第124話 少女の中身
「もう、戻ってこないのかな」
カイルがそう呟くと、サイスは眉を寄せた。
「あ、えっと、弱音なんて吐くつもりはなかったんだけど、えと」
カイルは気配でそれを察し、サイスに呆れられたと思って慌てて弁明をした。
カイルとしても、この状況で弱音を吐いても何も変わらないと理解していたのだ。しかも気分も落ち込むので、そんなこと絶対にしてはいけないと思っている。
おろおろするカイルを気にせず、サイスは告げる。
「だが、魂は変わらないのだろう?」
「……え?」
こんな状況でと責められるか、少なくとも注意を受けると思っていたカイルは、拍子抜けして聞き返す。
サイスは人間の緊急事態にも、何度も立ち会ったことがある。緊急時に無駄な会話をするなど阿呆のやることだとよく知っていて、ましてや、弱音を吐くなど論外だった。
しかし、カイルがまだ幼い少年だということもよく知っている。転生の話や前世の話も聞いていたが、それを含めてもサイスの1000分の1にも及ばぬ年月だ。
本当ならば咎めるべきだと知りつつも、サイスとしては少年の口から思わずこぼれてしまった弱音を責めたくなかったのである。
そして、サイスは続けた。
「魂が変わらなければ、それは同一人物ではないのか?我は、今でもスイを叔母様だと考えているぞ」
「魂が同じなら、同じ人……」
カイルはサイスの言葉を反芻するように繰り返す。
サイスは、カイルを責めたくなかったのも本音だが、それ以上に本当にそう思っただけだった。
サイスは、この世界でも有数の長命種である。魂が同じ人間が転生した姿を何度も見たことがあった。
スイやカイル達のように記憶があることは極めて稀だが、創造神が創造した多くの世界には、輪廻転生という概念が存在していたためである。
死んだ動物の魂は、記憶や人格は消えてなくなるが、いろいろな世界を廻ってまた同じ世界に戻ってくることがある。それは天使や長命種にとっては常識で、何よりも不変の自然の摂理だった。
そして、同一の魂を持つ人間には、記憶や人格を消去されたにも関わらず、99.9%以上の人格の一致が確認されている。
サイスにそう説明されたカイルは、想像が及ばぬほどの広大な話に困惑し、そして疑問を抱いた。




