけ涙がたまっている。


「安心するし…うれしいし…」


少しだけ笑って、


「ずっと一緒にいたいって思う」


タクマの胸がドキンとした。


「だから…」


ミサキは勇気を出して言った。


「わたしも、タクマくんのこと…好き」


ふたりは少しだけ顔を見合わせて、


それから、同時に笑った。


なんだか照れくさくて、でもすごくうれしい。


外はもう、夕焼けが終わりかけていた。


卒業式の日。


校門の前。


「じゃあね、ミサキ」


「うん」


少しだけさみしいけど――


前とは違う。


「また会おうな!」


「うん、約束」


ふたりは笑った。


それぞれの道へ進むけど、


気持ちはちゃんとつながっている。


はじめての気持ち。

はじめての「好き」。


それは小さくて、でもとても大切なもの。


これから先も、きっと忘れない。


ふたりの物語は、ここで終わりじゃない。


むしろ――


ここから、はじまっていく。

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