Storm after the storm
「よう崎谷、久しぶりじゃねえか」
目の前には神里がいる。だが、さっきまで車に乗っていたはず。
「どうしたよ、そんな幽霊でも見るようなツラしてよ。」
さっきまでとは180度性格が変わり、この前の柳の授業の時にボコボコにする前の状況になっていた。
そして同時に何かとても嫌な予感がする。
殺気で出来た刃で皮膚を刺されるような、ピリピリとした空気をまとっていた。
向こうは・・・多分ベストな状態だろう。対するこちらは疲労で集中力も欠け、とてもまともにやりあえる状態ではなかった。
刹那、神里がものすごい速度で間合いを詰めてきた。
警戒が緩かったせいもあり、反応が遅れるが出来るだけの力を込めバックステップで距離をとる。
どこから出したのか、横薙ぎの刃が目の前スレスレを刃が通り過ぎ、前髪を数本持って行かれた。
さっきまで鞘を握っていた右手には脇差があり、刺してくるのを半身になり間一髪で避ける。
姿勢を低くして両手の刃物を警戒しつつ、サイドステップで回り込む
これは挑戦状だと思う。
ナイフを一本取り出し、戦闘態勢に移る
この前は|神里の土俵(大剣)で倒したんだ、今度は|俺の土俵(ナイフ・刀)で俺を倒すってことだろう。
神里はまるでビリヤードのキューのように刀を構えた。
全身で加速させ高速の突きが来る。
しかし、ちょうど踏み込みをしようとした両足が浮いてる瞬間に車のドアが勢いよく開き、そのまま横に吹っ飛んでいった。
そして、さっき吹っ飛んでいったと思ったら車から神里が出てきて、吹っ飛んでいったいった方の神里に駆け寄っていった。
・・・・・・・・・・・・?
「・・・お姉ちゃん・・大丈夫?」
「大丈夫なわけねぇだろ、ったく何すんだよ椛」
かえで?もみじ?
「・・・ごめん、崎谷。姉が戦闘狂で。」
だめだ、思考が追いつかない。
「あやまんじゃねえよ椛。崎谷は俺が今殺らなきゃいけねえんだ。お前だって知ってんだろ、崎谷が他のところにも命狙われてんの」
「・・・一緒に混ざって面白い?」
「一緒にはやってねえよ、俺が先に殺ろうとした獲物に手を出してんのはあっちの方だ。」
そして崎谷はかんがえることをやめた。
「うぅ・・・気持ち悪い。あれ?お兄ちゃんどしたのなんか色々と抜けたような顔して。賢者タイム?」
「お姉ちゃんもうダメ・・・しばらく車には乗りたくないわ・・・。どうしたの至そんなUFOでも見たような顔して。」
「2時間以内に二回も殺されかけたから、お兄ちゃん回路がショートしてるんじゃない?」
「それじゃあ今ならうまくやれば私のものに・・・」
「人が苦しんでる状況でアホなこと抜かすなバカ姉」
「あっ、立ち直った」
軽く頭痛のする頭を抑えながら神里×2に声をかける。
「おーい、ちょっとお前達の状況教えてくんない?頭の中こんがらがって頭痛してきた」
車を案内された駐車場に停め、神里邸に案内される。
塀の中は何十坪もありそうな土地にはとても立派な木造平屋建てだった。
神里(静)に案内されて12畳ほどの客間来た。
「・・・ここで待ってて、お茶持ってくる。」
部屋の隅に重ねてあった座布団を敷き座って待っていると、襖の向こうから神里(騒)よりも鋭い殺気が自分に向けられているのを感じる。
今日はすごい厄日だよ。
「二人共ちょっと離れとけ、今日一の化物が襖の向こうにいる。」
深呼吸をして念の為に車から持ってきた愛刀を居合で構える。
本日3戦目ということもあり、全身に疲労がたまり集中力が欠け気味なので初撃は回避次の隙を狙い仕留める。
聞こえる音はこの部屋にいる三人の呼吸音のみ、今にもはち切れそうな緊張が全身を襲う。
「貴様が我が愛娘を穢した男かあああああああああああああああああ」
ものすごい勢いで襖が開き、灰色の着流しを着たおっさんが奇声を上げながら斬りかかってきた。
「獲物を横取りすんじゃねえクソ親父ぃぃぃぃ」
そしておっさんに対して神里(騒)が横から飛び蹴りを入れ
「・・・お父さん・・冷静になって」
まだしっかりと湯気の出ているお茶を神里(静)が顔面に浴びせかける。
「うおおおおお何故だ娘よおおおお」
おっさんは着流しがお茶を吸って暑いためかたうちまわっている。
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おっさんは着替えて神里(静)は人数分のお茶を入れ直して再び客室にやってきた。
「先程は失礼した。君が崎谷くんだね」
さっきの殺気全開の様子は無く、とりあえず落ち着いた様子で話しかけられる。
「椛から話を聞いたけど随分とおもし・・・、厄介なことに巻き込まれてるそうだね。」
このおっさんやばいよ、人の命の危機を面白そうとか言いやがったよ。
「面白いじゃねえよクソ親父、人の獲物を横取りしようとしてる奴らがいんだぞ。せっかくのおもちゃを横取りされたらたまったもんじゃねえよ。」
「勝手にひとをお前のおもちゃにすんな、神里うるさい方」
「うるさい方ってなんだ、私の名前知ってんだろ。楓だか・え・で」
「いきなり双子で入れ替わってましたー。って言われてすぐに理解できるほど俺の頭は良くないんだよ。」
見比べても違いを探すほうが難しく、纏っている雰囲気で好戦的な方が楓で静かな方が椛なのだろう。
楓の方がうるさくなってきたので、腕時計を見てみれば日付が変わり、優愛は未亜姉の肩で眠っていた。
「そろそろ遅い時間なので家に帰りたいんですが」
「・・・外に出たらまた狙われる可能性がある。」
「家の姉妹だけ預ける。一旦家に帰って車預けないと修理もしてもらえないし、銃も弾も殆ど無いからどのみち取りに行かなきゃいけないし。」
足のしびれに慣れるため何度か足を叩き、荷物をまとめ鉛の嵐でボロボロになった愛車に乗り込む。
見送りに来た椛に明日の午後くらいには、引取りに来ることを伝えて車を発進させた。




