『好敵手』
放課後、誰も居なくなった頃を見計らい自分の教室に戻った。
鞄を持ち下駄箱へと向かう。
西円寺は、みんなと帰って行ったのだろう。
断る理由がない。
靴を履き、帰って勉強しよう、と考えを切り替えていると、ひょこっと右脇から西円寺の顔が覗き込んできた。
「うおっ?!」
慌ててのけ反り、後ずさる。
鞄を腰に回し両手で持っている西円寺は、テトテトと前に出てきた。
「...授業、サボり?」
「まっ、まぁな」
西円寺は顔を傾げるどころか、身体全体で傾く。
「...引き分けがよかったの?」
「ん?や、かんけーないよ」
俺はそう言って西円寺の横を通り過ぎ歩き出す。
その後ろから、西円寺は付いてきていた。
「てか、今日クラスのやつと一緒に帰るんじゃなかったのか?」
「...聞いてたの?」
「あっ、やべぇ」
「...」
後頭部に手刀が刺さる。
が、いつもの威力は無く、ポンポンと叩かれるだけだった。
俺は振り向きもせず、黙ってその攻撃を受け続ける。
「...余計な、思考は、無駄」
手刀のタイミングでそう言って、西円寺は横に並ぶ。
「...私に勝つ事だけ、考えて」
心臓が跳ねた。
モヤついた気持ちは燃えて無くなっていく。
この感情は一体、何なのだろうか?
この前感じたものとは、別物だった。
「負けても泣くなよ?」
「...こっちの台詞」
「.........明日は負けねぇ」
「...ん」




