運動会の日
数日後の朝のこと。
教室に入ると、黒板に大きく書かれていた。
【運動会のリレーのメンバーを決めます!】
クラスのみんながざわざわしている。
「タクマ、絶対リレーだろ!」
「足速いもんな!」
友だちに言われて、タクマは少し笑った。
「まあ…たぶん?」
先生が言った。
「じゃあ、リレーのアンカーはタクマくんでいいかな?」
「はーい!」と、みんなが元気に答えた。
タクマはちょっと照れながら「はい」と言った。
そのとき、ふとミサキの方を見ると、
ミサキは小さく拍手をしていた。
昼休み。
タクマが校庭から戻ると、ミサキが本を読んでいた。
「ミサキ!」
「うん?」
「俺、リレーの最後の走る人になった!」
ミサキは目を少し大きくして言った。
「すごい…!」
「でもさ、ちょっと緊張するかも」
タクマがそう言うと、ミサキは少し考えてからカバンを開いた。
中から小さな紙を取り出して、タクマに渡した。
「これ…」
タクマは紙を開いた。
そこには、きれいな字でこう書いてあった。
『タクマくんならきっと大丈夫。応援してます。ミサキ』
タクマはびっくりしてミサキを見た。
「これ、ミサキが書いたの?」
「う、うん…」
ミサキは少し顔が赤くなっていた。
「本のしおりみたいに使ってもいいよ」
タクマはうれしそうに笑った。
「ありがとう!絶対がんばる!」
そして運動会の日。
校庭はたくさんの人でいっぱいだった。
リレーの順番が近づくと、タクマの心臓はドキドキしていた。
(ミサキのしおり…)
ポケットの中に入っている紙を、そっと握る。
「タクマくん!」
声の方を見ると、ミサキがクラスの応援の列に立っていた。
「がんばって!」
小さな声だけど、はっきり聞こえた。
タクマは大きくうなずいた。
そして――
バトンが回ってきた。
「タクマ!いけー!!」
タクマは思いきり走った。
風を切って、ゴールへ向かって。
そして――
ゴールテープを切った。
「やったーー!!」
クラスのみんなが集まってくる。
タクマは息を切らしながら笑った。
その少し後ろで、ミサキも嬉しそうに拍手していた。
タクマはミサキのところへ行った。
「ミサキ!」
「うん!」
「さっきのしおりのおかげ!」
ミサキは少し照れながら言った。
「ほんと?」
タクマは元気よく言った。
「うん!すごく勇気出た!」
ミサキはうれしそうに笑った。
その笑顔を見て、タクマの胸はまた少しドキドキした。
どうしてなのかは、まだよくわからない。
でも――
ミサキが応援してくれると、
なんでもできる気がした。




