40.大人はいろいろある
新聞配達が終わった。
いつもの時間にフェアリーハイツへ戻る。
入口のところで、りんさんがゴミ出しをしていた。
「おはようございます!」
りんさんが振り向く。
「あら、あやめちゃん。おはよう」
「早いですね~」
「ゴミ出しついでに、ちょっと早く出ただけよ」
りんさんはゴミ袋をまとめながら微笑んだ。
「それじゃあ、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
そう言って、りんさんは出かけていった。
私はアパートを見上げる。
「さて」
「どうしましょう」
あずささん。
起きているだろうか。
とりあえず帰宅。
部屋のドアを開ける。
中を見る。
……。
あずささんはまだ寝ていた。
布団の上で完全に熟睡している。
「まあ」
「起きませんよね」
私は肩をすくめた。
特に急ぐ用事もない。
「そういえば」
「夏休みの宿題」
私は机に座った。
ノートを開く。
カリカリ。
しばらく勉強。
そして。
気がつけば朝十時。
「さて」
「そろそろ買い物でも行きましょうか」
立ち上がろうとした、その時。
布団がもぞっと動いた。
「……」
あずささんがゆっくり起き上がる。
私は手を振った。
「あ、おはようございます」
あずささんはぼんやりした顔でこちらを見る。
「え?」
「あ、おはよう……?」
「あやめちゃん?」
「はーい。あやめちゃんですよ?」
まだ夢の中のようだ。
私は聞いてみる。
「階段で寝てましたが覚えてます?」
「へ?」
「えーと」
「んー……」
しばらく考えるあずささん。
そして。
「ああ!」
思い出した顔になった。
「合コン行って」
「一人あぶれて」
「やけ酒飲んで」
「終電逃して」
「歩いて帰ってきて」
「階段で力尽きた!」
あずささんは頭を抱えた。
「うわぁ……」
「ほんとごめん!」
私は少し感心した。
「なるほど」
大人は。
いろいろあるんだな。




