『遊戯』
【将棋のルールで、金に成れる駒を全種類答えよ】
たった一問。
たった一問が解けなかった。
数式も英文も無い。
ボードゲームのルールでしかないその問題を、解くことが出来なかった。
「隠していたルール。問題は私が知っている知識から出せるという事。教科書問題のみだったから気付かなかったでしょ。まぁ案外選び出すのは難しいんだよ。【あ行を答えよ】とか当たり前な問題で埋め尽くされているからね」
「容赦ねぇなぁ」
「参考書には書いてない事がこの世には沢山ある。君達は遊ぶことを知らな過ぎるよ」
授業が終わる鐘が鳴り、生徒の騒めき声が聞こえてくる。
ちょうど昼休みに入ったのだろう。
咲島は慌てて保健室のドアを開け、一言言って去って行く。
「適度に遊べ、じゃあな」
確かにこの保健室には、よく見ればボードゲームが一通り揃ってはいる。
だが、遊べと言われても、遊ぶ友達なんていた事がない。
咲島は何を言っているんだ。
と、椅子に腰掛け呆れていると、向かい側に将棋盤を持って座る西円寺と目が合った。
「それは多分、二人で遊ぶゲームだぞ?」
「...?」
お得意の、首を傾げて不思議そうに見るをしてくる西円寺は、俺が言った意味を未だよく分かっていない。
「...先生が遊べって言った」
「いやまぁ、だって俺は...」
言葉途中も、ポイと説明書を投げ渡され、西円寺は勝手に駒を並べだす。
「...もう、憶えた、早くして」
「だから遊びって普通さぁ...」
「...?」
「...まぁいいか」
ここで断るのも変な話だ。
俺は止むを得ず、将棋を指すのだった。




