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美少女が家族になった話  作者:


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42/51

わからせ、、、?


「悠くん、かわいいね」


「……うるさい。さっきからからかってばかりじゃないか」


俺は顔を真っ赤にしながら早歩きで先を行こうとする。すると、七海の笑い声が後ろから追いかけてきた。


「じゃあ次は、下着を見に行きたいかな」


「……っ!!?」


俺の足がピタリと止まった。振り返ると、七海は悪戯っぽく唇を尖らせて立っている。


「ごめんなさい、勘弁してください……! お願いだから、それだけは……」


「あははは! なんでそんなに必死なの?」


「からかわないでください、お願いします。これ以上は心臓が持ちません……!」


俺は本気で心臓を押さえて身をよじった。水着で既に限界なのに、下着なんて。七海にそんなことを言われたら、理性のネジがすべて吹き飛んでしまう。


「だって、かわいいんだもん。そんなに動揺する悠くん」


「男として、『かわいい』は……どうなんだ」


少しだけ不貞腐れて反論する俺に、七海は一歩近づいてきて、俺の腕を優しく抱きしめた。


「旅行の時は、可愛い下着がいいじゃん? ……悠くん、ガッカリしたくないもん」


「ぶっ!!!」


思わず変な声が出た。七海に下着姿で迫られてる姿を想像してしまい頭の中がショートしそうだ。


「……あははは! 動揺しすぎだってば」


「冗談はよしてくれ。本当に心臓が止まる」


「冗談じゃないよ。私だって、大事な時には悠くんを喜ばせたいんだから」


彼女の真剣な眼差しに、俺は一瞬だけ言葉を失った。からかっているのか、それとも本気なのか。その境界線がわからなくて、余計にドキドキしてしまう。


「……ガッカリなんて、するわけないだろ。七海なら、何を選んでも……」


「でも、可愛い方が嬉しいでしょ?」


「……っ、うん。……それは、まあ」


俺が力なく頷くと、七海は満足そうにニコニコと微笑んだ。


「でも、選ぶのは今度にしようかな。楽しみはとっておかないと」


「……今度選ばないといけないんですね」


「うん! もちろん!」


七海は俺の顔を覗き込み、ニヤニヤと楽しげに笑う。

なんだか、さっきから彼女のペースに完全に翻弄されている気がする。


「……なんかさ、七海。俺の扱い、雑になってきてない?」


「雑にはなってないよ。悠くんの扱い方が、やっとわかってきただけ」


「……年上としての威厳が、ガラガラと崩れ去っていく音がするぞ」


俺が溜息をつくと、七海は小首を傾げて愛おしげに俺を見つめた。


「悠くんは、嫌?」


「……嫌じゃない」


否定しきれない自分が情けないけれど、こうして彼女に甘えられ、弄ばれるのは、どうしようもなく心地よかった。


「そうだよね。悠くんは、年下にグイグイ来られるのが好きだもんね」


七海はそう言いながら、俺の部屋の本棚に隠していた「あの漫画」を思い出しているのか、また一段と悪戯っぽい表情を浮かべた。俺の趣味嗜好まで把握した上で、完璧に手のひらで転がされている。


「……でも知ってるか? 七海」


俺は彼女の肩を抱き寄せ、少しだけ声を低くして言った。


「……あの漫画の最後、散々煽ってきた子が、最後には逆転されて、ぐちゃぐちゃにわからされるの」


俺は彼女の耳元で、低く、しかし確信を持った声でそう囁いた。

七海の瞳が、一瞬だけ揺れる。これだけ釘を刺しておけば、少しは理性を保ってくれるだろう。これで年上のプライドと、男としての尊厳を――

「私は全部受け止めてあげるけど?」


七海は怯むどころか、俺の胸に指先を這わせ、余裕の笑みを浮かべた。


「……ひっ、……っ!」


想定外の強気な返しに、俺は喉の奥で情けない悲鳴を上げるしかなかった。まさか、あの煽り文句すらも先回りして受け流されるなんて。


「……それちょっと、酷くない? 彼女がこんなにアピールしてるのに……」


七海はわざとらしく唇を尖らせ、濡れた瞳で俺をじっと見上げる。その無防備で、かつ強烈な色香に、心臓の鼓動が耳の奥で鳴り響く。

俺は一度大きく息を吐き出し、彼女の肩を掴んで、まっすぐとその瞳を見つめた。からかいでも、挑発でもない。俺の心からの言葉を伝えるために。


「七海……お前、自分の可愛さを本当に理解してるのか?」


「え……?」


不意を突かれたのか、七海が小さく息を呑む。俺は遮るように言葉を紡いだ。


「俺は君が見せる表情のすべてが愛おしいよ。無邪気な笑顔や真剣な顔、煽ってくる時の小悪魔な顔も大好きだ。でも強がっている裏側で恥ずかしがっている時の顔も好き。今だって頑張って俺を煽ってるけど、耳まで真っ赤になっているのがバレバレだよ。

