26.謎のTシャツ
ある日曜日の午後。
のんびりと洗濯物を畳んでいると、しずくさんが不意に聞いてきた。
「あやめちゃん」
「はい?」
「いつも、その良く分からないうさぎのTシャツ着てるけど、それ何?」
私は自分のTシャツを見下ろす。
白地に、微妙な顔のうさぎが描かれている。
「有名なキャラクター?」
しずくさんが首をかしげる。
「私も良く分からないのです」
私は正直に答えた。
「どうして、それ着てるの?」
「そんなにかわいいわけでもなく、かと言ってめちゃくちゃ変でもない。でも、そこはかとなく微妙なのに」
私は胸を張った。
「それは」
「ワゴンセールで一枚十円だったからです!」
しずくさんが固まった。
「十円?」
「一枚十円ですよ!」
私は指を立てる。
「そりゃあ買いますよ!」
「なので、在庫全部買いました」
しずくさんがゆっくり聞く。
「全部って……何枚?」
「五十八枚あります」
「え」
「S、M、Lが各十枚以上!」
しずくさんはしばらく黙った。
「……そんなにどうするの?」
「ローテーションです」
私は真顔で答える。
「まだこの年齢なので、多少微妙なキャラクターTシャツでも、まだ着れるかなと」
「なるほど……」
しずくさんは妙に納得していた。
私は続ける。
「ちなみに」
「同じ絵柄のパンツも十円だったので、三十枚くらい持ってます」
しずくさんの動きが止まった。
「パンツ?」
「同じワゴンにありました」
私はにこっと笑う。
「よかったら、何枚か分けますよ?」
しずくさんは一瞬だけ真顔になった。
そして、少し引きつった笑顔で言った。
「え、えっと……」
「気持ちだけで!」
私は頷いた。
「遠慮しなくていいのに」




