『無知』
叩くハンマー。
弾ける火薬。
弾丸は銃口から発射された。
狙った問題に弾が届くと弾け飛ぶ。
「よっしゃ!これで...」
が、西円寺の手元には武器はなく、未だ進行する四つの問が西円寺に迫る。
「間に合わ...なかったか」
一つ二つ三つと俺は、迫り来る攻撃を喰らっていく。
西円寺に四つ目の問が直撃し、ライフがゼロになるのを確認すると、諦めて目を閉じた。
しかし、
「...まだ、終わってない」
俺に来ていたはずの問題に、突き刺さっている鍵状の剣。
目前で弾け飛ぶと、その先にいた咲島が不思議そうな表情で腕を組んでいた。
「不思議だねぇ、何故そっちを解いたのかな?少年?」
「は?俺?西円寺じゃなくて?」
「いや君だろう、だって四問しかない君の問を解いた方が楽じゃないか」
「あれ?本当だ」
ちゃんと考えれば当然の選択だった。
何故俺は考えもしなかったのか。
「まぁなんていうか、君達は似た者同士なんだな」
「は?どこが?」「......どこが?」
咲島が言っている事はよくわからないが、これで西円寺はゲームオーバー。
俺のみとなる訳だが、おそらく解く問題数は変わらず十問のままだろう。
「何か言い残す事はあるか?少年」
「少年っていうの、やめてもらってもいいか?」
あと、
「ゲームだよな?!これ、ただのゲームだよな?!なんか死闘繰り広げてるみたいになってるけどっ」
「いやいや、案外キツイもんなんだぜ?負かされるって事は。まぁ、久々に楽しいゲームだったよ」
「もう勝った気でいやがる...」
さっきの砲撃は、正直マグレみたいなものだ。
もう一度同じようにやれと言われても、難しい話だった。
このままでは結局負けてしまう。
何も対策が浮かばないままでいると、西円寺が一歩前に踏み出る。
「...タイム」
西円寺は両手でTの字を作り前に突き出す。
タイムのポーズのつもりだろうか?
「まぁ、いいだろう。そのポーズに免じて時間をあげよう」
「って、いいのかよ」
西円寺はコクンと首を縦に揺らすと、こちらに寄って来る。
正拳突きか?ローキックか?と、警戒していると、西円寺は右手にハンドガン、左手に剣を出現させる。
「銃殺か?斬殺か?やめろ犯罪者!」
「...黙って」
「あっ、はい」
そう言えば、問題が無いのに武器を出現させているのはどういう事だろうか。
まさかもう始まっているのかと、咲島を見るが何もしていなかった。
「...この空間は、イメージを反映出来る場所。...私の場合、これらがイメージしやすい」
剣と銃が消えると、次に鎌、ハンマー、斧と変形していく。
まるでファンタジーゲームのように武器を変える西円寺はどこか満足気だ。
なるほど。さっき信じられない加速を見せたのは、想像が反映した結果だったのか。
「要するに、俺には俺のイメージしやすい物をってことだな」
「...あなたは多分、他と違う。...解くのではなく、検索するイメージ」
他と違う?解答の方法なんてみんな同じじゃないのか?
「...捉えて、捕らえて、...充てるように当てる」
「言っている意味が分からん」
「...ただ、空欄を埋める、それだけ」
「なるほど、わかりやすい」
どおりで何かが足りないと思った。
「タイムアウト終了。もう昼休みが始まっちゃうし、購買の弁当が売り切れる前に終わらせようかね」
画面から溢れ出す英数字。
俺は銃を投げ捨て、それらを目で追う。
そうだ。どの数式のどこにも、解答欄が無いじゃないか。
ならば、イメージし、足せばいい。
解答欄を数式が組み上がるより早く出現させて、未完成の数式を捉え、あらゆるパターンの完成形を予測し、解を絞る。
「頭ん中の解を、解答欄へ」
「マジか?!」
端から砕け散る問題文。
たった一秒あればいい。
全十問を完成と同時に解き、破壊した。
「この問題は、過去にもうやった」
「いやいや実に面白いねー!少年!いや、成宮君?」
咲島のライフゲージは赤く点滅し、残りライフは100となっていた。
十秒分のダメージを与えれば俺たちの勝ち。
「後が無いんじゃないか?先生」
「あぁ、惜しい。惜しかったよ。なかなか楽しめたぜ。ここまで追い詰めた君にはいい事を教えてあげよう」
「んあ?」
不敵に笑う咲島は、画面を一度だけタップする。
「この世界には、まだまだ知らない事で溢れている」