さっきの水着も本当に似合っていて可愛かった。正直、あんな姿は他の誰にも見せたくないし、自分だけのものにしていたい。もし君に迫られたら、俺の理性なんて一瞬で崩れ去ってしまうと思う。」


「ちょ、ちょっと一回ストップ……!」


七海が顔を真っ赤にして制止しようとする。けれど、俺は止まらない。


「……外見だけじゃなくて、内面も全部大好きなんだ。頑張り屋で誰にでも気遣いができる優しい人だよね。器用なようでいて不器用だから、すぐ自分一人で抱え込んで頑張ろうとするだろ? 俺は君のそんな強がりを一番近くで支えてあげたいし、安心して寄りかかれる場所でありたいんだ。七海のことが大好きなんだ」


七海の言葉を遮り、一気に想いを伝えきった。


七海は、俺の言葉を一つひとつ噛みしめるように、目を見開いたまま固まっていた。さっきまでの余裕たっぷりの小悪魔的な面影はどこへやら、彼女の瞳からは涙がこぼれ落ちそうに潤んでいる。


「……っ、そんなの、反則だよ……」


七海は震える手で俺のシャツをギュッと掴み、顔を俺の胸元に埋めた。彼女の吐息が熱い。

さっきまで小悪魔的に煽り返してきていた彼女が、今では俺の胸の中で震えている。彼女の小さな肩が、すがりつくように俺の背中に回る。その温もりを感じた瞬間、俺もようやく「言い過ぎたかな」という恥ずかしさと、それを上回る幸福感に包まれた。


「……言わせたのは、七海だろ」


俺は彼女の背中に腕を回し、優しく抱きしめ返した。人通りの多いショッピングモールの一角で、周囲の視線なんてどうでもよくなった。

七海は顔を上げないまま、くぐもった声で呟く。


「……全部、受け止めるって言ったの、嘘じゃないから」


そう言うと、彼女は俺のシャツを掴んでいた手を緩め、顔を上げた。そこには、恥ずかしさで真っ赤になりながらも、これまでで一番幸せそうな、とびきりの笑顔が浮かんでいた。


「……だから、これからも悠くんの気持ち、聞かせて。……恥ずかしいけど……」


潤んだ瞳で見つめられて、さっきまでの独占欲や理性の駆け引きなんてどうでもよくなるくらい、君への愛おしさが胸の奥から押し寄せてくる。


「……多分、恥ずかしいけど気持ちが溢れ出して止まらないと思う」


俺が苦笑交じりに問いかけると、七海は少しだけ安堵したように、でもどこか照れくさそうに「ふふっ」と微笑んだ。



「……よし、じゃあ次はパンケーキかな? お腹も空いてきたし」


俺が意識を切り替えるように言うと、七海はパッとその表情を明るくした。


「うん!」


彼女は俺の腕に再び絡みついてくる。

歩き出し、二人でパンケーキ屋へ向かおうとした、その時だった。


「……悠くん!」


不意に七海が足を止め、俺の名前を呼んだ。


「ん? どうしたの?」


俺が不思議そうに振り返ると、七海は俺の服の裾をぎゅっと掴み、まっすぐと俺の瞳を見つめた。周囲の喧騒がふっと遠ざかるような感覚を覚えた。


「……私もね、大好きだよ」


その言葉は本当に大切な宝物をそっと預けるような、吐息混じりの小さな告白だった。

俺は一瞬、思考が真っ白に停止した。けれどすぐに、耳の奥から全身を駆け巡る熱さを感じた。心臓が痛いほど跳ね上がり、今度は俺が恥ずかしさで俯く番だった。心臓の音を彼女に聞かれるのではないかと、焦るように彼女の視線から逃げてしまう。


「……っ、そんな顔して……ズルいよ」


俺が掠れた声で呟くと、七海は満足そうに、でも少しだけ照れくさそうに、俺の腕にしがみついてきた。


「少しだけお返し!……じゃあ行こっか!」


七海は悪戯っぽく、でもどこか安堵したような優しい笑みを浮かべて、俺の手を引いて歩き出した。

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