2人きりの時間
次の日の昼休み。
校庭ではみんなが元気に遊んでいた。
タクマは友だちとサッカーをしていたけれど、ふと教室の方が気になった。
「ちょっと休憩!」
そう言って、タクマは教室へ戻った。
教室の中では、ミサキがいつもの席で本を読んでいた。
「また本読んでるの?」
ミサキは顔を上げて、少しだけ笑った。
「うん。このお話、続きが気になって…」
タクマはミサキのとなりの席に座った。
「どんな話なの?」
ミサキは少しうれしそうに、本を開いた。
「えっとね、勇気がない男の子が、友だちを助けるためにがんばるお話なの」
「へえ、かっこいいじゃん!」
「うん。でもね…」
ミサキはページを見ながら言った。
「その男の子、最初は自信がなくて、なかなか一歩が出ないの」
タクマは少し考えてから言った。
「でも、きっと最後は助けるんでしょ?」
ミサキはこくっと頷いた。
「うん。だって、本当はすごく優しい子だから」
その言葉を聞いて、タクマはちょっと照れくさそうに笑った。
その日の帰り道。
校門を出ると、ミサキが少し困った顔をして立っていた。
「どうしたの?」
「あの…図書室の本、返すの忘れちゃって…」
「じゃあ、一緒に戻ろう!」
タクマはすぐに言った。
「え、でも…タクマくん帰り遅くなるよ?」
「いいよ。ちょっとくらい!」
ふたりはもう一度、学校の中へ戻った。
静かな図書室。
夕方の光が窓から差し込んでいる。
ミサキが本を返している間、タクマは本棚をながめていた。
「ミサキって、本いっぱい知ってるんだね」
「好きだから…」
「おすすめの本、教えてよ」
ミサキは少し考えてから、一冊の本を取り出した。
「これ…タクマくんに合うと思う」
タクマは受け取った。
「ほんと?」
「うん。優しい主人公だから」
その言葉に、タクマはまた少し照れた。
ふたりで図書室を出ると、外はきれいな夕焼けだった。
「今日はありがとう」
ミサキが言った。
「こちらこそ!」
少し歩いてから、タクマは言った。
「また本、教えてよ」
ミサキは小さくうなずいた。
「うん」
その日から、タクマはときどき本を読むようになった。
そしてミサキと、本の話をする時間が少しずつ増えていった。
気づかないうちに、ふたりの距離は
前よりも、少しだけ近くなっていた。




