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31.本当の地獄はこれから

 スポーツチャンバラの勝負が終わったその日。


 私はすずさんに言った。


「すずさん」


「はい?」


「お風呂上がりに伺いますので」


 すずさんは首をかしげた。


「え?」


「よろしくお願いします」


 それだけ言って、私は部屋に戻った。


 そして夜。


 お風呂で体を温めてから、私はタオルを首にかけて廊下を歩いた。


 その途中。


 ゆいさんの部屋の前で止まる。


 コンコン。


「ゆいさん」


 ドアが開く。


「なに?」


「すずさんの部屋に行きます」


「特訓です」


 ゆいさんは一瞬だけ沈黙した。


 そして。


 にやりと笑った。


「なるほど」


「行きましょう」


 二人で廊下を歩く。


 向かう先は――


 すずさんの部屋。


 コンコン。


「すずさん」


 ドアが開く。


「あやめちゃん?」


「……あれ?」


「ゆいちゃんも?」


 私とゆいさんは顔を見合わせた。


 そして。


 二人同時に。


 にやりと笑った。


 すずさんの顔が引きつる。


「なにその顔」


 私は言った。


「特訓です」


 部屋に入り、床に座る。


「まずはストレッチ」


 私は足を広げた。


「開脚」


「いきます」


 ぐーっと体を倒す。


「ふぐぐぐぐ……」


 ゆいさんも隣で開脚する。


「うぐぐぐぐ」


 すずさんが後ずさる。


「ちょっと待って」


「嫌な予感しかしない」


「大丈夫です」


「すぐ慣れます」


 すずさんもしぶしぶ座る。


「えー……」


 足を広げる。


 少し倒す。


「うぐ……」


 さらに押す。


「うぐぐぐぐぐ」


 私は言う。


「まだいけます」


 ゆいさんも言う。


「いけるいける」


「無理!」


 私は冷静に言った。


「では次」


「ブリッジです」


「え?」


 私は仰向けになる。


 ぐいっと体を持ち上げる。


「よいしょ」


 ゆいさんもブリッジ。


「いだだだだだ」


 すずさんも挑戦。


「……」


「……」


「いだだだだだだだ!」


 私は言った。


「無理しないでください」


 ゆいさんが言う。


「でも続けます」


 すずさんが叫ぶ。


「鬼!」


 さらにストレッチ。


 前屈。


 開脚。


 肩回し。


 股関節。


 ぐーっと伸ばす。


「うぐぐぐぐ」


「のびる……」


 すずさんの声が変になる。


 私も声が出る。


「ひゃ……」


 ゆいさんも。


「ぐぅ……」


 三人とも、女の子が出したらダメそうな声を出しながら柔軟していた。


 しばらくして。


 私は言った。


「では」


「今日はここまで」


 すずさんは床に転がっていた。


「つ、疲れた……」


 私は頷く。


「柔軟ですから」


 すずさんが恐る恐る聞いた。


「これ」


「まさか」


 私は笑顔で言った。


「毎日やります」


 ゆいさんも笑顔で頷く。


「毎日」


 すずさんの顔が固まる。


「毎日?」


「はい」


「魔王戦がありますから」


 すずさんはしばらく沈黙した。


 私はすずさんの背中にそっと手を当てた。


 そして――


 ニヤリと笑って、ぐいっと押した。


「まだいけます」


「ぎゃああああああああああああああああ!」

 

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