第125話 彼女達
────人格がほとんど一致するならば、なぜ静乃とスイはこんなにも違うのだろうか。
それが、カイルの頭に浮かんだ疑問だった。
もちろんカイルはどちらも大好きなのだが、転生前の静乃と、その意識が引き継がれたスイとでは、かなりイメージが変わると考えているのだ。
静乃はいつでも明るく元気だ。クラスメイトの質問に答えているのをよく見るほど、優しく博識でもあった。
スイは、明るく優しいところは静乃の頃と変わらない。しかし、スイには静乃ほどの元気さがなかった。
スイが元気ではないということではないが、静乃の方がはつらつなイメージがある。
明確に言葉にできるほどの語彙力と確信がカイルにはなく、王女としての自覚が芽生えたから、と言われればそれまでなので、サイスには何も言わないが、カイルは不思議な感覚に陥ったのだった。
「おいカイル、この方向は──」
スイを追いつつ考え込んでいたカイルに、サイスが焦ったように声をかけた。
カイルが呼応して前の方を見ると、そこには雲を突き抜けるほどに高い塔が8つと、それらに取り囲まれ、一際目立った──
「──王城……」
スイは、猛スピードでそこに突っ込んで行く。
混乱は、まだ始まったばかりだ。
スイの意識はその頃、深い海の底に沈んでいた。
何も感じられず、何も動かせず、光すら届かない深い海の底。
そこに誘った本人が彼女の身体を動かしていることを、スイは知りもしない。
(たしか、さっき意識が飛んだ……?)
先ほどのことを思い出したスイは、今いる場所すら分からないことに絶望した。
それでも彼女は、諦めずに自分の状況を把握しようとする。
(えっと、記憶がないのは……誰かに『少し身体を貸して』って言われてから……?頭の中でそれもいいかもって思っちゃったんだっけ。
でも、それですぐに身体を渡せたとしたら────)
スイのなかに、1つの疑問と仮定が生まれた。
それは、とてつもなく飛躍した想像。そして限りなく低い確率ではあるが、あり得ないことではない。
それは、彼女自身が証明していた。
(────あの人も、私のなかに────)




