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才能ホルダー  作者: 雨宮結愛
第1章
10/18

『無知』



叩くハンマー。

弾ける火薬。

弾丸は銃口から発射された。

狙った問題に弾が届くと弾け飛ぶ。


「よっしゃ!これで...」


が、西円寺の手元には武器はなく、未だ進行する四つの問が西円寺に迫る。


「間に合わ...なかったか」


一つ二つ三つと俺は、迫り来る攻撃を喰らっていく。

西円寺に四つ目の問が直撃し、ライフがゼロになるのを確認すると、諦めて目を閉じた。


しかし、


「...まだ、終わってない」


俺に来ていたはずの問題に、突き刺さっている鍵状の剣。

目前で弾け飛ぶと、その先にいた咲島が不思議そうな表情で腕を組んでいた。


「不思議だねぇ、何故そっちを解いたのかな?少年?」

「は?俺?西円寺じゃなくて?」

「いや君だろう、だって四問しかない君の問を解いた方が楽じゃないか」

「あれ?本当だ」


ちゃんと考えれば当然の選択だった。

何故俺は考えもしなかったのか。


「まぁなんていうか、君達は似た者同士なんだな」

「は?どこが?」「......どこが?」


咲島が言っている事はよくわからないが、これで西円寺はゲームオーバー。

俺のみとなる訳だが、おそらく解く問題数は変わらず十問のままだろう。


「何か言い残す事はあるか?少年」

「少年っていうの、やめてもらってもいいか?」


あと、


「ゲームだよな?!これ、ただのゲームだよな?!なんか死闘繰り広げてるみたいになってるけどっ」

「いやいや、案外キツイもんなんだぜ?負かされるって事は。まぁ、久々に楽しいゲームだったよ」

「もう勝った気でいやがる...」


さっきの砲撃は、正直マグレみたいなものだ。

もう一度同じようにやれと言われても、難しい話だった。

このままでは結局負けてしまう。

何も対策が浮かばないままでいると、西円寺が一歩前に踏み出る。


「...タイム」


西円寺は両手でTの字を作り前に突き出す。

タイムのポーズのつもりだろうか?


「まぁ、いいだろう。そのポーズに免じて時間をあげよう」

「って、いいのかよ」


西円寺はコクンと首を縦に揺らすと、こちらに寄って来る。

正拳突きか?ローキックか?と、警戒していると、西円寺は右手にハンドガン、左手に剣を出現させる。


「銃殺か?斬殺か?やめろ犯罪者!」

「...黙って」

「あっ、はい」


そう言えば、問題が無いのに武器を出現させているのはどういう事だろうか。

まさかもう始まっているのかと、咲島を見るが何もしていなかった。


「...この空間は、イメージを反映出来る場所。...私の場合、これらがイメージしやすい」


剣と銃が消えると、次に鎌、ハンマー、斧と変形していく。

まるでファンタジーゲームのように武器を変える西円寺はどこか満足気だ。

なるほど。さっき信じられない加速を見せたのは、想像が反映した結果だったのか。


「要するに、俺には俺のイメージしやすい物をってことだな」

「...あなたは多分、他と違う。...解くのではなく、検索するイメージ」


他と違う?解答の方法なんてみんな同じじゃないのか?


「...捉えて、捕らえて、...充てるように当てる」

「言っている意味が分からん」

「...ただ、空欄を埋める、それだけ」

「なるほど、わかりやすい」


どおりで何かが足りないと思った。


「タイムアウト終了。もう昼休みが始まっちゃうし、購買の弁当が売り切れる前に終わらせようかね」


画面から溢れ出す英数字。

俺は銃を投げ捨て、それらを目で追う。

そうだ。どの数式のどこにも、解答欄が無いじゃないか。

ならば、イメージし、足せばいい。

解答欄を数式が組み上がるより早く出現させて、未完成の数式を捉え、あらゆるパターンの完成形を予測し、解を絞る。


「頭ん中の解を、解答欄へ」

「マジか?!」


端から砕け散る問題文。

たった一秒あればいい。

全十問を完成と同時に解き、破壊した。


「この問題は、過去にもうやった」

「いやいや実に面白いねー!少年!いや、成宮君?」


咲島のライフゲージは赤く点滅し、残りライフは100となっていた。

十秒分のダメージを与えれば俺たちの勝ち。


「後が無いんじゃないか?先生」

「あぁ、惜しい。惜しかったよ。なかなか楽しめたぜ。ここまで追い詰めた君にはいい事を教えてあげよう」

「んあ?」


不敵に笑う咲島は、画面を一度だけタップする。


「この世界には、まだまだ知らない事で溢れている」


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